ニットの原産地規則緩和で対日輸出に追い風−加工工程基準が「編み立てと縫製」の2工程から「縫製」1工程へ−

(バングラデシュ)

ダッカ事務所

2015年04月08日

一般特恵関税制度(GSP)の適用条件が4月1日から変更された。ニット製衣類(HSコード61類)の原産地規則が緩和され、原産地として認められるには縫製の1工程を経るだけで資格が得られることとなった。これまでは同規則を構成する原産地基準のうち、加工工程基準として求められていた工程が2つ(編み立てと縫製)あり、それを満たさなければ認められなかった。この緩和を受け、衣料品輸出額の世界市場シェアが中国に次いで2位という、衣料品輸出大国であるバングラデシュから日本へのニット製衣類輸出の増加が期待される。

<ニット製品の加工工程基準緩和は4年ぶり>
GSPとは、「最恵国待遇(MFN)の例外として、先進国が片務的に開発途上国の産品に対して、一般税率よりも低い特恵関税(優遇された関税)を適用する制度」だ。開発途上国の中でも後発開発途上国(LDC)に対しては、先進国においてLDC以外の開発途上国よりも幅広い品目で関税が無税となったり優遇されたりする。このGSPの適用を受けるためには、輸入される産品に対して特恵税率が設定されており、原産地規則として(1)原産地基準、(2)積送基準(注)、(3)手続き規定の3つを全て満たしていることが条件となる。

衣料品は主に、布帛(ふはく)製品(HSコード62類)とニット製品(61類)の2種類に分類され、原産地規則のうち原産地基準として一般的な付加価値基準ではなく、加工工程基準が定められている。

布帛製品は以前から、一般特恵受益国において「縫製」のみの1工程を経ることで原産地として認められている。一方で、ニット製品の原産地決定は2011年4月改定により、それまで加工工程基準として「紡績」「編み立て」「縫製」の3工程を行うことが求められていたが、「編み立て」「縫製」の2工程に緩和された。

今回の改定では、さらに「編み立て」の工程が不要となり、第三国から輸入したニット生地で製造した産品も原産地証明の資格を得られるようになった。アパレル産業の川上工程は装置産業のため、エネルギー不足を抱えるバングラデシュにとって、糸から生地の製造工程が不要となることで負担が大きく軽減される。

<GSPによる免税の恩恵受けられる輸出国>
豊富で安価な労働力が確保できるバングラデシュでは、それらメリットの享受を目的として、また中国における人件費高騰を背景にして、労働集約産業の拠点設置や移転が進んでいる。中でも輸出の8割を占める繊維製品については、衣料品輸出の世界シェアが中国に次ぐ2位(2012年)で、アパレル産業は基幹産業となっている。

バングラデシュの2013/14年度における繊維製品の輸出額は244億9,188万ドルだ。特にニット製品の増加率は高く、10年前の2003/04年度の輸出額と比べて約6倍に増えている。全輸出額に占める日本への衣料品輸出額のシェアは約2.3%だが、輸出額(約6億ドル)は着実に伸びている(図参照)。

バングラデシュはLDCに位置付けられており、GSP税率による免税の恩恵を受けることができる輸出国の1つだ。今回の原産地規則の基準緩和が、日本向けニット製品の輸出に対し、追い風となることが期待される。

バングラデシュから日本への衣料品輸出額推移

(注)積送基準とは、貨物が日本に到着するまでに原産品としての資格を失っていないかどうかを判断する基準のこと。(1)直接運送されること、または(2)第三国を経由する場合には、当該第三国において積み下ろしおよび産品を良好な状態に保存するために必要なその他の作業以外の作業が行われていないこと、のどちらかの基準を満たすことが条件となる。

(田中麻理)

(バングラデシュ)

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