日本産牛肉の輸入、条件付きで解禁に−モスクワで神戸牛試食会−

(ロシア)

欧州ロシアCIS課・モスクワ事務所

2015年04月07日

ロシアが禁止していた日本産牛肉の輸入が、ロシア当局によって登録された2施設が取り扱う牛肉に限り、3月から解禁となった。ロシアの輸入規制は、2001年の日本での牛海綿状脳症(BSE)を受けて実施されていた。3月26日にはモスクワで神戸牛の試食会が開催され、約200人のロシア食品関係企業・政府関係者が舌鼓を打った。

<兵庫県2施設が加工した牛肉の輸出が可能に>
日本の農林水産省は2015年3月2日、日本産牛肉輸出に必要となる衛生証明書の発行を開始したと発表した。これにより、認定を受けた施設からの日本産牛肉のロシア向け輸出が実質的に可能になった。2014年12月12日、同省はロシア政府当局との間で牛肉輸出のための検疫協議を進めた結果、日本の2施設からの輸出が認められることとなったと発表していた。2施設以外の施設からの輸出については、ロシア側との協議を進めていくとしている。

この2施設は兵庫県の加古川食肉センターと神戸市立食肉センター。ロシアの連邦動植物検疫局が2014年4月8日に、ロシアを含む関税同盟加盟国(注1)向けに輸出可能な、神戸牛を食肉加工・保管する施設として、この2施設を登録した(注2)。

<高まっていた和牛への期待>
2001年9月に日本国内でBSEが発生したことから、ロシアの連邦動植物検疫局が同年10月、生きた反すう動物、反すう動物の受精卵、骨付き牛肉、羊肉、臓物その他の生の製品の輸入を禁止したことに伴い、日本から牛肉の輸出ができなくなった。他国産牛肉やオーストラリア産「WAGYU」を取り扱う現地の高級レストランの間では、日本産牛肉への期待が高まっていた。日ロ政府間では、日本産牛肉の輸入解禁に向けて、断続的に交渉が行われていた。

農林水産省ウェブサイトによると、輸出可能な牛肉はロシア当局によって登録された2施設が取り扱う牛肉とされている。それ以外の輸出条件として、a.日本において過去12ヵ月間口蹄(こうてい)疫の発生がないこと、b.過去20日間炭疽(たんそ)の発生がなく、過去6ヵ月間結核およびブルセラ病の発生がなく、かつ過去12ヵ月間牛白血病の発生がない農場由来の肉であること、c.反すう動物由来の飼料が与えられていない牛由来の肉であること、d.ロシア連邦動植物検疫局の登録施設リストに掲載された施設で処理された肉であること、を挙げたほか、月齢制限はないとしている。

加えて輸出に際しては、日本の食肉衛生検査所や保健所などで食肉衛生証明書を取得する。食肉衛生証明書を基に動物検疫所において、輸出検疫証明書とロシアを含む関税同盟加盟国が求める衛生証明書を取得することが必要になる。その要綱は、厚生労働省ウェブサイトに掲載されている。

<神戸牛の試食会に約200人が参加>
日本産牛肉の輸入解禁を受け、3月26日に在ロシア日本大使館内ホールで神戸牛の展示・試食会(主催:日本畜産物輸出促進協議会、JA全農兵庫、神戸肉流通推進協議会、在ロシア日本大使館、ジェトロなど)が開催された。試食会で使われた神戸牛は加古川食肉センターが加工したもので、兵庫県西宮市のエスフーズが輸出した。

試食会には、ロシアの食肉卸売・流通・レストラン・政府関係者約200人が参加した。原田親仁大使は開会あいさつで、日本産牛肉の輸出が実現したことを祝福し、「現在ロシア政府から輸出のための施設認定を受けているのは兵庫県の2工場にとどまる。今後、他の地域からも輸出できるように、大使館としてロシア側と交渉していく」と述べた。

試食会では神戸牛のサーロインステーキ、すき焼き、しゃぶしゃぶ、タタキのにぎりずしなどが提供された。すき焼きとしゃぶしゃぶを試食したロシア人参加者に聞いたところ、「しゃぶしゃぶの方が好き。すき焼きは、自分にとっては塩味が足りなかった」と感想を述べつつも、すき焼きについても「甘辛いタレも問題ない」と受け入れていた。

試食を待つ参加者

<価格面に残る課題>
モスクワ市内の日本食高級レストランのシェフは「日本の価格の3倍までなら我慢できるが、4倍、5倍の価格になったら、レストランで使える可能性はない」と価格面での課題を挙げた。別の日系企業関係者は、輸送や通関手続きで苦労が多く、高いコストがかかる場合があると指摘した。

(注1)施設登録当時は、ロシアのほか、ベラルーシ、カザフスタンが加盟していた。
(注2)ロシア当局の登録文書には、神戸牛の定義などは書かれていない。また、3月26日に開催された試食会でも、一部宮崎県産牛肉が提供されたことから、事実上、登録施設で加工された日本産牛肉とみられる。

(浅元薫哉、島田憲成)

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