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シラス壁の調湿機能で高温多湿のエコ先進国を狙う−ASEAN市場に挑む中小企業(12)−

(ASEAN、日本)

アジア大洋州課

2015年04月08日

火山噴火時の生成物であるシラスを用いた壁材を製造する高千穂シラス(本社:宮崎県都城市)は、出展したシンガポールの展示会で左官職人による施工の実演を行い、バイヤーの注目を集めた。同社のシラス材は湿度調整や消臭効果に優れる。この商品の強みを生かし、エコ先進国のシンガポールを皮切りに、ASEAN市場開拓を目指す。同社海外事業開発担当の平松武文氏に聞いた(1月23日)。

<商品の強みと市場ニーズが合致>
問:ASEAN進出の経緯と市場開拓の現状は。

答:15年前にシラスを用いた特殊な壁材を考案した。開発当初はこの材料の持つ多機能性が十分判明していなかったが、その後の研究によりこの製品の優れた機能とそのメカニズムが解明されてきた。中でも、この製品の持つ調湿機能および消臭機能には際立った効果があり、例えば調湿機能においては、室内の適度な湿度を保つよう湿気を吸収、放出する。研究により、湿度が10%下がると体感温度は1度下がることが証明されており、エアコンを多く使う環境での省エネ効果が期待できる。開発後、国内では順調に売り上げを伸ばしてきた一方、7〜8年前から、中国、韓国、台湾などからの引き合いに応じ、海外での販売に本格的に着手し、現在では継続的に一定の商品供給を行なっている。これらの経験を踏まえ、中国、韓国、台湾以外の海外市場開拓についても積極的に取り組んでいくことになった。

そこで有望市場の1つとして検討し始めたのが、高温多湿な気候のASEAN諸国だ。ASEAN諸国の拠点はシンガポールと考えており、同国の市場規模ではなく、同国が環境先進国であること、またASEAN諸国の経済情報の集積地であることに着目している。シンガポールでは、「グリーン・ビルディング評議会(SGBC)」が中心になり、環境に配慮した建材やインテリアなどに対し承認を与える制度を導入しており、環境問題に対する意識が高い。当社商品の省エネ効果の受け入れ素地のあるシンガポールをビジネスのハブ拠点とし、ASEAN市場を狙いたい。

問:ASEANバイヤーの日本製品への評価・反応は。ASEANバイヤーが求めてくる製品の特徴は。

答:日本では弊社製品の消臭機能とそこから派生する健康機能に対する評価が高いが、1年を通して高温多湿気候のASEAN市場では調湿機能に期待が高い。シラス壁は、湿度が上がると余分な湿気を吸収し、湿度が下がると湿気を放出する機能がある。シラス壁の効果で部屋の湿度が保たれることにより、エアコンの設定温度を上げることができ、省エネに対する貢献度は高い。また、コンドミニアムを中心に、洗濯物は室内干しであることが多く、シラス壁の調湿機能による乾燥時間の短縮、また消臭機能による洗濯物特有の臭い消し効果も高い。

シンガポールでは、2030年にGDP単位当たりエネルギー消費量を2005年比35%削減することを国家目標として掲げている。展示期間中、テレビ・新聞の取材も多く、またコー・ブン・ワン国家開発相のブース来訪も受けたが、最も着目されたのは、シラス壁の調湿機能による省エネ効果であり、それがバイヤーの評価項目の基軸となっている。

<売り込みは実演が一番>
問:ASEANバイヤーへの売り込みで工夫した点は。

答:シラス壁の販売は、設計段階でのスペックインと、施工段階でのプロダクトアウトの2つが合致して、初めて成立する。一番効果的だったのは、シラス壁の施工実演を行い、実際にシラス壁がどのように施工され最終製品としてお客様に引き渡されるかをバイヤーの方々に見てもらった点だと思われる。そのため、左官職人による塗り壁の施工実演を1日7回行い、来場者に商品を体感してもらった。また、シラス壁の効果を体感してもらうために2つのキットを用意した。1つは、消臭効果の体験キットで、何も入っていない空のボトルとシラス材を入れたボトルの2種類を用意し、これら2つのボトルにアンモニアで湿らせたコットンを入れる。20分ほどすると、空のボトルではアンモニア臭がそのまま残っているが、シラス材を入れておいた方のボトルでは臭いが全くしなくなっているという消臭体感キットだ。もう1つは、調湿機能の体感キットで、珪藻(ケイソウ)土壁とシラス壁のパネルを用意し、スプレーで水を吹き付ける。こうした実演を見てもらうことは、特に海外においては細かく外国語で説明するよりも理解が得られやすく、デモ効果も高い。

展示ブースにおけるレイアウト上の工夫としては、来場者がブースに入る際の抵抗感を取り除くため、展示物はスペースぎりぎりまで前面に出し、スタッフは来場者とは対峙(たいじ)せず、通路に出て関心のありそうな来場者に対して同じ目線から声を掛けるようにした。また、逐次通訳での会話は時間がかかる上に商機を逸する可能性が高いため、通訳には事前に商品知識を十分に教え、来場者に対して直接営業できるような体制を取った。

左官職人によるシラス壁の施工実演

問:ASEAN市場開拓で直面した課題と対応策は。

答:シンガポールへはジェトロのASEANキャラバン参加前にもマーケティングのための出張を行った。その際、現地の日本人建築士を中心にシラス壁材への関心を持ってもらうことはできたものの、それを材料として仕入れ、実際の施工を行う施工業者の開拓が課題となっていた。その開拓と、潜在顧客であるエコ関連の建築士やディベロッパーの発掘を企図して、今回の展示会に出展した。ASEANにおける当社製品の知名度はほとんど無いに等しいため、今回のASEANキャラバン事業にジャパンパビリオンの出展社というかたちで参画したことにより、日本ブランドというまとまりの中で集客効果を得られたと考えている。

展示会では約130社と名刺交換をすることができたが、エコ建材に特化した展示会であったため、効率的な顧客選別ができ、既にショールーム展開や試験施工などの議論を進めている相手先企業もあり、今後も具体的なプロジェクト案件に向けての努力を重ねていきたい。また、シンガポールでの製品販売に際しては、グリーン・ビル認証の為のグリーン製品の認証取得が望まれるので、取得に向けたスタディを進めていきたい。

問:ASEAN市場開拓における今後の展望と事業展開は。

答:今後は、キャラバン事業で知り合ったシンガポールの建築士、インテリアデザイナー、コンサルタント、サプライヤーを訪ね、信頼関係の強化、ビジネスの深化につなげていきたい。

ASEAN諸国のエコロジー意識の普及は地域によりばらつきもあるが、エコ建材先進国であるシンガポールの企業がイニシアチブを取るかたちでASEAN市場の開拓を進めていくことが重要と考えている。

(古屋礼子、倉沢麻紀)

(ASEAN・日本)

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