インテリアにもなる食器にドイツからの引き合いも−ASEAN市場に挑む中小企業(7)−

(ASEAN、日本)

アジア大洋州課

2015年04月01日

サンアート(本社:愛知県瀬戸市)は、陶器製品を企画・製造している。かわいらしく面白いデザインの食器はインテリアとしても人気だ。今回のASEANキャラバン事業ではタイとベトナムの展示・商談会に参加し、タイの展示会ではドイツ企業からの引き合いがあったという。海外市場開拓への取り組みを、同社営業部長の金丸英臣氏に聞いた(1月27日)。

<タイではギフト商品として重要視>
問:ASEAN進出の経緯と市場開拓の現状は。

答:インテリアとしても魅力的なデザインの食器を国内で販売していたが、海外でどのような反応が得られるか確かめるために、2012年度に中国のアジア・キャラバン事業に参加した。その結果、展示会に出品するとすぐに注文があり、高い評価が得られた。2013年度にASEANキャラバンに参加したところ、タイの企業から引き合いがあり、キャラクター関連の商品を中心に、現在では1年を通して継続的に注文を受けている(2014年3月19日記事参照)。注文してくれたのは、タイで日本にあるキャラクターショップのようなコンセプトの店を運営している企業だ。人気キャラクターのタイにおけるライセンサーと契約をしており、独自に店舗展開をしている。商品の中には、当社の商品以外にも日本から輸入したものもある。今後、地下鉄の駅全てに店舗を展開したいとのことだ。実際に店舗を見に行くと、高さ3メートルの柱に柱巻きで当社の商品がディスプレーされており感動した。

そのほか、タイではロフトや高島屋で当社商品の取り扱いがある。最近、売り場を訪問すると、1年前に訪問した際に置いてほしいと思っていた売り場に、当社商品が配置されており、当社の想定していた販売戦略を実現できた。当社の商品は、ターゲットの20代女性を中心に主にギフト商品として人気がある。タイでは贈り物が重要視されているようで、キャラクター関連の商品はカップル向けの物が多く、恋人同士のプレゼントに人気だ。また、出産祝いにも重宝されている。

<初出展のベトナムの商談もおおむね順調>
問:ASEANバイヤーの日本製品への評価・反応は。ASEANバイヤーが求めてくる製品の特徴は。

答:ベトナムの展示会は今回初めての出展で、ハノイとホーチミンに参加した。ベトナムは所得水準がまだまだで、百貨店も少なく市場性を疑問視していたが、それまで参加したどの国よりも反応が良かった。ライセンスの関係でキャラクター関連の商品は売れないが、商談が具体化しており、3社と話を進めているところだ。

ハノイのバイヤーは、陶器の工場がハノイ近辺にあることを理由に、ハノイ近辺で当社商品の製造・販売を望んでいる。陶器はベトナムにおける主力産業だ。市場にはまだ日本のものが少ない印象を抱いているが、当社商品はベトナムでも人気が出ると見込んでくれている。同国は中国製を避ける傾向にあり、最も望ましいのは日本製だが、その価格が高いならベトナム製がよい、という理由から現地での製造を望んでいるようだ。ベトナムの陶器工場は規模が小さく、大量生産の中国と性質が異なる。生産業者に対し、商品の作り方を1軒ごとに指導してほしいと言われてしまう。

ホーチミンの商談は順調だ。ホーチミンでは、ハノイではほとんどなかった独占販売を求めるバイヤーが多かった。この商品は間違いなく売れるという確信があるようだ。当社としては向こう1年間は独占販売権を与えない方針で、3社と継続して商談している。大抵の場合、商談の後は検査や関税の問題で話が頓挫することが多かったが、商談中の企業からは「なんとしてでも売りたい」という気概を感じる。

<タイではドイツのバイヤーとも商談>
タイの商談会では、ドイツで70店舗を展開するドイツ企業のバイヤーが来ており、話が進んでいる。現在、サンプルを先方に送付し、品質をチェックしてもらっている段階だ。ドイツは検査項目が日本より厳しい。先方は、ポップなデザインのティーセット、茶碗・汁碗のセットなど、十数アイテムをピックアップしていた。図らずも欧州のバイヤーと商談できる貴重な機会となった。

かわいくて面白いデザインの商品が来場者の目を引く

問:ASEANバイヤーへの売り込みで工夫した点は。

答:タイの展示会では、来場者に金額を分かりやすく示すための単価表を作成し持参した。2013年は単価表を作成しなかったが、それは、問屋と小売店では販売価格が異なるため、問屋が未定の状況下での提示を控えたからだ。

また、2014年から当社商品を販売しているタイの問屋に、一緒にブースに立って名刺を配ってもらった。

<タイをASEANの結節点に>
問:ASEAN市場開拓で直面した課題と対応策は。

答:ベトナムでの出展は今回が初めてであり試行錯誤した。関税と検査が問題で、陶器については20〜30%程度の費用を要する。中国からベトナムへ出荷すれば日本から出荷するより安価だが、中国製であるということが嫌がられてしまう。メード・イン・ジャパンということで、日本の原産地証明を添付する方針だ。

また、検査の問題については輸入側企業が対応している。輸入企業は他の日系企業と既に取引経験があり、しっかりしているとの評判を聞いている。まずはこのような企業と取引し、ベトナムへ商品を輸出する際のノウハウを勉強したい。

問:ASEAN市場開拓における今後の展望と事業展開は。

答:タイ、マレーシア、ベトナムでは当社商品と市場価格との差が開くことが予想されており、競争力が課題だ。市場価格との乖離により、「日系百貨店の商品は高過ぎて手が出ない」というのが現地の人の一般的な反応だ。

ASEANキャラバンがあれば、また参加したい。同事業をASEAN展開の軸として捉えている。方向性としては、タイを中心にASEAN各国を結び付けたい。タイで大きな在庫を持ってくれるディストリビューターが見つかることを望んでいる。今後、キャラクター関連の商品以外の当社プロパー商品についても扱ってもらいたい。

(板東辰倫)

(ASEAN・日本)

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