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中西部2都市で震災復興・対日投資セミナーを開催−福島県に進出の米医療器具メーカーなどが講演−

(米国)

シカゴ事務所

2015年03月30日

ジェトロは、東日本大震災から4周年に当たる3月11日にイリノイ州シカゴ、12日にミネソタ州ミネアポリスにおいて、震災復興・対日投資セミナーを開催した。本セミナーは、復興の最新状況と被災地でのビジネスチャンスや、米国民からの継続的な支援への感謝を伝えることを目的に、毎年この時期に中西部で開催している。今回は、原子力発電所事故の影響に関心の集まる福島県に焦点を当て、福島に工場がある米医療器具企業、福島第1原発で活躍する米ロボティクス企業、前ジェトロ福島事務所長が講演した。

<中西部と日本は先端製造業の中心>
米国中西部12州には日系企業が約2,000社あり、約20万人を雇用している(在シカゴ、デトロイト総領事館調べ)。日系企業は、外資系企業の中でも雇用数や海外輸出などにおいて現地経済への貢献度が最も高いとされる。こうした状況を背景に、震災後に各地の日米協会や日系商工会などを中心に復興を支援する活動が活発に行われたため、復興状況に関心を持つ米国人が多い。今回の2都市でのセミナーにもビジネス関係者など合わせて170人が参加した。

シカゴでのセミナーで冒頭あいさつに立ったジェトロ・シカゴ事務所の曽根一朗所長は、被災3県の復興状況とそれぞれの産業特性を伝え、3県全体の鉱工業生産指数が震災前の水準にほぼ回復したと紹介した。また、アベノミクスの進捗と日本経済について、2014年4月の消費税引き上げによって経済成長が一時鈍化したものの、2014年10〜12月期の実質GDPが年率1.5%成長と、3四半期ぶりのプラス成長となったこと、賃金や雇用など多くの指標で改善が進んでいることを伝えた。また、モレックスやキャタピラーなど中西部を代表する米企業が日本に研究開発・製造拠点を設置している理由を説明するとともに、中西部と日本は世界の先端製造業の中心であり、米国企業が東北地域を含む日本に投資し、研究開発や製造拠点を置くことの国際戦略上のメリットを強調した。

<被災地に根差し経済に貢献>
米ベクトン・ディッキンソン(BD)の日本支社である日本ベクトン・ディッキンソンのジョン・ハリス社長は、同社福島工場(福島市)の社屋破損などの被災状況と復興について次のように講演した。

同工場は、1987年の操業開始以来、医療用の平板生培地やプレフィル用シリンジを製造。拠点内に配送センターを持つほか、商品のラベリングや検品、品質管理も行っており、同社の世界の拠点の中で最も高い品質基準を誇る施設となっている。建物外観の破損は限定的だったが、内部の被害が大きかった。冷蔵保存が必要な平板生培地用の大型冷蔵室は破損と停電でドアが閉まらなくなった。また多くの商品が商品棚から落下し、スプリンクラーの破損により水浸しとなった。

工場で最初に確認したのは従業員の安否だった。乗っていた列車がトンネルの中で立ち往生した営業担当者がいたが、幸い無事だった。次に顧客への責任ある対応が焦点となった。福島の配送センターが機能しないため、関係会社の協力を得て東京に臨時配送センターを設けた。材料調達に苦労する競合他社に支援を申し出たこともあったという。ハリス社長は「なぜなら、患者たちが商品を必要としていたから。皆が互いに助け合う姿勢は驚くべきものだった」と述べた。震災直後から世界中の拠点から激励のメッセージが寄せられたという。同社は震災4日後には被災者への義援金として32万5,000ドルの拠出を発表、本社のビンス・フォーレンザ最高執行責任者(当時、現在は最高経営責任者)も3週間後には来日した。従業員たちは避難所で炊き出しを行うなど、ボランティア活動も継続的に行い、同社は福島工場を震災後2ヵ月で改修、再開した。

ハリス社長が紹介した震災後4年間の新たな事業展開も印象的だ。1つ目は、震災後、神戸に西日本配送センターを新たに開設したこと。震災の体験を踏まえたリスク回避の意味合いもあるが、日本市場でさらに成長するという同社の姿勢の表れといえる。2つ目は、宮城県発のベンチャー企業マイクロバイオと提携し、同社が開発した世界初の微生物迅速検査システムを、グローバル市場を視野に2014年から発売したことだ。日本のベンチャー企業による新技術が、BDのようなグローバル外資企業との提携によって海外市場に展開するという事例だ。3つ目は、福島工場が平板生培地について台湾などのアジア市場への輸出を開始したことだ。

ハリス社長は、日本の医療器具市場が高齢化や技術向上によって毎年拡大していると語った。BDにとって、日本は米国、中国に次いで世界3位の市場となっている。同社長は「戦略的、継続的な直接投資が長期での成長を可能にする」と述べ講演を締めくくった。同社の事例は、巨大な日本市場に根を下ろすために工場などの拠点を設置した外資が、日本の拠点からアジアなどへの輸出でさらに発展し、地域や被災地の経済に貢献している好例といえそうだ。

<原発での作業は迅速に進捗>
ミネアポリスのセミナーでは、地元ミネソタ州のエンジニアリング・ロボティクス企業のPaRシステムズのジョー・ディクソン氏が講演した。現在、同社の遠隔操縦機や遠隔クレーンが福島第1原発で活躍している。同社は1980年代初めから日本でビジネスを行っており、原発関連機関や大手企業と連携している。これまで日本で設置した原子力遠隔設備は45件と米国国内の180件に次いで多いという。

ディクソン氏は「今日は、福島第1原発での作業に関する世間一般の見方について議論したい」と前置きした上で、「原発で一緒に作業する日本人技術者は皆優秀で勤勉だ。彼らは最善を尽くしているが、作業の進捗スピードには満足していない。しかし、私が彼らに言うのは、これまでの原発事故と比べてみてはどうかということ。チェルノブイリ(ウクライナ、1986年)、スリーマイル島(米国、1979年)、ウィンズケール(英国、1957年)の原発がいまだに廃炉に至っていない中で、事故後4年で4号機の燃料取り出しを終えたのは驚くべき進展。作業は迅速に進捗しており、素晴らしい成果だ」と強調した(ただし、3号機ほか全ての廃炉が完了するまで30〜40年かかる見通し)。

<情報提供や風評被害などに対応>
最後に、2014年秋までジェトロ福島事務所長を務めた永松康宏ジェトロ・サンフランシスコ事務所次長が、復興に携わった体験を伝えた。福島事務所が入っている郡山市のコンベンション施設は、2,500人が避難する県内最大の避難所となっていたため、被災者の苦労を間近に感じながら業務を行った。同事務所の震災直後の課題は、「世界各国の放射線規制についての情報収集と提供」と「福島県産品の安全性のアピールと風評被害の払拭(ふっしょく)」だった。海外からメディアや食品バイヤーを招き、多くのビジネスミッションを受け入れた。海外からの訪問者が、福島の復興状況と製品・食品の放射線検査体制を視察して、「福島の食品が日本中、世界中で最も安全というのも理解できる」と言うのを聞き、こうした活動が正しかったことを確信したという。県庁と連携して福島県産の桃を震災後初めてタイやマレーシアなどへ輸出することにも成功した。

セミナー出席者に県が作成した「ふくしま復興のあゆみ」英文版を配付し、県が「医療機器産業分野」と「再生可能エネルギー分野」を産業復興の重点産業としていることを紹介。講演の最後に「1人でも多くの米国人に、美しい自然に恵まれ、豊かで安全な福島を訪問してほしい」と呼び掛けた。

(曽根一朗)

(米国)

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