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低い活用の必要性、通関手続きの簡素化に期待−日系企業のFTA活用実態と運用上の課題(8)−

(フィリピン)

マニラ事務所

2015年03月25日

日系企業は関税やその他の輸入税が免税となるフィリピン経済区庁(PEZA)の経済特区に進出することが多いため、もともと自由貿易協定〔FTA、経済連携協定(EPA)なども含む〕を活用する必要性は低い。このため、FTAの運用をめぐる問題などでジェトロ・マニラ事務所に寄せられる相談も少ない。一方、交渉が進むASEAN経済共同体(AEC)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に関しては、多くの在フィリピン日系企業が通関手続きの簡素化に期待している。

<関税など免税の経済特区に多くが入居>
ジェトロは2014年10〜11月、「在アジア・オセアニア日系企業実態調査(2014年度調査)」を実施した。このうち輸出入をしている企業のみを対象に発効済みのFTAの活用率を聞いたところ、回答があった在フィリピン日系企業100社のうち32社(32.0%)の企業が活用していると回答。インドネシアの58.2%、タイの53.7%、マレーシアの48.9%、シンガポールの41.4%、ベトナムの36.0%など周辺国と比べると低い活用率にとどまった。これは、フィリピンではPEZAに登録し、関税やその他の輸入税が免税となるPEZAの経済特区に入居する企業が多く、FTAを活用する必要がないことが一因と考えられる。

上記の理由から、FTAの運用をめぐる問題などでジェトロ・マニラ事務所に寄せられる相談も少ない。しかしこれまでの相談事例には、以下のように、原産地の累積規定を用いる場合の、フィリピンの原産地証明書発給当局(関税局)ルールの誤認をめぐる混乱などがある。

相談事例は、フィリピンからタイへ部品を販売し、タイ国内にて加工後、中国向けに輸出する際の、タイでの原産地の累積をめぐる問題だ。当該取引では、ASEAN中国FTA(ACFTA)を活用してタイから中国向けに製品を輸出する場合、締約国であるフィリピン原産の部材は、ACFTAの累積規定により、タイ原材料と見なすことができ、フィリピンからタイへの輸出では、ACFTAの原産地証明書フォーム(フォームE)を取得・利用することが、タイでの累積規定活用の条件となる。この際にフィリピン関税局がフォームEの発給を否認(ASEAN域内向けの輸出にACFTAの原産地証明書フォームは発給できないと説明)し、出荷が差し止められている、との相談があった。ジェトロ・マニラ事務所では、相談者と共に関税局に出向いて再度説明を行った結果、タイでACFTAの累積規定を活用することを前提に、当該貨物に対してフォームEの発給が認められた。FTAの運用をめぐっては、担当官のルール誤認によって利用が認められないケースも起こり得るため、同様の問題が生じた際には、まず所在国のジェトロ事務所へ相談するなどの対応が推奨される。

<AECとRCEPで期待する項目の1位に>
前述の調査では、2015年中に発足予定のAECで期待する項目(複数回答可)として、在フィリピン日系企業からは、通関手続きの簡素化(63.9%)、税制面での二重課税防止、源泉徴収税率のバラつきの是正(39.5%)、熟練労働者の移動自由化(25.2%)、原産地規制などに係る解釈・運用の統一化(21.0%)、ASEAN共通の基準・認証・表示制度の導入(19.3%)などが挙げられた。また、RCEPに期待する項目についても同様に、通関に係る制度・手続きの簡素化が62.7%でトップとなった。RCEPについては以下、労働査証発給に係る制度・手続きの緩和(39.8%)、外資参入規制の緩和・撤廃(28.0%)、利用しやすい原産地規則の採用(27.1%)、域内における公平な競争環境の整備(25.4%)が期待される項目として挙げられた。

<マニラ港ではオンライン化が実現>
マニラ港での通関審査は、日本の輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)に相当するElectronic 2 Mobile Custom(E2M)によるオンライン化が実現している。商業用貨物の場合で価額が2,000ペソ(約5,400円、1ペソ=約2.7円)以上のもの、また、貨物価額、貨物種別にかかわらず、国内産業保護のため関税委員会によって通常通関が必要と判断されたものについては、このE2Mによる通関が義務付けられる。このE2Mによる通関を通常通関(Formal Entry)と呼び、E2Mによらないマニュアルによる通関を簡易通関(Informal Entry)と呼ぶ。

このE2Mは、フィリピン独自のシステムだが、国連貿易開発会議(UNCTAD)のモデルを参考に構築された。現行のE2Mでは、(1)E Commerce、(2)E Connect、(3)CDECの3種のシステムがあり、利用者はいずれかのシステムを選択して通関手続きを行う。

税関での通関審査は、税関職員の職位により、はじめにCustoms Operations Officer 2(COO2)、次にCustoms Operations Officer 3(COO3)、最後にCustoms Operations Officer 5(COO5)と3段階での審査が行われる。

税関職員は、荷主(実際には荷主により通関手続き委託された通関業者)によりE2Mに入力された輸出入申告書の内容が、添付書類として提出された商業インボイス、船荷証券(B/L)などの内容と一致しているかどうかを確認し、輸出入申告書に記載された商品名に疑義がないかどうかを確認する。

審査結果は、青、黄、赤の3段階で表示される。青は即時許可、黄は書類審査、赤は現物検査で、日本のNACCSの審査区分1(簡易審査対象=即時許可)、審査区分2(税関審査対象)、審査区分3(税関検査対象)に相当する。日本の輸入通関の場合は、9割以上の貨物が区分1となっているが、フィリピンでは即時許可となる青と判定される割合は低く、多くは疑義貨物として、書類審査や現物検査の対象となっているようだ。

2014年10月24日付ビジネスインサイトによると、ジョン・フィリップ・セビーラ関税局長は、2016年の10月までにフィリピンに輸入される貨物の取り扱い・通関手続きに要する時間を4時間に短縮すると発表した。貿易円滑化促進のため、輸入許可規制を首尾一貫したリストに簡易化する予定だとしている。

(石川雅啓)

(フィリピン)

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