日本進出カナダ企業がビジネス戦略を披露−トロントで対日投資セミナーを開催−

(カナダ)

トロント事務所

2015年03月24日

ジェトロは3月3日、トロントで「ジャパン・ビジネス・セミナー」を開催した。日本の投資環境をアピールした基調講演に続いて、日本でビジネスを展開するカナダ企業4社が、対日ビジネス経験や成功するためのポイントをそれぞれの視点で説明した。

<対日ビジネス環境の魅力をアピール>
ジェトロは3月3日にカナダ外務貿易開発省(DFATD)と共催で、トロントのヒルトンホテルで「ジャパン・ビジネス・セミナー」を開催した。このセミナーは、対日直接投資促進に向けた取り組みの一環として、カナダ企業の日本に対する関心を高めることを目的としている。セミナーにはカナダ企業のほか、国際的に事業を展開する日系企業などから135人が参加した。

セミナー会場の様子

基調講演ではジェトロの加藤庸之理事が、日本経済の現状や安倍政権の経済政策、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた経済展望などについて説明した。また、各主要都市の経済規模が1つの国家レベルの規模のGDPを有していることや、日本政府の対日投資促進施策として法人実効税率の引き下げ、構造改革、規制緩和に取り組んでいることについて、データや図を用いて紹介し、日本の良好な投資環境をアピールした。

<カナダ4社が対日ビジネス成功のポイント説明>
続いて、カナダ企業によるケーススタディーのプログラムでは、保険、インフラへの投資を手掛ける年金基金、IT、自動車部品製造業と異なる4分野のカナダ企業がそれぞれの視点で対日ビジネスでの経験などを説明した。

保険会社マニュライフ・ファイナンシャルのポール・ルーニー最高執行責任者(COO)は、同社の収入のうちカナダ以外が全体の3分の2を占め、そのうちの4分の1は日本からであることを紹介した。現在は日本に120以上の拠点と2,700人以上の従業員がいること、対日ビジネス成功のポイントとして日本でのビジネス経験豊富な専門家を組織に参加させることが重要だと述べた。

年金基金オマーズのジャック・ドゥメアーズ投資連携担当役員は、日本政策投資銀行(DBJ)や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と提携してビジネスを展開しており、日本市場への参入を検討する企業は長期的な視点でビジネスを考える必要性を強調した。

IT企業のレッドニー・ソリューションズのビシャール・コターリCOOは、同社が当初、日本市場参入に消極的だったことを明かした。しかし、日本に多くのビジネスチャンスがあることに気付いて市場参入を決意、拠点設立の準備のためにジェトロのビジネスサポートセンターを利用した。対日ビジネスを通じて、日本のソフトウエア製品の販売やサービス提供方法について多くを学ぶと同時に、適切なビジネスパートナーを見つけ良好な関係を構築する重要性を強調した。

自動車部品製造業ウッドブリッジグループのハムディ・カーリル・シニアグローバルディレクターは、日本で既に30年以上ビジネスを展開しており、パートナーの日本企業と良好な関係を維持しているとし、日本企業と直接ビジネスを行うことで日本独特の仕様や考え方を理解するのに役立ったと述べた。

参加者との質疑応答では、「日本でビジネスを行うに当たり、誤解していたことは」との質問に対して、「日本は海外とのビジネスにあまり積極的ではないと思っていたが、一度信頼関係を構築できれば非常に積極的だった」「当初、日本市場で国内企業と競争するのは困難と思っていたが、独自性のある製品やサービスが日本市場のニーズにマッチしていれば成功できると分かった」の回答があった。実際に対日ビジネスを経験して、初めて気付かされることがあるようだ。

質疑応答の様子

<関心が高い資金やM&Aのサポート事例紹介も>
次のプログラムでは、DBJの淵脇大樹ニューヨーク次席駐在員が、資金面やM&Aに関するサポートについて説明した。外国企業に対するサポート事例を交えながら講演し、実際に対日投資を検討しているカナダ企業の関心を集めた。最後に、ジェトロ・トロント事務所の中村和生所長が、ジェトロが支援したカナダ企業の対日投資事例を紹介した。スクリーンで日本でビジネスを展開するカナダ企業を紹介し、カナダ人にとって身近な企業が対日ビジネスを手掛けていることを知ってもらうきっかけとした。

(伊藤敏一)

(カナダ)

ビジネス短信 550be5877b890