地域統括本部の事業範囲と恩典が拡充−商社業務と地域統括本部の新投資奨励政策(2)−

(タイ)

バンコク事務所

2015年03月10日

新投資奨励政策の変更点の後編は地域統括本部について。タイ投資委員会(BOI)が2014年12月末までの申請に適用していた地域統括本部である「地域事業本部事業(ROH)」が新投資奨励策では「国際地域統括本部(IHQ)」となり、事業範囲や恩典が拡充された。

<財務センターも事業の対象に>
IHQでは、ROHで認められていなかった財務センターが認められるなど、事業範囲が拡大された。また、歳入局の恩典も一部の取引の収入が非課税になるなど充実した。さらに、申請条件も「3ヵ国以上にある支部または関連企業を統括」という条件が「最低1ヵ国、国外にある支店または関連会社を統括」に変更されるなど緩和された。

IHQとは、タイの法律に基づいて設立され、国内外の関連企業または支店に対して(1)一般管理、事業計画立案、ビジネスコーディネート、(2)原材料および部品の調達、(3)製品の研究開発、(4)技術支援、(5)マーケティングおよび販売促進、(6)人事管理、トレーニング、(7)財務、マーケティング、会計システムなどの業務に関するアドバイス、(8)経済と投資の分析および研究、(9)ローン管理、(10)財務センター、といったサービスを提供する会社のことで、国際貿易センター(ITC)業務を行うことも含まれる。

<BOIと歳入局の両方の恩典申請も可能>
IHQに対して、BOIと歳入局から次の恩典が付与される。投資家はBOIまたは歳入局の恩典のいずれかのみを申請することも、両方の恩典を申請することも可能だ。

(1)BOIの恩典
・外国人技術者・専門家の導入許可
・土地所有の許可
・研究開発およびトレーニング用の機械の輸入関税免除
・輸出向け製品のための原材料の輸入関税免除

なおIHQについては、A1〜B2の6段階あるBOIの奨励グループ上、B1に区分されている。B1は、基本恩典(法人税免除)が認められない一方、追加恩典の一部は条件を満たせば付与されるグループだが、BOIの投資奨励業種リストには、ただし書きとして「メリットに基づく恩典対象にならない」とされており、基本恩典・追加恩典ともに受けられない点は注意が必要だ。

(2)歳入局の恩典(BOIとは別に申請が必要)
a.法人所得税が免除される収入
・国外にある関連会社への管理・技術サービス、財務支援・管理サービスの提供による収入
・国外にある関連会社からの権利使用料
・国外にある関連会社からの配当金
・国外の関連会社の株式譲渡による収入。ただし、換金して当初資金を超えた分のみ。
・IHQの外国支店の収入。ただし、その支店の経費をタイでの課税所得計算に参入しないこと。
・タイ国を経由しない国外での商品調達・販売の収入(OUT−OUT)。国外の法人に対して貿易関連サービスを提供し、国外で発生した収入

b.法人所得税率が10%に引き下げられる収入
・タイにある関連企業への管理・技術サービス、財務支援・管理サービスの提供による収入
・タイにある関連会社からの権利使用料
・国外での製造を目的に、タイ国内から原材料または部品を調達し、国外の関連企業に販売する取引(IN−OUT)による収入

c.外国人専門家などの個人所得税率を15%に引き下げ
・IHQで働く外国人技術者・専門家または上級幹部に対する個人所得税率が課税所得の15%に引き下げられる。

d.特別事業税が免除される事業
・タイ国内外の関連企業への貸出業務

e.源泉徴収税が免除される貸出利息
・タイ中央銀行の基準および条件に基づき、タイ国内外の関連企業への貸出から発生した利子

なお、歳入局の恩典は内閣法制局で審議中であり、3月中に施行される予定。BOIのヒランヤ・スチナイ長官代理は「現在の案が変更される可能性は99%ない」と説明した。

BOIと歳入局の恩典の申請条件は次のとおり。
(1)BOIの恩典
・最低1ヵ国、国外にある支店または関連会社を統括すること。
・払込登録資本金が1,000万バーツ以上であること。

(2)歳入局の恩典(BOIの恩典の申請条件に次の条件が追加)
・タイにおいて関連業務の運営費用(販売費および一般管理費)が年間1,500万バーツ以上であること。

<財務センターの事業範囲を規定>
なお、新たに認められることになった財務センターの事業範囲は以下のようになっている。
・流動性管理:国外からの外貨借り入れ、関連企業へのバーツ貸し出し、または国外にある会社に対して関連企業の余剰資金の外貨での貸し出し
・関連企業の取引記録
・関連企業の外貨債務または外貨建ての請求書の買い取り・支払い、および国外にある取引先への外貨支払い
・国外にある取引先との外貨債権・債務の相殺
・相殺済みの外貨買い取りまたは売却、および為替相場リスクのマネジメント
・タイ中央銀行の為替管理責任者の発表によるその他の財務センターの事業範囲

BOIは「旧制度のROHを新制度でIHQに変更した」という見解だ。これまでROHを行ってきた企業からは事業範囲が拡大されたIHQに変更したい、という要望が寄せられており、BOIは「業態変更」という手続きを行えば、可能としている。詳細手続きは近日中に発表の予定。

(長谷塲純一郎)

(タイ)

ビジネス短信 54f6b22f04a38