外資単独で商社業務への参入が可能に−商社業務と地域統括本部の新投資奨励政策(1)−

(タイ)

バンコク事務所

2015年03月09日

新投資奨励政策が1月から施行された。その中から2月18〜20日に日本で開催されたタイ投資セミナー「新投資奨励戦略:持続的成長を目指して」で、BOIから説明のあった商社と地域統括本部に関する主な変更点を2回に分けて報告する。前編は商社業務について。タイ投資委員会(BOI)が2014年12月末までの申請に適用していた商社業務の「部品および半製品の調達事務所(IPO)」が「国際貿易センター(ITC)」になり、諸条件が緩和された。

<完成品も取り扱えるように>
ITCでは、IPOで求められていた、(1)倉庫の保有とコンピュータによる管理、(2)検品・品質検査・梱包(こんぽう)作業の実施、(3)国内を含む複数の調達先を有すること、という条件がなくなり、「払込登録資本金が1,000万バーツ(約3,700万円、1バーツ=約3.7円)以上」のみとなった。また、取り扱える商品の「部品および半製品」という限定がなくなり、完成品も扱えるようになった。

ITCとは、国外の法人に対し、商品、原材料、部品を調達・販売、並びに貿易に関連するサービスの提供を目的として、タイの法律に基づき設立された法人をいう。ITCに認められる事業は、(1)商品の調達、(2)出荷待ちの商品保管、(3)包装・梱包、(4)商品の運送、(5)商品の保険、(6)商品に関する助言、技術的サービス、トレーニングの提供、(7)歳入局長官が定めたその他のサービス、となっている。

ITCでは、部品や原材料に加え商品(完成品)の取り扱いが可能になった。また、国内から国外(IN−OUT)、国外から国内(OUT−IN)、国内から国内(IN−IN)、国外から国外(OUT−OUT)の全ての取引が可能となった。

商社業務については外国人事業法による規制があり、資本金1億バーツ未満の場合には外国人または外国企業が過半数の株式を持つことができない。ただしITCとしてBOIの奨励を受けることで、外国人事業法の対象外となり、資本金の多寡にかかわらず外資100%で参入することが可能となる。

<BOIと歳入局からそれぞれ恩典>
ITCに対して、BOIと歳入局から次の恩典が付与される。投資家はBOIまたは歳入局の奨励のいずれかのみを申請することも、両方の恩典を申請することも可能だ。

(1)BOIの恩典
a.外国人技術者・専門家の導入許可
b.土地所有の許可
c.機械の輸入関税免除
d.輸出向け製品のための原材料の輸入関税免除

なおITCについては、A1〜B2の6段階あるBOIの奨励グループ上、B1に区分されている。B1は、基本恩典(法人税免除)が認められない一方、追加恩典の一部は条件を満たせば付与されるグループだが、BOIの投資奨励業種リストには、ただし書きとして「メリットに基づく恩典対象にならない」とされており、基本恩典・追加恩典ともに受けられない点は留意が必要だ。

(2)歳入局の恩典(BOIとは別に申請が必要)
a.法人所得税を免除される収入
・タイを経由しない商品調達・販売に係る取引(OUT−OUT)から得られる収入
・タイ国外にある法人に対して貿易関連サービスを提供し、国外で発生した収入

b.法人所得税率が10%に引き下げられる収入
・タイ国外での製造を目的にタイ国内から原材料または部品を調達し、他国の法律に従って設立された関連企業に販売する場合の収入(IN−OUT)

c.個人所得税率が課税所得の15%に引き下げ
・ITCで働く外国人技術者・専門家または上級幹部に対する個人所得税率が課税所得の15%に引き下げられる。

なお、歳入局の恩典は内閣法制局で審議中であり、2015年3月に施行される予定。BOIのヒランヤ・スチナイ長官代理は「現在の案が変更される可能性は99%ない」と説明した。

BOI恩典の申請条件は、「払込登録資本金が1,000万バーツ以上」のみ。一方、歳入局の恩典の申請条件には、「ITC事業にかかる運営費用(販売費および一般管理費)が年間1,500万バーツ以上であること」が追加されている。

<IPOからITCへの「業態変更」が可能>
BOIは「IPOはITCに包含された」という見解だ。これまでIPOで商社活動を行ってきた企業からは、大幅に条件が緩和されたITCに変更したい、という要望が寄せられている。これに対し、BOIは「業態変更」という手続きを行えば可能としている。詳細手続きは近日中に発表される予定だ。

(長谷塲純一郎)

(タイ)

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