最低賃金を4月から44%引き上げ

(ラオス)

ビエンチャン事務所

2015年03月03日

ラオス労働社会福祉省は2月9日、4月1日から最低賃金(月額)を現行の62万6,000キープ(約9,390円、1キープ=約0.015円)から90万キープ(約44%増)に引き上げるガイドラインを公布した。最低賃金の引き上げは3年3ヵ月ぶりで、インフレ対応や外国への出稼ぎ抑制のために必要な措置とされる。一方で、労働コスト上昇をカバーするためには労働生産性の改善が急務となる。

<インフレ対応や国外出稼ぎ抑制が狙い>
ラオス労働社会福祉省は2月9日付で「ラオスの労動者の最低賃金の改正に関するガイドライン(No.808/LSW)」を公布し、最低賃金が4月1日から現行の62万6,000キープから90万キープへ44%引き上げられることになった(図参照)。この最低賃金は全国同額で、業種を問わず適用される。ラオスの最低賃金は、これまで2005年4月に29万キープ、2009年5月に56万9,000キープ(注)、2012年1月に62万6,000キープと3〜4年に1度、改定されてきた。今回は3年3ヵ月ぶりの改定となる。

最低賃金改定への取り組みは、2014年初旬に行われた労働社会福祉省、労働組合連合、ラオス商工会議所の3者で構成される第9回諮問委員会で最低賃金切り上げの実施に合意。ラオス商工会議所からは80万キープが提案されていたが、2014年11月の第11回諮問委員会で最終的に90万キープとすることになったという。労働社会福祉省労働管理局のポンサイサック・インタラート局長は、今回の引き上げは生活費の上昇や労働者不足問題への対応、隣国への出稼ぎ抑制に必要な措置だと説明し、理解を求めた。特にタイでは2013年1月から最低賃金(日額)が全国一律300バーツ(約1,110円、1バーツ=約3.7円)に引き上げられ、ラオスからも30万人程度の労働者がタイへ出稼ぎに出ているとされる。ラオスの平均インフレ率は2010年から2014年の年平均で5.7%。公務員については2010年から段階的に給与の引き上げが行われており、現行の公務員最低賃金は2013年10月から90万4,500キープとなっている。今回の民間最低賃金の改定により、公務員の最低賃金とほぼ同レベルに引き上げられることになる。

年平均インフレ率と民間・公務員最低賃金の推移

<労働集約型企業には労働コスト増大>
今回、最低賃金の定義として、ガイドライン第2項2で「最大26日間の労働における金額とし、時間外労働賃金、各種手当、奨励金、食費、宿泊費、送迎費、日当などの福利厚生分を除く基礎給与とする」と明確に定められた。日系企業ではこれまでも各種手当を含まない基礎給与として、最低賃金以上の金額を給付していたところが多いことから大きな混乱はないとみられ、実質的な賃金上昇幅は単純に44%には至らないだろう。しかし、時間外労働賃金や社会保障費などの算出にも影響するため、労働コストの増大は特に労働集約型企業にとって新たな課題となる。日系縫製業からは「賃金上昇に見合う生産性の改善が急務」との声も上がっている。

近年、周辺国においても最低賃金の引き上げが順次行われており、カンボジアでは2015年1月1日から28%増の月額128ドルとなった(2014年12月17日記事参照)。ASEAN地域全体としても労働コストが上昇する中、ラオスが競争力を確保するためには、廉価な電力、安定した政治情勢、器用な労働者といった魅力を増やしつつ、生産効率の向上やハード・ソフトインフラの整備などの課題の改善を平行して早急に進めることが必要だろう。

(注)2009年5月の最低賃金そのものは34万8,000キープだが、さらに1日8,500キープの手当を出すことが義務付けられたことから、1ヵ月26日間労働として合計56万9,000キープが支給されることになった。

(山田健一郎)

(ラオス)

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