キッチンツールは食文化に合った商品提案を−ASEAN市場に挑む中小企業(5)−

(ASEAN、日本)

アジア大洋州課

2015年03月30日

刃物や台所用品メーカーの下村工業(本社:新潟県三条市)は、切れ味が自慢の包丁やスライサーなどの調理器具でASEANキャラバン事業に参加し、現地市場情報、バイヤー情報を効率的に収集できたと語る。日本本社と中国製造拠点で異なる商品ラインアップを使い分け、ASEAN市場開拓を目指す。専務の下村達大氏に聞いた(1月15日)。

<中華包丁とフルーツナイフに人気>
問:ASEAN進出の経緯と市場開拓の現状は。

答:当社は3社からなるグループ企業で、ほかに中国・香港で海外向け製品の製造とOEM(相手先ブランドによる生産)受託などを行う下村香港、生協や通販会社向けの国内販売を行う下村企販がある。5年ほど前に海外事業を検討し始め、中国に注力してきたが、海外販売の割合はまだ小さい。ASEANビジネスはこれまでほとんどなかったが、関心は持っていた。現時点ではASEAN向けの商品開発はできていないが、既存製品のASEANバイヤーの反応をみたかったためキャラバンに参加した。

問:ASEANバイヤーの日本製品への評価・反応は。ASEANバイヤーが求めてくる製品の特徴は。

答:人気があった商品は、中華包丁とフルーツナイフだ。バイヤーから「切れ味が良い」と品質面での評価があったものの、価格の高さが指摘された。日本での包丁の販売価格は、一般のもので2,000〜3,500円程度だ。一方、ベトナムで売られている包丁の価格帯は、一般的なもので3〜4ドル程度、高価なもので15ドルであり、やはり価格を下げなければならない。しかし、5年前にベトナムを訪問し、市場視察をした際には15ドルの包丁は売られていなかった。市場の着実な成長を感じている。

高価格でも「Made in Japan」の刻印がある商品に対するバイヤーの関心は高かった。価格で考えると、日本製品でなく中国拠点で製造している商品の方がビジネスの可能性がありそうだが、日本製品についてもトライアルをしていきたいと考えている。

商品によっては、レストランや業務用販売の可能性も感じた。反対に、一般的な商品については価格が安いため、その分野であえて勝負する必要はないと考えている。

問:ASEANバイヤーへの売り込みで工夫した点は。

答:やはりそれぞれの土地に合った商品を提案することが重要で、日本でしか売れないような商品は展示会に出品しなかった。東南アジアではよく果物を食べるせいか、フルーツ用の調理器などに需要がある。反対に、大根のつま切り用のスライサーは日本では売れるが、ベトナムやタイでは細過ぎるとの評価だった。

バイヤーから商品への評価がコメントされる

<新しい観点で便利さ提供できる器具を>
問:ASEAN市場開拓で直面した課題と対応策は。

答:まずは、価格を抑えることが課題だ。価値観やライフスタイルが違うため、出来合いの商品を持ち込んでも高いといわれてしまうため、ASEAN市場向けの商品を作り込む必要性を感じている。大抵の商品は世間に出回っているので、今まで誰も気付いていなかった新しい観点で便利さを提供できるような器具を開発したい。

問:ASEAN市場開拓における今後の展望と事業展開は。

答:ASEANキャラバン事業には、引き続き参加したい。また、今後はマレーシア、インドネシア市場にも関心を持っている。純正の日本製品を欲しがる人もいるが、中国製で一定の品質を保った安価な商品の方が、需要のボリュームは大きく、ビジネス拡大の可能性は高いとみている。

(古屋礼子)

(ASEAN・日本)

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