タイでも普及の脂取り紙、差別化に工夫−ASEAN市場に挑む中小企業(4)−

(ASEAN、日本)

アジア大洋州課

2015年03月27日

和紙メーカーのモルザ(本社:岐阜県関市)は近年、新規分野として化粧雑貨に注力している。中でも、使いたい分だけ紙を引き出して使うことのできるロールタイプの脂取り紙が人気だ。ASEANキャラバン事業には3年前から参加しており、展示・商談会を通じて、毎年新たなバイヤーと関係構築を図っている。モルザの紙事業部海外営業課部長代理の冨永憲一氏に聞いた(1月15日)。

<求められる競合品との差別化>
問:ASEAN進出の経緯と市場開拓の現状は。

答:当社は2004年に上海に駐在員事務所を設立し、2011年に同所を現地法人に格上げした。中国では販売と委託加工管理を行っている。しばらくは上海での事業に集中しており、他国に関しては出張ベースでの営業マーケティングが中心だった。しかし、ASEANは国によって発展段階に違いがあるものの、顕著に経済成長が進んでおり、商機があると判断した。中でもタイは親日国であり、市場としてだけでなく、チャイナプラスワンのリスクヘッジを考えて、中国以外での当社製品の委託加工先としても今後検討したいと思ったのが経緯だ。

問:ASEANバイヤーの日本製品への評価・反応は。ASEANバイヤーが求めてくる製品の特徴は。

答:タイでは確かな需要を感じた。脂取り紙の購入者は圧倒的に女性が多いが、男性の利用者も多い。タイのバイヤーは、日本製に憧れるものの、安ければ中国製でも構わないという反応だった。一方、ベトナムでは最近の両国間の関係も影響してか中国製を避ける傾向があった。韓国製も受け入れられているが、日本製への憧れが最も強かった。包装などは中国で行っているが、紙は日本製でありバイヤーからは「メード・イン・ジャパン」が評価された。

タイでは脂取り紙が男女ともに普及している

問:ASEANバイヤーへの売り込みで工夫した点は。

答:日本の小売価格より安い価格を提示し、現地に合わせた価格設定となるよう工夫した。そのため、現地の薬局などで競合品の小売価格を調査し、どの程度の価格設定が適当なのか状況の把握に努めた。

タイの脂取り紙は紙製ではなく、フィルムタイプが主流だ。そのため、フィルムタイプとの差別化を図る必要もある。紙は繊維でできているため、緑茶パウダーや金箔を混ぜたりすることができる。また、フィルムは化学製品だが、紙はナチュラルなイメージで環境に優しい商品であることをアピールして差別化を図っている。こうした取り組みで、フィルムタイプの牙城を崩していきたい。紙製品は繊維質に脂がよく染み込むが、フィルムは表面的な作りになっている。しかし、フィルムは色が変わることによる「皮脂が取れた感」がより強く感じられるため、自社の紙製品についても紙の色などについて工夫していきたい。

<コスト削減のため現地生産も視野に>
問:ASEAN市場開拓で直面した課題と対応策は。

答:フィルムタイプとの競争に勝つため、コスト削減をして販売価格を下げなければならない。日本製にこだわれるといいが、それだとどうしても価格は安くならない。可能性として、タイなどに生産拠点を構えられないかと検討している。それが実現すれば、そこを拠点に周辺諸国への売り込みにも期待を掛けられる。

問:ASEAN市場開拓における今後の展望と事業展開は。

答:ASEANは魅力的な市場で、引き続き開拓に当たっていく。しかし、国により経済レベルに差があり、優先順位を設ける必要がある。ASEAN全体に一挙に攻め込みたいが、中小企業なので体制的にそれは難しい。まずはタイ、インドネシア、マレーシアで糸口をみつけたい。特に、大きな人口を抱えるインドネシアには関心を持っている。ただインドネシアは広大で、十分な市場調査をした上で取り組んでいく必要があると感じている。

(古屋礼子)

(ASEAN・日本)

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