韓国とのFTA、国会における批准審議が終了

(韓国、コロンビア)

ボゴタ事務所

2015年02月17日

コロンビアと韓国の自由貿易協定(FTA)の批准法案が、2014年12月に議会を通過した。今後、憲法裁判所の承認を得て発効となる。自動車の輸入関税が段階的に撤廃されることで、日系企業にも影響がありそうだ。また、農産品分野では食品衛生基準の順守など新たな課題も多い。コロンビアにとって初となるアジアとの2国間FTAの意味合いを報告する。

<憲法裁判所の承認を経て発効に>
コロンビアの通商政策はアジアを見据えている。隣国パナマとのFTA(2013年9月署名)の批准審議が皮革製品や履物の輸入関税などの問題により頓挫する一方、韓国とのFTAは2014年12月16日に国会における批准承認が終わった。署名は2013年2月で、1年半以上の歳月を要した。韓国とのFTAは憲法裁判所の判断を待って、正式な発効日が公示されることとなる。

オルギン外相はこのFTA批准を受けて2015年1月に訪韓し、「残る憲法裁判所の手続きを迅速に行う」と早期発効を明言した。中南米で唯一、朝鮮戦争に派兵し、200人以上の犠牲者を出したコロンビアを、韓国は「特別な友人」と呼んでいる。親密な友好感情がある両国は、FTA発効後に貿易額の大幅増や企業進出の加速など、2国間経済関係の緊密化を期待する。

<自動車関税の段階的撤廃は日系企業に打撃も>
両国はFTA発効後、タリフライン(関税品目数)ベースで98%の品目の関税を即時撤廃し、韓国からコロンビアへの最大の輸出品目である自動車(現行関税率は35%)を含む残りの2%については段階的に撤廃する。これにより、コロンビアの自動車市場における韓国企業の競争力が強まることが予想される。

2014年のコロンビアの新車販売動向をみると、国産車11万374台〔乗用車、タクシー、スポーツ用多目的車(SUV)、バン、ワゴン、ピックアップトラック、商用貨物車、商用バスの合計〕に対し、輸入車は約2倍の21万8,152台。2014年のブランド別最終ユーザー向け新車登録台数では、日本車は日産(2万1,293台)、トヨタ(1万3,746台)など10ブランド計で6万1,900台となり、依然として米国に次ぐシェア2位だ(表参照)。一方、発効後の段階的な関税引き下げ措置が開始されれば、韓国車(2014年:起亜、現代、双竜の3社で計5万4,290台)の勢いが増すとみられる。

ブランド別最終ユーザー向け新車登録台数(2014年)

日本もコロンビアと経済連携協定(EPA)の交渉をしているが、韓国とのFTAが発効すれば、日本企業を含めた自動車産業は競争激化を免れないだろう。アルバレス商工観光相は産業界からの韓国とのFTA反対の声に対して、コルモトーレス〔ゼネラルモーターズ(GM)の現地法人〕が2014年10月に生産拡大を発表したことを引き合いに出し、「自動車業界が何を怖がっているのか分からない」と一蹴(当地経済紙「エルティエンポ」2014年12月20日および「セマーナ」誌2015年1月30日インタビュー)。政府は、2009年からの韓国とのFTA交渉では一貫して「関税が撤廃されるまでに競争力をつければよい」との考えを崩しておらず、地場産業振興策などの政策を導入することはないとみられる。2万5,000人の国内雇用を有する同産業は、市場原理の手に委ねられることになる。

<農産物輸出では韓国基準の達成が必要>
コロンビアは、韓国とのFTAで農産物分野における商機があるとみており、コーヒー(生豆のみ)の対韓国輸出手続きを迅速にするプロセスが開始される。コロンビアの誇るアラビカ豆の輸出増が期待されそうだ。また、バナナ、果物、牛肉、たばこなど10年間で段階的に関税が撤廃とされる品目については、その間に韓国の食品衛生基準を達成することや、食習慣への対応を図る必要がある。コロンビアにとってはアジアで初となる韓国とのFTAは、同分野についても日本との将来的なEPA発効の際の布石となり得る。

(安心院茉里)

(コロンビア・韓国)

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