特許などの権利保護制度を改正−関連条文が2015年1月1日に発効−

(ロシア)

サンクトペテルブルク事務所

2015年01月28日

国内の知的財産権保護制度について規定している民法第4部(2008年1月1日施行)の改正に基づき、2015年1月1日に特許・実用新案・意匠の権利保護の期間や延長制度などが改正された。

<意匠権保護の期間は出願日から5年に>
民法第4部の改正(2014年3月12日付連邦法第35−FZ号「ロシア連邦民法第1部、第2部、第4部および個別の連邦法の改正について」)で2015年1月1日に発効した主な変更点としては、(1)特許・実用新案・意匠の権利保護期間や延長制度の改正、(2)特許権・実用新案権・意匠権が侵害された場合における損害賠償の代わりに補償金を請求する権利の導入がある。

権利保護期間や延長制度を規定する第1363条が改正された(表参照)。特許(発明)の権利保護期間延長制度(最長5年)の適用は、医薬品・殺虫剤・農薬の製品に限られ、開発・製造方法は対象外となった。また、実用新案の権利保護期間は、最長3年の延長制度が廃止され、最長10年となった。意匠権の権利保護期間が出願日から5年(5年ごとの延長制度あり、複数回の延長可、ただし権利保護期間は最長25年)に変更された。

このほか、特許権、実用新案権、意匠権の侵害における損害賠償の代わりに補償金を請求する権利が導入された(第1406.1条)。権利侵害が発生した場合、損害賠償の代わりに、1万〜500万ルーブル(約1万8,000〜900万円、1ルーブル=約1.8円)の補償金、または侵害により生じた損失の2倍に相当する補償金を請求できるようになった。

各権利の権利保護期間

<7つの新規条文を追加>
なお、327の条文のうち約半数に当たる169の条文が改正され、新たに7つの条文が追加された。追加された条文としては、(1)公の紋章や名称、識別標章を含む対象物(第1231.1条)、(2)科学、文学、芸術作品の使用に対するオープンライセンス(第1286.1条)、(3)相続による著作隣接権の移転(第1308.1条)、(4)データベース製作者の権利侵害に該当しない行為(第1335.1条)、(5)従属特許、従属実用新案、従属意匠(第1358.1条)、(6)特許権・実用新案権・意匠権侵害の責任(第1406.1条)、(7)相続による集積回路配置利用権の移転(第1457.1条)がある。

主な改正のポイント(2014年10月1日発効)として、一般規定の中では、特許権、実用新案権、意匠権、商標権に関わるライセンス契約の登録手続きが簡素化された(第1232条第3項)。ライセンス契約の連邦知的財産局(ロスパテント)への登録は、契約当事者双方あるいはいずれか一方が、契約書の提出に代えて取引事実(契約の種類、契約当事者に関する情報、契約の対象)の通知を行うことで登録できるように簡素化された。営利活動を行う企業間での排他的権利の譲渡やライセンスの際の無償契約は禁止された(第1234条第3.1項、第1235条第5.1項)。これまで法律上認められてきた無償の譲渡契約やライセンス契約については、税務署が意図して無償契約と判定し、市場価格を算定基準として使用料への課税のほか追徴金を課すケースがあったため、この問題を解消する目的で改正された。

著作権では、今回の改正により、インターネット上のウェブサイトが編集著作物(選集、百科事典、データベースなど)に分類されることが規定された(第1260条第2項)。

また、特許(発明)においては、発明の対象が明確になった(第1350条)。今回の改正で、保護対象となる発明は「特定目的のための製品またはプロセス(方法)の使用を含む、製品または方法に関する技術的解決策」と規定された。実用新案では、出願審査に際して実体審査(新規性、産業上の利用可能性)が導入された(第1390条)。

意匠では、本質的特徴の定義が改正された(第1352条)。従来は形態、構造、装飾、色彩は本質的特徴と見なされてきたが、これらに加えて、線、輪郭、素材なども本質的特徴として考慮されることになり、本質的特徴の一覧は提出不要になった(第1354条第3項、第1377条第2項)。

(宮川嵩浩)

(ロシア)

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