外国建設会社の駐在員事務所規定が改定−案件に最低金額の制限で参入にハードル−

(インドネシア)

ジャカルタ事務所

2015年01月20日

公共事業省は、外国建設会社駐在員事務所について規定した2011年第5号を改定し、2014年第10号を発令している。国内建設業の保護や発展のために新法令では規制が強化されており、特に当該事務所が行う事業については1,000億ルピア(約9億2,000万円、1ルピア=約0.0092円)以上の建設工事、あるいは100億ルピア以上の建設設計、監督業務という制限を新たにかけている。今後の当該進出企業にとって大きなハードルになるが、運用方針には曖昧な点も多い。

<ジョイントの相手は大規模事業者が条件>
インドネシアにおける建設分野での外国企業進出は、現地法人もしくは駐在員事務所が一般的だが、そのうち駐在員事務所の許認可に関して定めた公共事業大臣規定が2014年9月に改正された。駐在員事務所には、外国駐在員事務所、外国商社駐在員事務所、および外国建設会社駐在員事務所の3種類があり、建設分野は外国建設会社駐在員事務所での事業活動となる。

当該事務所は、駐在員事務所でありながら、インドネシア国内の建設会社と案件ごとにジョイント・オペレーション(JO)を組むことなどを条件として、国内で計画されている官民プロジェクトの事前審査や入札に参加し、契約締結・建設工事の実施などの事業主体となることができる。ジョイント・オペレーションを組む国内会社の条件として、当該会社が大規模・建設工事事業者に認められていることが条件になっている(「インドネシア外国企業の会社設立手続き」参照)。

<2014年9月に即日施行>
設立要件などが規定されていた公共事業大臣規定2011年第5号が失効し、同2014年第10号が2014年9月22日付で即日施行された。新法令における変更のポイントは下記のとおり。

(1)ライセンス許可延長の条件変更(第4条)
旧法令では当該事務所の許可は3年間有効で、延長は有効期限の90日前までに延長申請が必要となっていたが、新法令では60日前までの延長申請が義務付けられた。また延長の要件として、「3年以内に建設サービス作業の実績が少なくとも1件あること」が付け加えられ、これにより3年以内に実績がない事務所の延長は認められないことになる。

(2)ジョイント・オペレーション組成における条件緩和(第11条)
旧法令では、国内の建設サービス会社とのジョイント・オペレーション組成に当たって、a.国内パートナー側の格付けが大規模事業者に分類されている、b.建設営業許可(IUJK)を有している、c.単独あるいは複数のインドネシア資本100%の事業体との合弁、が要件となっていた。しかし、新法令では、c.について条件を満たさない場合には、ローカル資本最低65%を保有する事業体との合弁企業も対象として認めた。ただし、当該企業の代表取締役、財務担当役員、人事担当役員の役職がインドネシア国籍でなければならない。

(3)建設案件の金額要件(第12条)
当該事務所が実施する建設工事について、これまで規定されていなかった最低金額を設定し、当該ジョイント・オペレーションが行うことのできる事業は、1,000億ルピア以上の建設工事、あるいは100億ルピア以上の建設設計、監督業務とした。

(4)ジョイント・オペレーションにおけるローカルへの最低案分率設定(第13条)
建設工事の場合、総事業費の50%以上が国内で施行され、30%以上が国内パートナー企業によって行われなければならない。また、管理・建設コンサルタント業務の場合は、全ての計画作業を国内でする必要があり、総費用の50%以上は国内パートナー企業が請け負わなければならない。

(5)技術移転義務の明記(第14条)
旧法令では定められていなかった技術移転について、プロジェクトごとに計画を作成し、技術移転を実施する必要がある。インドネシア人に対して、能力訓練を行うことが義務付けられる。

<国内建設業の保護が目的>
当該規定の変更は2014年以前から議論されてきたが、2015年に発足するASEAN経済共同体(AEC)に備え、国内建設業の保護・発展を大きな目的としているようだ。管轄官庁の公共事業省によると、2014年1月時点の国内建設企業は13万1,319社で、そのうち駐在員事務所を持つ外国企業は0.23%に当たる302社。その内訳は日本(81社)、韓国(81社)、中国(53社)と、3ヵ国で約7割を占めている。また、進出数の推移をみると、2004年が103社、2010年が207社と増加しており、こうした外国企業に対して厳しい管理を行うための規制強化とみられる。

進出日系企業にとっては、特に建設案件の最低金額要件(第12条)が大きな影響を及ぼしそうだ。企業関係者によると、1,000億ルピア以上の建設工事、あるいは100億ルピア以上の建設設計、監督業務の案件数は決して多くない状況で、3年間の有効期限内に受注がなく延長ができない可能性を懸念しているという。また、新規参入を狙う企業にとっては、大企業に分類されるパートナー企業の候補は多くないことから引き続き参入障壁は高いといえる。

進出企業には、既に落札していた案件が最低金額を満たしていないケースでは続けられないのか、また現地法人の新規設立を検討したとしても認可まで時間がかかる場合はどのような扱いになるか、といった実務的な疑問が多いが、規定を運用する上で不明確な点が多いのが実態だ。

他方、現地法人の設立を検討する場合でも、外資出資制限を定めたネガティブリストでは、工事額が10億ルピアを超える建設サービスは67%が上限で、かつ当該分野では500億ルピア以上の総資産が条件付けられていることから、建設分野での進出のハードルは非常に高い状況にある。

(藤江秀樹)

(インドネシア)

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