5%のキャピタルゲイン課税を30年ぶりに導入−2015年1月1日以降に取引された資産が対象−

(ケニア)

ナイロビ事務所

2015年01月09日

ケニヤッタ大統領の承認によって2014年9月に成立した財政法に基づき、2015年1月1日から、資産の売却取引によって得られる譲渡益に対して5%のキャピタルゲイン税(CGT)が課される。CGTの導入は30年ぶり。これに対し、ケニア経済への影響を懸念する市場関係者や石油などの鉱業関係者からの反発は強い。

<石油など鉱業分野には30%の税率>
ケニア政府は、株式市場と不動産市場の投資を促進するため1985年にCGTを停止した。しかし、膨張する開発予算の財源を確保するために2015年1月1日からCGTを再導入することを決めた。ケニア歳入庁はCGTの再導入により、約80億ケニア・シリング(約104億円、Ksh、1Ksh=約1.3円)の税収増を見込む。

資産の定義は所得税法別表8に規定されており、土地、建物、有価証券が該当し、譲渡益に対して5%が課税される。資産の売却に伴って発生する取引費用や雑費、資産の価値を高めるための支出、権限を守るための費用などは譲渡益から控除できる。なお、石油やガスなどの鉱業分野に関する不動産売却に関しては、所得税法別表9で規定される税率である30%(非居住者は37.5%)が適用される。不動産には採掘権などの権益も含まれる。

ただし、CGTの適用が除外される取引もある。ナイロビ郡、モンバサ郡、キスム郡以外に立地する100エーカー(1エーカー=約4,047平方メートル)未満の農地についてはCGTの対象とならない。そのほか、個人の土地の売却益が3万Ksh未満の取引や、インフラ開発のための土地取得に対する政府補償には適用されない。

納税義務は資産の譲渡人に帰属する。譲渡人は譲渡益を算出した上で所定のフォーム(CGT1)を作成し税金を支払わなくてはならない。譲渡損は、将来の取引で発生するCGTの課税対象額から控除される。必要とされるのは、(1)CGT1、(2)資産の販売/譲渡契約書のコピー、(3)資産の販売/譲渡の関連費用の証明、(4)資産の権利書や所有権証のコピー、(5)公認の価格査定人による報告書、(6)その他歳入庁が要求する書類だ。

<CGT導入を市場関係者は批判>
今回のCGTの再導入について、市場関係者からは批判が強まっている。ナイロビ証券取引所に上場している企業は少なく、取引も活発でないことから、CGTの証券取引への適用は時期尚早としている。2014年11月にモンバサで開催されたアフリカ証券取引協会の会合においても、ルト副大統領にCGT再導入の延期が要請されていた。

ウガンダやタンザニアでは、土地や建物の取引に対してそれぞれ30%、10%(非居住者は20%)のCGTが適用されている。これらの東アフリカ共同体(EAC)諸国に比べれば、ケニアのCGTは5%と低い。しかし、市場がCGTの導入やその手続きに適応するまでに6ヵ月かかり、その間は市場が低迷するという声もある。

また、世界的に原油価格が下落している状況で、CGTの再導入はケニアの石油・ガス開発を遅らせる、と業界関係者は反発している。ケニアの石油開発はトゥルカナ郡ロキチャルで鉱脈が発見され緒に就いたばかり。しかし、採掘に向けた投資は巨額だ。ただでさえ原油価格が低迷している上にCGTを課せられると投資意欲は著しく減退することになり、石油メジャーなどによる投資が思うように進まなくなることが懸念される。ロティチ財務長官は「業界団体の意見も聞き、合意した内容が次年度の財政法案に反映され得る」と述べている。

(島川博行)

(ケニア)

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