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インターネット税が撤回されるも、政府の増税策への不満は解消されず−2015年の税制改正−

(ハンガリー)

ブダペスト事務所

2015年01月07日

2015年の税制法案が2014年11月18日、国会で可決された。現政権が掲げる家族重視、中小企業重視、消費への課税強化という基本姿勢を反映した内容と発表されている。新たな家族支援策が導入される一方、広告税の上限引き上げや、食料品卸売・小売事業者に対する税金の引き上げ、健康促進税をアルコ−ル飲料にも拡大するという増税が含まれている。国内外から批判され、大規模な反対デモが実施されたインターネット税は最終的に撤回されたが、政府に対する不満は収まらず、インターネット税反対デモから反政府デモへとその性質を変えることとなった。

<特定業界へ偏重する税制>
バルガ・ミハーイ国家経済相は、雇用関連から消費関連への課税対象のシフト、環境・健康重視、経済成長、雇用促進を目指すための税制を推進する方針に変わりはないとしているが、目標として掲げていた所得税の1桁台への引き下げ、法人税率の一律化という案は先送りされた。減税策としては新たな家族支援策として、結婚する世帯でどちらかが初婚の場合には結婚から2年間、毎月5,000フォリント(約2,200円、1フォリント=約0.44円)の税控除を受けられるという減税策が導入された。また、食用の豚肉にのみ適用されていた5%の軽減税率の対象は拡大され、牛、羊、ヤギの食用肉にも適用されることになった。

これに対して増税では、福利厚生手当に優遇税率が受けられるカフェテリアの年間支給額の上限が50万フォリントから45万フォリントに引き下げられた。また、特定業界を対象に特別税として導入された広告税も最高税率が40%から50%へと引き上げられる(売上高による累進課税)。銀行税の対象も拡大され、ハンガリーで活動する投資ファンドもその対象に加えられた。塩分を多く含む食品などに課せられている健康食品税も対象が拡大し、アルコール飲料もその対象となる。

また、営業権を持つ企業しか小売りができないよう規制されているたばこ製品に対し、卸売りも国営企業のみが行うことにするなど規制が強められた。また、たばこ製品への物品税も2015年4月と7月に増税されることが決まり、時限税として1年間は健康寄進料としてたばこ製品の売上高に応じた累進課税が導入される。たばこ製造業および流通事業者に課税されるが、2014年中に雇用創出につながる投資を行っていた場合は、その額に応じ控除枠が設けられている。政府は製造業に対してはこれまで増税を行っていなかったが、この時限税は政権交代以降初めての増税となった。

英国の流通大手テスコなど食料品卸売小売店に課せられている農業食品業界監督料金(税金)も現在の0.1%から売上高に応じて最大6%の累進制となった。ハンガリー資本の食品小売店はフランチャイズ経営の店舗が多いのに対し、外資系の食品小売店はチェーン経営されている割合が大きいため、グループの売上高に対して累進課税されるこの制度はチェーン店が多い外資系企業にとって非常に不利になっている。また、広告税は近年、政府批判の報道が多い民放テレビ局RTLのみが最高税率の対象となっているため、広告税の上限の引き上げは政府に批判的な報道をするRTLへの報復という見方もされている。

国有化が進む銀行に対して時限税として導入されているにもかかわらず撤廃される気配がない銀行税については、オルバーン首相が2014年12月15日のブルームバーグのインタビューで、銀行税はその負担が非常に大きいため2017年までに減税することを考えていると発言している。

<インターネット税反対デモから反政府デモへ>
通信量に応じて課税されるインターネット税は、国内外からさまざまな批判を受け、最終的に撤回に追い込まれた。インターネット税はもともと電話発信、ショート・メッセージ・サービス(SMS)送信などに課せられている通信税をIP電話にまで対象を拡大するために考えられた税金といわれている。

しかし、発表時にはインターネットの通信量(利用トラフィックの情報量)に応じて課税される税となったことと、その上限が明記されなかったこと、銀行税のように納税義務者を事業者とする予定だったのにそれも明記されていなかったことから、市民への大増税となると報道された。これにより、自由な通信を阻害し、言論の自由を制限する法律だと反発する市民がインターネット税に反対するデモをフェイスブックで呼び掛け、大規模なデモに発展した。

慌てた政府は課税上限を設けることや納税義務者は事業運営者であり価格転嫁を厳しく制限するという修正を行うと発表したが、反対デモの動きは収まらずインターネット税を撤回せざるを得ない状況に追い込まれた。

ちょうど同じころ、米国政府がハンガリーの税務当局に対して、米国企業のハンガリー法人による脱税疑惑を調査するよう求めた。これに関して、ハンガリー政府が十分な対応をせず、税務長官が脱税に関与していたという疑惑が生じたことで、米国政府から米国への入国禁止措置を受ける事態が発生した。国民の政府への不満はさらに高まり、税務長官の辞任要求デモへとその姿を変え、他の欧州諸国とは大きく異なった政策を推し進める政府に対しての退陣要求に発展した。

(三代憲、バラジ・ラウラ)

(ハンガリー)

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