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中国製品に対するAD税の適用が増加−鉄鋼製品中心に国内産業を支援−

(メキシコ)

中南米課

2014年12月25日

中国製品に対するアンチダンピング(AD)税の適用が増加している。鉄鋼製品などを中心に2014年中に新たに適用されたAD税は9種類に及ぶ。また、AD調査も鉄鋼などの分野で頻繁に開始されており、政府は違法輸入の監視に目を光らせている。エンリケ・ペニャ・ニエト現政権は、フェリペ・カルデロン前政権と比べると国内産業に配慮する姿勢をみせているが、輸入監視体制の強化が輸入手続きを煩雑化させることが懸念される。

<中国製品を輸入する場合にはAD税に留意>
メキシコ政府が2014年1月1日〜12月16日に新たに適用したAD税は、暫定、確定の双方を合わせて延べ11件、暫定と確定の対象品目の重複を除外すると9件となる。原産国は全て中国であり、鉄鋼および同製品が5件と多く、その他は陶器、電動ミキサー、鉛筆、ステンレス製シンクが対象となっている(表1参照)。

表12014年に新たに適用されたAD税

経済省の貿易救済措置ユニット(UPCI)によると、2014年12月1日時点でメキシコ政府が適用しているAD税は45件、相殺関税(CVD)が3件。ADとCVDの合計48件のうち、中国が20件で全体の41.7%を占め、米国(6件、12.5%)、ブラジル(4件、8.3%)、ロシア(4件、8.3%)と続く。日本製品で対象となっているのは継目なし鋼管のみで、AD税率は99.9%。

業種別にみると、鉄鋼・金属が26件(54.2%)、化学品が9件(18.8%)、金属製品・機器が3件(6.3%)、その他製造業の製品が3件(6.3%)と続く。

メキシコは中国のWTO加盟時に最後まで承認しなかった国であり、2001年に中国がWTOに加盟する際に実施した2国間交渉の結果に基づき、中国のWTO加盟後6年間(2007年12月11日まで、実際は2008年10月13日まで延長)はWTOのルールにのっとらない対中国特別AD税を953品目に対して適用していた。しかし、2008年10月14日には749品目の特別AD税を撤廃し、2011年12月11日には同AD税を完全に撤廃した(2008年10月16日記事参照)

その後は中国に対してもWTOのルールに基づきAD調査を実施し、WTOルールの下でAD税を適用しているが、近年は中国製品に対するAD税の適用が再び増加傾向にある。以前ほどではないにせよ中国製品にはAD税が適用されている可能性が高いため、メキシコに中国製品を輸入する際には事前にAD税の適用がないかどうかを確認する必要がある。AD税の適用有無については、経済省のウェブサイト(スペイン語)で確認できる。

<鉄鋼関連を中心にAD調査が増加傾向>
2013年以降、鉄鋼関連を中心に政府によるAD調査の開始が増加傾向にある。2013年に開始されたAD・CVD調査は7件、2014年(12月16日まで)は11件となっており、2012年までと比べて多くなっている(表2参照)。

表2貿易救済措置に関する調査件数の推移

2013年以降に開始されたAD・CVD調査を業種別にみると、鉄鋼・同製品が9件、化学品が3件、食品・農産物が2件、機械・機器が2件、その他製造業の製品が1件、繊維製品が1件となっている。鉄鋼・同製品の調査開始が多いが、同対象国は中国だけではなく、ドイツ、フランスなども含まれている。

ここ数年の世界的な鉄鋼の供給過剰により、メキシコへの廉価な鉄鋼輸入も増加傾向にある。2014年1〜9月のHS72類に分類される鉄鋼の輸入量は、6年前の2008年比で13.4%増加している。米国や日本、欧州からの輸入は高級鋼材が中心で、自動車産業の活性化による鋼材の需要拡大が要因と想定されるが、中国、ロシア、台湾、ルーマニア、アルゼンチン、トルコなどからの輸入も急増している(表3参照)。それらの国からはメキシコ国内の鉄鋼メーカーが主に生産している建設用鋼材も含まれている。

表3メキシコの鉄鋼(HS72類)輸入の推移

全国鉄鋼産業会議所(CANACERO)はメキシコが自由貿易協定(FTA)を締結していない国からの廉価な鋼材の輸入を問題視しており、政府に対して積極的なAD調査の実施を働き掛けている。昨今は建設用鋼材のみならず、日本からの輸入も多く、自動車産業にも用いられる熱延鋼板もAD調査の対象(2014年9月26日にドイツ、中国、フランス製の鋼板を対象に調査が開始)となっており、日本製の鋼材が今後調査対象となる可能性も否定できない。

<前政権に比べると国内産業に配慮>
カルデロン前政権(2006年12月〜2012年11月)は、自由な競争環境が競争力のある効率的な産業を育てるという新自由主義的な経済政策を重視し、FTAを締結していない国の産品に適用される一般関税率を段階的に引き下げたり(2009年1月15日記事参照)、輸入規制の大幅な緩和などを進めたりしてきた(2008年4月4日記事参照)。その結果、タリフライン(関税品目数)ベースの単純平均関税率は、2006年末の10.2%から2012年末には5.9%まで低下した。

2012年12月1日に発足したペニャ・ニエト現政権の通商政策は、前政権に比べ国内産業に配慮したものとなっている。鉄鋼業界、繊維業界、履物業界などのセンシティブ産業におけるダンピングやアンダーバリュー(過少申告)などの違法輸入に対する監視を強化しているほか、前政権が進めてきた一般関税率の引き下げの最終段階を延期するなどの措置を導入している(表4参照)。

表4ペニャ・ニエト政権下で実施された主な国内産業保護政策

2013年12月にはセンシティブ品目を輸入する前に事前に当局に通知する制度(輸入自動通知制度)を鉄鋼の輸入で復活させたほか、2014年10月には前政権下で「国民の健康と国家の安全保障に関係するもの」を除いて原則廃止されていた特定産業の「部門別輸入業者登録」制度を履物産業で復活させている。

2014年12月3日には、繊維・衣類業界に対し、輸入品との競合に打ち勝つための金融支援策や違法輸入の監視体制強化を約束し、今後、「2014年の貿易に関する一般規則」などの改定を通じて輸入自動通知制度や部門別輸入業者登録の対象に繊維・衣類産業を加える計画を発表した(2014年12月3日付大蔵公債省プレスリリース、2014年12月16日時点で具体的な規則改定はなされていない)。

これらの政策は違法輸入に対する監視体制の強化が目的であり、一般関税率の引き上げなどの保護主義的な措置にまでは至っていないものの、センシティブ品目については輸入手続きが煩雑になるなどマイナスの影響も出てしまう。鋼材と同様、繊維素材もエアバック用生地やシート素材などとして自動車産業で使用されているため、繊維製品の輸入規制の強化は日本企業にも影響を与えそうだ。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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