プラユット首相、新投資促進戦略へ理解求める−BOIがセミナー開催−

(タイ)

バンコク事務所

2014年12月17日

タイ投資委員会(BOI)は新投資促進戦略の公表後、初めてのセミナーを開催した。セミナーにはプラユット首相やプリディヤトーン副首相も出席、新投資促進戦略を含む経済施策に理解を求めた。ヒランヤ・スチナイBOI長官代理は、質疑応答で2015年1月からの新投資促進戦略の施行の延期の可能性を問われ、12月下旬のBOI委員会で検討される可能性があると含みを持たせた。

<高度な技術集積による競争力強化が狙い>
BOIは12月15日、新投資促進戦略の公表後(2014年12月10日記事参照)、初となる公開セミナーを開催した。冒頭、ヒランヤ・スチナイBOI長官代理が新投資促進戦略について、国の持続的な発展の方向性を示し、「中所得国のわな」を克服するために、長い間、関係当局と協議してきたものと紹介した。その後、プラユット首相が開会あいさつを行った。プラユット首相はまず、足元の経済状況について、期待していたより良くないが、2015年には3.5〜4.5%の経済成長が見込めるとし、これまでの経済施策に対して理解を求めた。プラユット首相は、新投資促進戦略のような経済発展のための政策は、現政権下で行わなければならず、恩典を縮小する部分もあるが、結果として高度な技術が集積することにより、競争力を高めることになると理解を求めた。

<国外投資を促進、タイを地域のハブに>
続いて、プリディヤトーン経済担当副首相はタイの経済発展の歴史に触れ、近年労働力不足や環境問題により経済が低成長にとどまっている現状を説明した。同副首相は、投資の内容を変えることにより、タイが高度な技術を持つ分野を強化するなどして、産業の構造を変え、国外への投資をより拡大しなければならないとした。さらに国外で成功している事業として、建材やメラミン食器、砂糖、宝石などを挙げ、高級品はタイ、普及品は周辺国で生産して成功している企業などを例示した。また、企業の国外進出が進む中で、タイ企業が周辺国で生産した製品が、第三国に輸出されており、また周辺国を統括する拠点が税率の低いシンガポールに設置される動きがある。このため、タイに当該取引に関する利益が落ちなくなると指摘、タイを地域のハブとするため、国際統括本部(IHQ)、国際貿易拠点(ITC)の誘致の重要性を訴えた。その上で、今般のBOIの新投資促進戦略でもIHQとITCに対し、投資恩典が与えられているとした。最後に、これはまだスタート地点で、投資誘致のための規制緩和は中央銀行でも取り組んでおり、また財務省でも税制改革の法案を準備しており、2015年1月末までには何とか具体化したいと強調した。

<施行延期に含みを持たせる>
ヒランヤ・スチナイBOI長官代理の新投資促進戦略についての説明は、既に公表されている資料に沿ったものとなった。

質疑応答では、今般の新投資促進戦略について、全般的に恩典が少なくなり、外国投資が他国へシフトするのではないかとの問いに対し、BOIは低付加価値なものなど幾つかの業種については、そうなるかもしれないが、高付加価値な産業をタイに集めたいと考えており、その部分は他国にはシフトしないとした。また東北地方などゾーン3に立地している事業に対する新投資促進戦略での恩典はどうなるのかとの問いに対し、今後はゾーン別では恩典は検討しない、つまり拡張投資する際にはその事業の業種で恩典内容が判断されることになる、と回答した。

最後に新投資恩典戦略の施行の時期について、延期の可能性を問われ、ヒランヤ・スチナイBOI長官代理は「今回は急な新制度の公表となった。延期の要望はたくさん受けており、本日会場にいるプラユット首相、プリディヤトーン副首相もそのことは承知している。発言できる立場ではないが、今月下旬にBOIの委員会が開催される予定であり、そこで議論される可能性がある。しかし、現時点では2015年1月1日からの施行を予定している」と発言した。

(若松寛)

(タイ)

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