SAGIAが新たな企業分類基準を導入−投資ライセンス更新ルールを改正−

(サウジアラビア)

リヤド事務所

2014年12月15日

外国企業の投資認可機関であるサウジアラビア総合投資院(SAGIA)は10月24日、既進出企業のライセンス更新時の新たな制度「企業分類基準」を発表し、運用を開始した。しかし、唐突な運用開始に多くの進出日系企業は困惑しており、SAGIAとの直接対話による事態改善が望まれている。

<新基準でサウジ経済への貢献度を評価>
外国企業がサウジアラビアに法人を設立する際には、商業登記に先立ってSAGIAから投資ライセンス認可を受ける。新規設立時の投資ライセンス発行については「ファスト・トラック・サービス」が2014年6月に導入されている(2014年6月30日記事参照)。ライセンスを得て設立された企業は、原則として毎年ライセンスを更新する必要があり、その更新ルールが改正された。10月24日付で新分類基準(New Classification Criteria)がSAGIAのウェブサイト上に公開されるとともに、一部のライセンス保有企業には直接eメールで配信された。

この新分類基準は、ライセンスを保有する外国企業に対して、技術・ノウハウの移転、産業の多様化、輸出促進・輸入代替(現地製造)、サウジ人材の育成、国内外市場における競争力、サウジの各地域のバランスある発展など、サウジ経済への貢献度を評価するものだ。

各企業をその機能や評価に従い6カテゴリーに分類する(表1参照)。企業の評価と分類については、企業の財務諸表や利益・輸出・ローカルコンテンツなどの定量的データに、研究所・訓練所の有無や特許・製品の国際性などの定性的要素も加味しつつ、SAGIAのシステムで自動的に行うという。カテゴリー別に各種優遇措置(ライセンス期間、サービスの優先順位、ライセンス更新手数料など)が異なる(表2参照)。

表1外国企業の分類の定義(6カテゴリー)
表2カテゴリー別優遇措置

<詳細は分かりづらいと日系企業は困惑>
ジェトロは12月2日にSAGIAが開催した新基準の説明会に参加したが、運用面での詳細情報は得られなかった。説明・質疑応答に当たったファイサル・バファーラット副総裁および新基準の策定担当者モダール・ヒッジ・ライセンシング・セントラルリージョンマネジャーに確認したところ、公開情報以上の運用の細則は検討中とのことだった。制度運用の詳細が企業に知らされないまま運用開始されたこと、カテゴリーの定義や優遇措置に一貫性や整合性に欠ける点が散見されることを伝えたところ、対象となる外国企業が非常に多いため、まずは大枠での実施を急いだとのことだった。

また、新制度導入の目的は、サウジ経済にとって付加価値の低い企業(特に建設請負業に多い)の「国外退場」を促し、逆に日系企業のように貢献度の高い企業には、ライセンス有効期間延長などの優遇措置を充実させるとともに負担軽減を図ることだと説明し、企業との対話を重ね、制度をより良いものにしていきたいとの意向を示した。

<望まれるSAGIAと企業との直接対話>
しかし、多くの進出日系企業が、ライセンスの更新期限を迎えてSAGIAのウェブサイト上で更新申請を行う際に、いきなり自社の評価を知ることになるなど、唐突で分かりづらい運用開始に戸惑っている。今回の発表も、サウジの制度導入に多くみられる「見切り発車」の典型例の1つといえるが、SAGIAは日系企業の貢献を評価しており、直接の説明や対話を通じたルール改善の姿勢を示している。運用改善のためにも、SAGIAと日系企業の直接対話が望まれる。

(三束尚志)

(サウジアラビア)

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