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議決権比率を規制適用の基準に−外国人事業法改正の動き(2)−

(タイ)

バンコク事務所

2014年12月03日

商務省事業発展局(DBD)が11月11日に実施した外国人事業法改正に関する公聴会(パブリックヒアリング)では、同時点で政府が検討を進めている改正のポイントが明らかにされた。改正案では、外国人の定義について、「持ち株比率のみならず議決権比率でも外国人が過半数を有する会社」との語句が追記されることが明らかとなった。他方で、外国人取締役数に対する制限や間接出資に対する規制などは、改正案には含まれていない。バンコク日本人商工会議所を含む外国人商工会議所は、外国人の定義に議決権比率を勘案する改正案に反対の意向を示している。外国人事業法改正案のポイントの後編。

<外国人の定義に議決権比率を追加>
DBDが開催した外国人事業法改正に関する公聴会では、タイ工業連盟(FTI)やタイ商業会議所(TCC)などの地場の主要産業団体のほか、バンコク日本人商工会議所も参画するタイ外国人商工会議所連合会(JFCCT)などの代表が参加した。

DBDは開催の目的について、同法改正の是非および改正による産業界への影響についての共通理解を得るためと説明。また、今後、さまざまな分野からの有識者やステークホルダーを招いた公聴会を開催するとともに、商務省内で改正案を固める作業を進め、2014年中にも第1案をまとめる方針を明らかにした。

同時点で明らかにされた改正案によると、最大の注目点だった外国人の定義について、「持ち株比率のみならず議決権比率でも外国人が過半数を有する会社」との語句が追記される方針が示された。同改正が原案のとおり実施されれば、今後タイに進出するサービス関連企業に対しては、優先株の発行などを通じた議決権の過半取得が認められなくなる。他方、外国人取締役数などの制限については、同時点では改正案には明記されていない。また在タイの子会社(タイ企業)を通じた間接出資のスキームについても特に明記されず、改正により同スキームが認められなくなるという懸念は当面、払拭(ふっしょく)されたといえる。

なお、既にタイに進出している企業に対する新たな定義の遡及(そきゅう)適用については、改正案からは明らかではないが、公聴会の中でDBD側から、(1)既に進出している企業に新定義は適用しない(既存企業への影響はなし)、(2)商務相からも、既存企業への遡及適用はしないように指示が出ている、との説明が行われた。

<自由化に逆行と外資系反発>
外国人商工会議所は、改正案による「外国人」定義の見直しは、サービス業の自由化に逆行する措置として反発を強めている。JFCCTやタイ米国商工会議所(AMCHAM)は公聴会の前から、外国人事業法の改正によるサービス業への実質的な規制強化を支持しない旨の声明を発表しているが、公聴会後も「改正を支持しないスタンスは一貫して変わらない」との意向を示している。また在タイ日系企業からも、「タイに進出する場合の選択肢を狭める動き」として法改正に反発する声が高まっている。タイ側には、こうした外国人事業者からの意見も包括的に集約し、長期的視野で法改正の是非を判断する姿勢が求められる。

発表された改正法案のポイントは以下のとおり。

(1)許可申請に係る外国人の定義関連
第4条(語句定義)
○改正案:外国人の定義に「外国人の株式の議決権比率が過半数以上となる会社」を追加
○ポイント:優先株を活用することで、出資比率が「外国:タイ=49%:51%」となっていても議決権比率は外国側が上回る形態を取っている場合があるが、改正案の定義により、これが不可能になる可能性がある。

第7条(外国人特例)
○改正案:最低資本金、許可書の申請方法、許可書発行、審査機関については省令で規定
○ポイント:タイ国内で出生したがタイ国籍を取得しなかった外国人と、タイ国籍を失った外国人(元タイ人)に対する特例。なお、口頭で最低資本金を適用しない方向との説明があった。

第8条(規制業種)リスト3の見直し
○改正案:リスト3(競争力が不十分な業種として外国企業の参入が禁止されている業種リスト)につき、口頭ベースで金融・保険関連の事業をリストから外すことを検討している、との説明があった。リスト3に関する専門委員会があり、そこで議論をしているとのこと。

第10条(友好条約締結国の外国人)
○改正案:最低資本金の規定(第14条)を友好条約締結国の外国人に対して適用しない
○ポイント:第14条には、外国企業の営業開始の際の最低資本金は省令で規定されている場合を除き200万バーツ(約720万円、1バーツ=約3.6円)、1〜3のリストにある事業は各事業について300万バーツと規定されている。ワーク・パミットの取得条件に外国人1人当たり200万バーツの資本金が要求されている。このため、200万バーツは実務として残る。

第16条(許可申請できる外国人資格)
○改正案:Foreign Business Licenseを申請できる者の条件から「略式処分で科料を科されたことがない」を削除
○ポイント:犯罪に該当しないような次元であれば、申請条件に抵触しないよう規制を緩和する。

(2)手続きの迅速化
第11条(条約締結国外国人への営業証明)
○改正案:(局長は)「申請書を受け取った日から○日以内に営業証明書を発行する」および「不適合と判断した場合、外国人から申告を受けた日から○日以内にその外国人にその旨を通知する」
○ポイント:現在30日となっている審査期間、報告期間を短縮。何日にするかは未定。

第12条〔タイ投資委員会(BOI)による認可企業、輸出企業への営業証明〕
○改正案:(局長は)「投資奨励証または許可書を受け取った日から○日以内に営業証明書を発行する」
○ポイント:現在30日となっている証明書発給期間を短縮。何日にするかは未定。

(3)罰則規定強化関係
第35条(虚偽の合同事業への罰則)
○改正案:(外国人には)「5年以下の懲役または50万バーツ以上、500万バーツ以下の罰金、または併科に処す」、裁判所の命令に従わないときは、違反期間にわたって「1日当たり5万〜20万バーツの罰金に処す」と変更。
○ポイント:現行ではそれぞれ、「3年以下の懲役または10万バーツ以上、100万バーツ以下の罰金にまたは併科に処す」「1日当たり1万〜5万バーツの罰金に処す」となっている罰則規定を強化

第36条(外国人と結託したタイ人への罰則)
○改正案:(タイ国籍者には)「5年以下の懲役または50万バーツ以上、500万バーツ以下の罰金にまたは併科に処す」、裁判所の命令に従わないときは、違反期間にわたって「1日当たり5万バーツ以上、25万バーツ以下の罰金に処す」
○ポイント:現行ではそれぞれ、「3年以下の懲役または10万バーツ以上、100万バーツ以下の罰金にまたは併科に処す」「1日当たり1万バーツ以上、5万バーツ以下の罰金に処す」となっている罰則規定を強化。

第37条(第6、7、8条への違反への罰則)
○改正案:〔第6条(事業禁止外国人)、第7条(外国人特例)、第8条(末尾リストと規制内容)へ違反して事業を営む外国人には〕「5年以下の懲役または50万バーツ以上、500万バーツ以下の罰金、あるいは併科に処す」、裁判所の命令に従わない場合、違反期間にわたって「1日当たり5万バーツ以上、25万バーツ以下の罰金に処す」
○ポイント:現行ではそれぞれ、「3年以下の懲役または10万バーツ以上、100万バーツ以下の罰金にまたは併科に処す」「1日当たり1万バーツ以上、5万バーツ以下の罰金に処す」となっている罰則規定を強化。

第41条(違反者が法人である場合)
○改正案:(取締役、合名・合同社員、代表権限を有する者は)「5年以下の懲役または50万バーツ以上、100万バーツ以下の罰金にまたは併科に処す」
○ポイント:現行では「3年以下の懲役または10万バーツ以上、100万バーツ以下の罰金にまたは併科に処す」となっている罰則規定を強化。

(伊藤博敏、長谷塲純一郎)

(タイ)

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