外国契約者税は実質的に国内でサービス提供する事業者も対象に−セミナー「ベトナム税務 入門・基礎編」開催(2)−

(ベトナム)

ハノイ事務所

2014年12月02日

連載の後編では、サービスの対価に対して課税される外国契約者税の概要と新法令について、Yotsuba Vietnam Business Solutionの山下剛税理士の講演内容を報告する。2014年10月1日から施行された新法令では、実質的に国内でサービス提供を行う国外事業者に対しても税金が課される。

<恒久的施設の有無にかかわらず課税>
外国契約者税とは、「国外事業者が、国内事業者にサービス提供をして得た対価に対して、国内で課される税金」のこと。付加価値税(VAT)と、法人所得税(CIT)もしくは個人所得税(PIT)から構成されており、ベトナムに恒久的施設があるか否かにかかわらず課税される。税の負担者は対価を得る外国事業者が原則だが、多くの場合は対価を支払う国内事業者が源泉徴収して納めることになる。外国事業者にとってなじみの薄い税金なので、契約当事者間で話し合いをして負担者を事前に確認するのが望ましい。また、日越租税条約と相反する場合には、原則として租税条約の規定が優先される。ただし、納税者による適用申請が必要となり、その手続きは明確とはいえないため、適用を受けるのが困難なことが多い。

主要サービスに課税される外国契約者税の税率は表1のとおり。輸出加工企業(EPE)は付加価値税が免除されているため、法人税のみ課税される。

表1主要サービスの外国契約者税の税率

<物品かサービスかを契約書に明示必要>
契約書で契約金額が税込みか否か明示されていない場合、当局に税抜き価格と認定されてしまう恐れがある。その場合、税込み価格よりも税額が大きくなるので注意が必要だ。契約書を作成するに当たって、ほかに注意すべき例を挙げる。

○物品とサービスの分割明記
外国契約者税は、サービスの対価に対してのみ課される税金だ。ただし、契約書で物品販売とサービスの価格が区別されていない場合は契約総額に対して課税される。

○サービスの種類の分割明記
外国契約者税は、サービスの種類により税率が異なる。複数のサービスを提供するに当たり、契約書でサービスの種類が区別されていない場合は最も高いサービスの税率が対価の合計額に対して課される。

○サービス提供場所の分割明記
外国契約者税は、国内で提供されるサービスの対価に対して課される税金だ。しかし、契約書で国内外の区別がされていない場合は提供される対価の合計額に対して課税される。

<新法令で課税対象外の事業者を追加>
外国契約者税は旧法令(通達60/2012/TT−BTC)で規定されていたが、2014年10月1日からは新法令(通達103/2014/TT−BTC)が施行され、課税対象者について一部変更があった(表2参照)。実質的に国内でサービス提供を行っている国外事業者も納税義務を負うことになる。

表2新旧法令の課税対象者の比較

課税対象外となる事業者は表3のとおり。今回新しく、「国際輸送、運搬中継基地、加工目的の製品保管用途で倉庫(保税倉庫など)を使用する国外事業者」が追加された。保税倉庫を使用したサービスは非課税とも読み取れる。ただし、制度の趣旨、外国契約者税の定義を前提に判断する場合、当該サービスが課税対象外になるということに不自然の感は否めず、当該取引に対する課税リスクは低くないものと考えられる。

表3新旧法令の課税対象外となる事業者の比較

外国契約者税は法令の解釈が難しく、想定外の多額の課税を受けるリスクがある。資金繰りに影響する可能性もあるため、不明な点がある場合には専門家に相談の上、慎重に手続きを進めていく必要がある。

(金子信太郎)

(ベトナム)

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