個人所得税は累進税率の勾配が急、高い税率適用に−セミナー「ベトナム税務 入門・基礎編」開催(1)−

(ベトナム)

ハノイ事務所

2014年12月01日

ジェトロは11月17日、ベトナム日本商工会(JBAV)と共催で、「ベトナム税務 入門・基礎編」と題するセミナーをハノイ市内で開催した。進出日系企業から相談が寄せられることが多い個人所得税、外国契約者税をテーマとしており、参加者は約120人に上った。概要を2回に分けて報告する。前編は個人所得税について。累進税率の勾配が日本に比べて急で、日本と同じ水準の課税所得の場合、高い税率が適用される。

<居住者と非居住者で異なる税率>
セミナーでは、Yotsuba Vietnam Business Solutionの山下剛税理士が講師を務め、個人所得税について以下のように解説した。

個人所得税(給与所得)の税率は、課税対象者がベトナム居住者か非居住者かにより異なる。居住者と非居住者の認定条件は表1のとおりで、居住者の場合は全所得から各種控除を差し引いた額が課税所得となる。

表1居住者と非居住者の比較

ベトナム居住者の課税金額は、課税所得に応じて表2のとおり分類される。参考までに日本についても表3にまとめた。課税所得に税率を乗じたものから、控除額を差し引いた金額が納税額となる。なお、個人所得税の課税対象者は国内人口の1〜2%にすぎず、そのほとんどが外国人だ。

表2ベトナム居住者の課税所得と累進税率
表3日本における累進税率表(給与所得)

表2と3を比較すると、ベトナムでは日本に比べて税率ごとの課税所得の範囲が狭く、累進税率の勾配が急なことが分かる。つまり日本と同じ水準の課税所得の場合、日本よりも高い税率が適用されるため、給料の手取り額が下がることになる。

それを避ける方法として、「現地手取り額保証」という社内制度がよく用いられる。これは手取り額から課税所得額を逆算する方法だ。この場合の税金は、ベトナム国内法人もしくは日本本社が負担することになる。

省令などにより定められている、個人所得税の課税所得と非課税所得の例は以下のとおり。

表4課税所得、非課税所得の例

<3条件満たせば非居住者の免税も>
表1のとおり、非居住者の場合は課税所得に対して一律20%の個人所得税が課される。しかし日越租税条約の適用により、以下の3条件を満たす場合は、当該所得をベトナムにおいて免税対象とすることができる。

○ベトナムでの滞在期間が183日未満
○滞在者への報酬がベトナム非居住者である日本法人により支払われる
○滞在者への報酬が日本法人の恒久的施設により費用負担されていない

ただし、免税を申請するには、以下の書類を提出する必要がある。

○免税通知書
○居住者証明書
○居住地での雇用証明書類の写し(雇用契約書など)
○国内での業務従事書類の写し(任命書など)
○パスポートの写し

免税申請をする以外にも、日越租税条約で定められた外国税額控除の適用を受けて、二重に支払った税金の還付を日本で受ける方法がある。いずれにしても手続きは複雑なため、専門家と相談しながら慎重に検討する必要がある。

(金子信太郎)

(ベトナム)

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