工業展示会で模倣品対策の啓発活動−日本企業の専用ブース設置−

(ベトナム)

ハノイ事務所

2014年11月20日

第23回国際工業展が10月21〜24日、ハノイ市のザンボー展示場で開催された。1991年から毎年開催され、約8,000人が来訪するベトナム最大級の工業展示会。ベトナム商工省市場管理局は2013年に続き、模倣品対策ブースを設置し、啓発活動に取り組んだ。模倣品対策ブースには、ジェトロが日本企業の専用ブースを設けている。

<模倣品対策には官民の連携が重要>
市場管理局の模倣品対策ブースには、国内外企業11社と9つの市場管理支局(ハノイ、ホーチミン、ダナン、カインホア、ゲアン、バクニン、クアンガイ、ティエンザン、ランソン)が出展し、各企業が持ち寄ったり各市場管理支局が押収したりした模倣品が展示された。ジェトロ・ハノイ事務所は、市場管理局の依頼に基づき日本企業専用ブースを設置、パナソニック、ヨネックス、日本ドアーチェック製造、オムロンなど5社が参加し、日本製品の真贋(しんがん)判定方法を消費者に説明した。

模倣品対策ブースでは、家電、食品、医療設備の模倣品のほか、真贋判別用シールといった対策商品まで幅広く展示された。この商品はシールの表面を削って現れた番号をショートメッセージサービス(SMS)で送って、返信された番号と一致すれば、真正品であることが分かるというものだ。また、地理的表示として登録されたフーコック島産のヌックマム〔ベトナム魚醤(ぎょしょう)〕も展示され、注目を集めた。ベトナム人にとってヌックマムは調味料として欠かせないものであり、模倣品により健康被害を及ぼす可能性もあることから、来場者は真正品との見分け方を担当者から熱心に聞いていた。

市場管理局の模倣品対策展示ブースの様子(筆者撮影)

会場では市場管理局の職員が来場者に、模倣品の流通状況や模倣品が与える経済・社会への影響について説明し、侵害行為の排除を呼び掛けた。また企業に対しては、同局の模倣品取り締まりの活動状況を紹介するとともに、模倣品対策の重要性や取り締まり機関との協力の大切さを伝え、模倣品対策の意識向上を働き掛けた。さらに、各地の市場管理支局の摘発品を並べて展示することにより、支局間の競争を促す取り組みを行っていた。

<消費者の模倣品対策への関心も高まる>
模倣品対策はベトナム政府にとって重要な政策の1つとなっている。商工省の統計によると、2014年上半期で市場管理局は9万826件の知的財産権侵害疑義物品を摘発し、4万8,691件の模倣品を押収、20兆2,760億ドン(約1,200億円、1ドン=約0.006円)に上る罰金を国庫に納入した。押収された商品の市場価値は6兆7,240億ドンになるという。処分された模倣品には密輸品や食品が多く、3万点、655億ドン相当に及んだ。模倣品対策ブースを訪れた商工省のドー・タン・ハイ副大臣は「市場管理局は、消費者が効率的に真贋判定できるような取り組みを行う必要がある」と述べた。

展示された模倣品を熱心に見る来場者(筆者撮影)

近年では、ベトナム人消費者の間でも模倣品問題への関心が高まっている。ベトナムで有名なファッションブランドの経営者は、同社の模倣品を使用する消費者に対して、「ブランド品を1つも持っていなくても誰もあなたを軽蔑しない。しかし、模倣品を身に着けることは、あなたのプライドと品格を傷つけることになる」と訴えた。

これに対して、「ブランド品を買うだけの収入がないために模倣品に手を伸ばさざるを得ない」という意見の一方、「模倣品を利用するのは違法であり、真正品を生産する企業の利益を奪う行為だ」という意見が多くあった。こうした議論は、ベトナム人の間で真正品の利用に対する意識が高まってきていることの表れといえる。

(ヒエン・ズン)

(ベトナム)

ビジネス短信 546af34374f18