江蘇省、11月1日から最低賃金を10.1〜15.5%引き上げ

(中国)

上海事務所

2014年11月06日

江蘇省は、1年4ヵ月ぶりに最低賃金の新基準を施行した。旧基準からの引き上げ率は、正社員の場合で10.1〜15.5%。また、独自の賃金基準を施行している江蘇省蘇州市の最低賃金の実質負担額(住宅積立金を加えた金額)は、全国3番目の高さとなった。なお、経済成長率の鈍化などの影響を受け、全国の1〜9月の平均引き上げ幅は14.1%と、2011年の22.0%以降年々低下している。

<地区間の賃金格差が縮小傾向>
江蘇省人力資源・社会保障庁は11月1日、法定最低賃金の新基準を施行した。各地区は経済発展レベルに応じて3つに分類され、1類が前回比10.1%増の1,630元(約3万970円、1元=約19円、月給ベース)、2類が14.1%増の1,460元、3類が15.5%増の1,270元となっている(表参照)。各ランクに対応するパートタイム労働者の最低賃金もそれぞれ変更された。

地区分類については現在見直しが行われており、まだ新分類は公表されていない。これまでの1類地区には、外資系企業の入居も多い南京市や無錫市、南通市、鎮江市、常州市の中心区が指定されている。

江蘇省の最低賃金基準(2014年11月1日施行)

法定最低賃金の改定は2013年7月以来1年4ヵ月ぶりで、1996年の制度導入以来16回目。基準額は当初の240元(1類)に比べると6.8倍になった。ただ、過去3年間の調整額を比較すると、1類地区の引き上げ額が180元から150元に低下しているのに対し、2〜3類地区では逆に拡大しているため、地区間の賃金格差に縮小傾向がみられる。

<蘇州市の最低賃金実質額は全国で3番目の高さ>
一方、江蘇省蘇州市は2012年から独自の賃金基準を施行しており、今回は同じく2014年11月1日に改定された(2012年6月11日記事参照)。今回の改定ではパートタイム労働者の最低賃金が江蘇省の1類と同額だが、正社員は1類に50元を上乗せした1,680元となっている。同基準の実施地域は蘇州市中心区だけでなく、同市管轄下の県級市である常熟市、昆山市、太倉市、張家港市も含まれる。

中国では地域により、個人が支払う社会保険などが最低賃金に含まれるかどうかが異なる。蘇州市では、企業側が住宅積立金の個人負担分を別途支給する必要があるため、企業の最低賃金の実質負担額は、住宅積立金の最低月額191元(納付基数2,387元×納付比率8%)を加えた1,871元に達し、上海市と北京市に続いて全国3番目の高さとなる。

<全国の最低賃金平均上昇幅が年々低下>
2014年に入り10月30日までに、江蘇省を含む全国18の省・自治区・直轄市と、単独で最低賃金を設定する広東省深セン市の計19地域が法定最低賃金改定を発表した。ちなみに、中国では2年ごとに少なくとも1回は最低賃金を改定する必要があると規定されている。

人力資源・社会保障部の発表によると、1〜9月の間に全国17地域が最低賃金の改定を実施し、平均引き上げ幅は14.1%となった。平均引き上げ幅は2011年に24地区で22.0%だったが、2012年には25地区で20.2%、2013年には27地区で17.0%と年々縮小している。経済成長率の鈍化や人件費高騰の反動、企業利益率の縮小などが最低賃金の上昇幅を低下させている原因とみられる。

(劉元森)

(中国)

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