アルメニアが新発足のEEUに加盟へ

(CIS、アルメニア、ロシア・CIS)

欧州ロシアCIS課

2014年10月16日

ベラルーシの首都ミンスクで10月10日、CIS首脳による諸会議が行われた。ロシアと対立が続くウクライナ大統領は欠席した。プーチン大統領はEUと自由貿易協定(FTA)を含む連合協定を締結したモルドバに対してFTA導入を再検討するよう暗に牽制した。2015年1月のユーラシア経済連合(EEU)発足に合わせ、ユーラシア経済共同体(EurAsEC)の活動が終了する。EEUへのアルメニアの加盟条約が締結され、2015年1月にも加盟する見通しになった。キルギスも2014年内に加盟条約の締結を目指す。

<モルドバのEUとのFTAをめぐりCIS首脳会議で応酬>
CIS首脳会議にはロシアのほか、アゼルバイジャン、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、モルドバ、タジキスタン、トルクメニスタンの大統領が出席した。ウクライナのポロシェンコ大統領は前日の9日にベラルーシのルカシェンコ大統領に欠席を伝え、代理として駐ベラルーシ大使を派遣した。

プーチン大統領はCIS首脳会議の中で、CIS自由貿易圏に関する協定(CIS・FTA)に加盟するウクライナとモルドバが6月にEUとFTAを含む連合協定を締結したことに触れ(2014年6月30日記事参照)、「EU製品がCIS域内産とされてロシアおよびCIS自由貿易圏に流入する影響を考える必要がある」と述べた。

ウクライナとEUの連合協定については、EU、ウクライナ、ロシアの3者間会合の結果、EUがロシアに配慮し、同協定の貿易関連条項の暫定適用開始を2015年末まで延期する方向で調整することとなった(2014年9月18日記事参照、注)。

プーチン大統領はこの例を挙げ、モルドバに対しても同様の対応を検討するよう牽制した。ロシアはモルドバ産の食肉や果物、ワイン、蒸留酒などに最恵国待遇(MFN)税率を課す措置を8月31日に導入した(2014年7月31日付連邦政府決定第736号)。

モルドバのチモフチ大統領は「EUとのFTAがCIS諸国との関係に悪影響をもたらすことはなく、CIS・FTAと補完的な関係を持つ」と説明した。ロシアによるMFN関税適用措置はCIS・FTAの信頼性を損なうものとし、「事実上、わが国をCIS・FTAの外に置く行為だ」と批判した。

<2015年1月にEEU発足、EurAsECは活動を終了>
CIS首脳会議の後、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの大統領が参加するEurAsEC国家間首脳会議が開催され、2015年1月からのEEU発足に併せ、2001年にCIS圏内の経済統合を推進する枠組みとして創設されたEurAsECの活動を終了させる条約が締結された。

その後、ロシア、ベラルーシ、カザフスタンが加盟する関税同盟の最高決定機関である最高ユーラシア経済評議会が行われ、3ヵ国およびアルメニア、キルギスの大統領がこれに出席した。最高評議会では2015年1月1日からEEUを正式に発足させることが確認された。5月に最高評議会が開催された際、3ヵ国の大統領が署名したEEU条約は(2014年6月2日記事参照)、10月3日にロシア、9日にベラルーシ、14日にカザフスタンが国内での批准を済ませた。

<アルメニアに続きキルギスも加盟を目指す>
最高評議会では、既加盟3ヵ国およびアルメニアのサルグシャン大統領が、アルメニアのEEU条約への加盟に関する条約に署名した。サルグシャン大統領は5月の最高評議会でEEUに加盟する意向を示していた。加盟条約の発効は、署名国が国内で批准を済ませ、EEU条約が発効した後となる。サルグシャン大統領は、年内に加盟条約の批准を完了させ、2015年1月1日に発効させることに期待を示した。

加盟条約の発効をもってアルメニアはEEUに正式加盟となり、既加盟国で共通化された諸制度や関税に段階的に一致させていく。関税率は最長で2022年までに対外共通関税率に合わせていく。

キルギスの加盟に関する計画も既加盟3ヵ国大統領によって承認された。キルギスのアタムバエフ大統領は年内にEEU加盟条約への署名ができるよう努めると述べ、加盟国間でのモノ、カネ、ヒト、サービスの移動自由化実現によるメリットを期待した。

(注)ロシアはその後、ウクライナに対し、同条項が適用された場合、その10日後に、穀物を含む食品、冷蔵庫、バスなどに、CIS・FTAでの無関税からMFN税率を課す措置を発表した(2014年9月19日付連邦政府決定第959号)。

(浅元薫哉)

(CIS・アルメニア)

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