年金保険の雇用者負担率を5ポイント軽減

(ルーマニア)

ブカレスト事務所

2014年10月03日

政府は9月22日、年金保険の雇用者負担率を5ポイント軽減する法律を施行した。これにより、社会保障費の雇用者負担率は22.75〜33.45%に下がる。10月1日以降に支給される給与から対象となる。

<大統領は財政への圧迫を懸念>
政府は9月22日、社会保障費の一部である年金保険の雇用者負担率を5ポイント下げる法律(2014年123号)を施行した。2014年10月以降に支給される給与から実施される。同法施行前の年金保険の雇用者負担率は20.8%、25.8%、30.8%の3段階(職種によって異なる)だったが、いずれも5ポイント軽減され、それぞれ15.8%、20.8%、25.8%になる。

従来、ルーマニアの年金保険を含めた社会保障費の雇用者負担率は27.75〜38.45%と、欧州の中では比較的高かった。これが、今回の年金保険の雇用者負担率の軽減で22.75〜33.45%となり、ハンガリー(27%)とほぼ同じレベルになる。

年金保険の雇用者負担率の軽減については、政府が2014年10月1日からの実施を目指して6月ごろから着手していたものの、財政負担増になることを懸念したバセスク大統領が法律に署名していなかった。しかし今回、同大統領が署名に応じたことで軽減措置が施行された。同大統領は署名をした9月19日、「今回の5ポイント軽減により、2014年には問題が顕在化しなかったとしても、2015年以降、財政への圧迫は必至だ。そうなれば政府は新税を導入するなど対策を講じなければならなくなるだろう」と述べ、財政圧迫の懸念を拭い切れていないことを示唆した。

また、バセスク大統領は「11月の大統領選挙が終われば、同法の廃止を検討することも一案だろう」とも述べている。ルーマニアでは、2014年11月に大統領選挙が実施される。バセスク大統領は3選禁止の憲法規定により立候補できないが、ポンタ首相は出馬を既に表明しており、最有力候補となっている。今回の措置が首相の大統領選挙対策の一環であることを見透かした大統領が、首相を牽制した格好だ。

なお、ルーマニア政府はリーマン・ショック後の2009年にIMFなどの債権団から融資を受けており、2012年から債務の返済を開始している。そのため、政府はIMFから定期的にレビューを受けている。政府は、今回の軽減措置に伴う歳入減少については具体的な代替案を示していない。そのため、政府が代替案を早急に講じなければ、今後のレビューでIMFから指摘を受ける可能性がある。

(古川祐)

(ルーマニア)

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