エボラ出血熱の拡大防止にめど

(ナイジェリア)

ラゴス事務所

2014年09月17日

チュクウ保健相は9月10日、エボラ出血熱の感染状況について発表した。ナイジェリア国内で感染の疑いで隔離されている感染者はゼロになり、感染拡大の防止に一定のめどが付いたと考えられる、としている。

<感染の疑いある隔離患者数はゼロ>
チュクウ保健相によると、9月10日時点での国内の感染者数は19人で、そのうち7人が死亡、12人が生存、感染の疑いで隔離されている患者はゼロとなった。ナイジェリアは医療環境がリベリア、ギニア、シエラレオネより整っており、さらに早い段階から米国や世界保健機関(WHO)から支援があったことから、エボラ出血熱による死亡率は37%にとどまっている。

WHOが9月12日に発表した状況報告によると、経済の中心であるラゴスでは既に324人が21日間の体温検査などの監視義務から外れ、残りは29人となった。南部最大の都市ポートハーコートでは5人が監視義務から外れ、残り446人が現在も監視下にある。ナイジェリアのエボラ出血熱感染ルートは、7月下旬に入国し発症したリベリア人に関係するものに限られていることから、残り3週間ほどで全ての人が監視義務から外れる見込みが出てきた。

ナイジェリアは8月19日に非常事態宣言を発令し、感染の拡大を防ごうと、学校などの休暇を延長すると表明。8月27日には教育相が全ての学校の休暇を10月13日まで延ばすことを決定していたが、状況の改善を受け、チュクウ保健相は学校再開を9月22日に前倒しする考えを示している。

<ビジネス活動は平常どおりに>
ラゴス市内は非常事態宣言の後、大規模な集会を控えるなど一時的に静かになることもあったが、現在ではいつもの活気を取り戻している。国民の警戒心も解け、握手の習慣も復活しつつある。

市内の一部のホテルは、8月のバカンスシーズンでもあり、ビジネスパーソンの宿泊客が減少し、空き室が出ていたところもあったが、再び部屋が埋まりつつあるなどビジネス活動は平常に戻っている。エミレーツ航空のドバイ直行便やアリック航空などのナイジェリア国内線は高い運航率を保っている。

ナイジェリア国内は感染が限定的なことから、外資系企業や進出日系企業の多くは状況を冷静に判断し、国外退避や出張禁止などの措置はあまり取らなかった。一部、出張延期などの措置を取っていたところも、今回の隔離患者ゼロのニュースを受けて解除に向けて動き出した。

<内需が支える経済への影響は限定的>
成長を続けるナイジェリア経済にとって、エボラ出血熱は中長期的に大きなリスク要因とは考え難い。マクロ経済は引き続き好調で、為替も安定している。8月のインフレ率は7月より0.2ポイント上がって8.5%となったが、引き続き1桁台を維持している。経済成長は内需の拡大に支えられており、リベリアやギニア、シエラレオネとの貿易・投資もさほど大きくないことから、影響は限定的と考えられる。

外国からの投資についても、政府が誘致を進める自動車産業では、日産が既にスポーツ用多目的車(SUV)の組み立て生産を開始しているほか、同工場で現代自動車もインドなどで生産されている小型車「i10」の組み立てを開始し、150万ナイラ(約105万円、1ナイラ=約0.7円)で売り出す予定だ。9月9日にはドバイの投資会社が地場のダンゴテ・グループのセメント会社の株式を3億ドルで取得したことを発表。その他、電力や通信などの分野でも外国企業の投資は積極的に行われており、今のところエボラ出血熱による影響はみられない。

2015年の2月には大統領選挙が予定されており、年明けからビジネス活動が停滞することが懸念されている。エボラ出血熱の感染防止に一定のめどが立ったことで、日系企業の間にも、エボラ出血熱の発生以降出張などを手控えたことによるビジネス活動の遅れを取り戻そうと、出張を再開する話が出始めている。

(佐藤丈治)

(ナイジェリア)

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