鉱物資源利用税の廃止法案が可決−政権公約の資源関連税廃止を実現−

(オーストラリア)

シドニー事務所

2014年09月12日

鉱物資源利用税の廃止法案が9月2日、連邦議会上院で可決された。これにより、保守連合政権が選挙公約に掲げた炭素課金制度の廃止(7月17日可決)と合わせて資源関連税が廃止されることになった。しかし、政権は少数政党の支持を得るため、退職年金の拠出率の据え置きなどに合意しており、今後の財政状況を懸念する声もある。

<支持取り付けのため助成金などの廃止を延期>
2014年9月2日、鉱物資源利用税の廃止法案がパーマーユナイテッド党などの少数政党の協力を得て連邦議会上院で可決された。鉱物資源利用税は鉄鉱石および石炭(一部関連製品を含む)の採掘から得られる利益に税率30%を課す制度で、2012年7月に当時のギラード政権が導入した。しかし、企業の負担が大きいため反対が根強く、炭素課金制度と並んで2013年9月の連邦議会総選挙の争点ともなっていた。保守連合政権は炭素課金制度と併せて資源関連税の廃止という選挙公約を実現させたかたちだ。

ジョー・ホッキー財務相とマスィアス・コーマン予算相が9月2日に発表したプレスリリースによると、「鉱物資源利用税の廃止によって2010年、2013年の選挙公約が実現された。鉱物資源利用税は問題が多く、政府は毎年数十億オーストラリア・ドル(豪ドル)の費用を支払っていた」と、廃止によって今後10年間で500億豪ドル(約4兆9,000億円、1豪ドル=約98円)の予算の削減になるとの見方を示した。また、少数政党からの支持を獲得するため、(1)低所得者向け退職年金拠出金支援制度(2017年7月1日まで延長)、(2)低所得者向け所得支援制度(2016年12月31日まで延長)、(3)小中高生の子供を持つ世帯向け助成金制度(2016年12月31日まで延長)の廃止時期の延期に合意している。なお、(3)については当分の間、課税所得が10万豪ドル以下の家庭を対象とするとの所得条件を課すことになった。

<予算の削減効果は当初見込みより縮小>
プレスリリースによると、今回の改正に伴う予算の削減額は今後4年間で100億豪ドル以上になるとする一方で、上記の支援・助成金制度の廃止を延期したことに伴う出費が65億豪ドルになることを明らかにし、予算削減効果は当初見込みの165億豪ドルからは縮小するとした。ただし、65億豪ドルについては、退職年金拠出金の拠出率の段階的引き上げ時期の延期によって相殺され、中期的には財政は均衡するとの見方を示した。退職年金拠出金の拠出率については、従来案では9.5%から5年かけて段階的に引き上げ、2019/2020年度(2019年7月〜2020年6月)から12%とするものだったが、新たな案では2020/2021年度までの7年間は9.5%に据え置き、以降各年0.5%ずつ引き上げて2025/2026年度から12%とすることとした。なお、拠出率の引き上げ時期の延期によって、雇用者所得の増加などで経済に好影響を与えるとしている。

(平木忠義、アリス・バイロン)

(オーストラリア)

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