自動車関連品目の輸入に対しSICADのレートを適用−外貨管理に関する為替協定29号が公布−

(ベネズエラ)

カラカス事務所

2014年08月28日

8月8日に為替協定29号が公布され、即日発効した。2014年に入り、自動車関連品目の輸入決済用外貨は外貨管理補完システム(SICAD)の競売を通じて取得することが中心となっていたが、同協定により、国家貿易センター(CENCOEX)を通じた外貨取得にもSICADの為替レートが用いられることになった。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<自動車関連品目がSICAD競売落札レートに変更>
8月8日付官報40471号で為替協定29号が公布され、同日から自動車関連品目の輸入決済用外貨の取得に適用される為替レートが変更された(注1)。具体的にはCENCOEX(注2)への申請を通じて外貨を取得する場合に、これまで適用されていた1ドル=6.3ボリバルの固定為替レートではなく、直近のSICAD競売の落札レートが適用されることになった。SICADのレートは固定為替レートよりドル高のレートであるため、為替レートの変更は輸入者にとってボリバル建て輸入コストの上昇を意味する。

SICADのレートが適用される品目は、南米南部共同市場(メルコスール)共通品目(NCM)コード(注3)で示されており、6〜10桁ベースで566品目に上る(添付資料参照)。NCMコード2桁レベルでは39類、40類、68類、70類、73類、83類、84類、85類、87類、90類、91類、94類、98類に分類される品目で、特に84類(原子炉・ボイラーおよび機械類・同部品、146品目)、85類(電気機器・同部品など、97品目)、87類(鉄道用軌道用以外の車両・同部品、195品目)、90類(光学、測定、精密機器など・同部品、34品目)、98類〔自動車用のコンプリートノックダウン(CKD)部品、51品目〕の品目が多い。

<制度上は認められながらも困難だった固定為替レートでの外貨取得>
政府が為替取引を管理しているベネズエラには、現在3つの為替制度が存在する。それらは(1)CENCOEXへの申請を通じて外貨を取得し、1ドル=6.3ボリバルの固定為替レートが適用される制度(2013年2月18日記事参照)、(2)SICADという競売に準じた制度(2014年4月21日記事参照)、(3)SICAD IIという自由為替市場に近い第3の為替制度(2014年5月12日記事参照)の3つだ。なお、SICAD、SICAD IIの為替レートは変動するが、7月末のレートはそれぞれ1ドル=11.00ボリバルと1ドル=49.99ボリバルで、固定為替レートより大きくドル高ボリバル安のレートとなっている。

固定為替レートで輸入可能な品目は、2012年8月7日に官報で公布された関係各省の共同決議によって定められており(2012年8月14日記事参照)、自動車関連品目も同共同決議上ではCENCOEXへの申請を通じて、固定為替レートで輸入できる品目とされていた。しかし実際には、安い価格で国民へ供給する必要がある食料品、医薬品などの生活必需品の輸入に対しては固定為替レートでの外貨取得が許可されるものの、自動車関連品目に対しては外貨取得が許可されないか許可が遅延する事例が多くなっていた。

<為替協定29号発効で制度と運用が一致>
2014年に入ってから、自動車関連品目の輸入に対して固定為替レートでの外貨取得がほとんど許可されていないため、同部門の輸入決済用外貨は、SICADの競売を通じて取得することが中心となっていた。そのため、為替協定29号によって制度と運用が一致したといえる。

CENCOEXによると、2014年1〜4月の自動車部門に対する固定為替レートでの外貨取得許可額は4,278万ドルで、全体の1.1%にすぎない(注4、表参照)。

CENCOEXによる外貨取得許可実績(2014年1〜4月)

一方、SICADを通じた外貨供給額は、CENCOEXによる許可額を上回る。2014年2月10日に公布された為替協定26号(2014年4月21日記事参照)によりSICADの管轄がベネズエラ中央銀行からCENCOEXに変更されて以来、8月11日までに計21回のSICADの外貨競売が実施された。そのうち自動車を含む輸送機器を対象とした競売は計8回あり、これにより供給された外貨は9億4,418万ドルで、トラクターなどの農業用輸送機器・同部品を対象とした競売を除くと、7億5,601万ドルだった(注5)。

<外貨不足で自動車生産に打撃>
しかしSICADによる外貨供給も限定的なため、外貨不足で部品輸入が滞り生産が低迷するなど、2014年の自動車関連企業の活動は大きく阻害されている。ベネズエラ自動車会議所(CAVENEZ)によると、民間自動車組み立てメーカー7社の2014年1〜7月の自動車生産台数は合計7,037台で、前年同期の生産台数4万3,833台に比べ84.0%減となった。クライスラー(米国)とトラックメーカーのマック(米国)は2014年5月以降生産を停止しており、トヨタ自動車も2月途中から5月まで生産を一時停止していた。

(注1)8月19日付官報40478号で、第2条の文言が一部修正された。
(注2)CENCOEXは外貨管理委員会(CADIVI)の後継となる機関(2014年3月18日記事参照)
(注3)メルコスール加盟国において共通して利用される、HSコードをベースとした関税品目番号。品目の詳細は、国家税関徴税統合庁(SENIAT)のウェブサイトに掲載された、2013年7月15日付特別官報6105号から確認できる。
(注4)CENCOEXによる輸入決済用外貨の取得許可は、通関前と通関後の2段階に分かれる。通関前に必要な許可を「外貨取得許可(AAD)」、通関後に必要な許可を「外貨清算許可(ALD)」と呼ぶが、表に記載された外貨取得許可実績はALDの許可実績。
(注5)採算が合わないなどの理由によって、SICADでの外貨取得を途中で辞退する企業の金額も含まれる。そのため、実際の外貨供給額はCENCOEX発表の金額を下回る。

(松浦健太郎)

(ベネズエラ)

ビジネス短信 53fc1b457b890