マグレブ地域のエボラ出血熱感染者はゼロ−各国とも予防対策を取る−
パリ事務所
2014年08月26日
西アフリカ諸国で猛威を振るうエボラ出血熱に関して、ジェトロは北アフリカのマグレブ3ヵ国およびモーリタニアでの状況と感染への予防対策などをまとめた。現時点では、各国とも感染者は出ていない。
<モロッコ:感染国との直行便を継続中>
モロッコでは今のところ、エボラ出血熱の感染例は見つかっていない。感染者を多く出している4ヵ国からの直行便があるロイヤル・エア・モロッコ(シエラレオネ・フリータウン、ギニア・コナクリ、リベリア・モンロビア、ナイジェリア・ラゴス)は8月11日、それらの国々との連帯感から直行便の中止を行わないと発表している。特に、中継点として感染国からの往来の多いカサブランカ空港では、4月8日から衛生検査を強化している。厚生省感染病対策局のアブデラーマン・マールフィ氏は「現時点では、感染地域からモロッコを経由する便の乗客に感染者は見つかっていない」と発表。伝染病対策として、感染国からモロッコに向けて飛ぶ便の乗客に対する、現地医師グループによる健康状態のチェックが第1段階。第2段階では、「ロイヤル・エア・モロッコが手配した医師が再度のチェックを行う」と同氏は説明する。カサブランカ空港では、まず航空機が着陸した時点で医師グループが乗り込み、機内でチェックが行われる。続いて、空港内に備え付けられた体温測定装置によって体温異常をチェックする。異常が検出された場合のために、隔離室が用意されているという。
モロッコは、感染国の中で特にギニアとの経済関係が緊密で、エボラ出血熱のモロッコ経済への影響が懸念されている。2013年の両国間の貿易額は1億ドルに上り、2014年も増加傾向にある。9月9日にはカサブランカで「キャップ・ギニア」と題する投資フォーラムが開催される予定で、現時点では準備作業を継続している。感染4ヵ国のうち、ギニアにのみモロッコのバンク・ポピュレールが進出している。また、メッカ巡礼(ハッジ、2014年は10月初め)に向けて、毎年7,500人のギニア人がカサブランカを経由してメッカに向かうが、サウジアラビアがギニア人へのビザ発行を見合わせたことで、ロイヤル・エア・モロッコへの影響は大きいとみられる。
<アルジェリア:空港と国境線での衛生管理を強化>
アルジェリアも現在のところ、エボラ出血熱の感染例は見つかっていない。厚生・人口・病院改革省は8月10日、特に心配されているアルジェリア南部でエボラ出血熱が流行する可能性は低いとの声明を発表した。環境・気候的観点から同ウイルスが生き延びる可能性が低いこと、アルジェリアからギニアへの直行便がないことを理由に挙げている。しかし、慎重を期して、空の玄関口である空港と陸の玄関口となる南部国境線での衛生管理の強化を図るとして、タマンラセットの空港やティンーザウアティン、イン・ゲザムといった南部国境近くの町に医師団を配置している。
<チュニジア:厚生省が感染予防対策を発表>
現時点では、エボラ出血熱の感染者は出ていないチュニジアでも、8月4日には厚生省が感染予防のための対策を発表した。2本柱の同対策は、病院での受け入れ態勢の準備と、感染国からチュニジアへの入国者の把握で、感染国4ヵ国との直行便を持たないだけにチュニジアにとって後者への対応は困難とみられている。しかし、同予防対策の責任者である新型・新興疾患監視局のヌルディン・アシュール局長は「接触感染であるため、チュニジアでの感染リスクは非常に少ない」と述べている。
<モーリタニア:厚生機関とのホットライン活用を呼び掛け>
モーリタニアの厚生省が発表したところでは、アイン・ファルバでエボラ出血熱への感染の疑いを持たれていた患者は結局、感染していないことが判明した。現時点では、モーリタニアで感染者は見つかっていない。一方、モーリタニア籍の家族3人がリベリアとシエラレオネの国境で7月末に死亡したことが確認されている。政府は、衛生上の規則を順守し、感染の疑いが少しでもある場合は厚生機関に直ちに連絡するよう(ホットラインは101番)に国民に促している。首都のヌアクショット空港に到着する旅客機の乗客への衛生検査が強化されており、あらゆる空港およびセネガル川流域のロッソのフェリー船には体温測定装置が備えられている。セネガルおよびマリとの国境線での監視体制が強化されているもよう。また、同省予防安全局長のアブデライ・ウルド・ハビブ氏は、国民に対してあいさつの際の握手をなるべく避けるように呼び掛けている。
(渡辺智子)
(チュニジア・アルジェリア・モロッコ・モーリタニア)
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