感染拡大の隣接国に予防対策強化の動き−エボラ出血熱発生による影響−

(ギニアビサウ、セネガル、コートジボワール)

アビジャン事務所

2014年08月15日

コートジボワールやセネガル、ギニアビサウは、それぞれエボラ出血熱の感染が拡大したギニア、リベリア、シエラレオネに隣接する。これらの国では8月13日時点でエボラ出血熱の感染者は確認されていないが、それぞれ対応に乗り出している。コートジボワールの進出企業は平静を保ち、ビジネス活動に影響はみられないものの、当地では一部に患者発生のうわさが持ち上がるなどしていることから、政府は冷静な対応を呼び掛けている。

<感染国からの乗客輸送を禁止>
コートジボワール政府は、ギニアで感染者が確認されて以降、エボラウイルスの自然宿主と考えられるコウモリや野ネズミなどのブッシュミート(野生動物の肉)の提供と消費を禁止しているが、保健省は自国での感染防止に向け対策を強化することを8月10日に発表した。具体的な対策は以下のとおり。

○ギニア、リベリア、シエラレオネへのエール・コートジボワールの運航停止
○コートジボワールに就航する全航空会社に対し、感染国からの乗客輸送の禁止
○アビジャン空港での検査体制の強化(エボラ出血熱の症状に関する質問状の記入、赤外線による体温測定、専用の消毒液を使用した手洗いの義務化)
○陸路国境地点での監視体制の強化
○市民に対する啓発活動の強化(不要な身体接触の回避、手洗いの励行など)
○緊急通報番号(143)の設置

セネガルでは8月12日現在、国境閉鎖や航空会社への運航停止措置は取られていない。同国保健省の発表によると、ダカールに着陸する航空機に関しては、機内に病人と思われる乗客がいないかを機長が空港管制に報告した上で着陸許可が下りる体制になっているという。また、同国に寄港する船に対しても、船内に感染が疑われる乗客が発見された場合、小型船で当該乗客を別送、隔離する対策を取ることにしているという。

ギニアと国境を接するギニアビサウでは、ペレイラ首相が8月11日付でギニアとの国境を封鎖することを発表した。同国でも感染者は確認されていないが、感染が確認された場合に備え、国内複数箇所に専用の隔離・治療施設を設置する予定だ。

<コートジボワール進出企業は平静保つ>
当地の報道などによると、西アフリカ諸国で活動する外国企業の対応はさまざまだ。BSCリソーシズ(イスラエル)とギニアで鉄鉱石の採掘を行うヴァーレ(ブラジル)は6人の外国人スタッフを引き揚げ、一部の現地労働者を解雇した。ギニア国境に近いマリ南西部で金の採掘を行うランドゴールド(英国)は、エボラ出血熱の感染地域に渡航しないよう従業員に注意を喚起している。他方、ギニア東部で金の採掘を行うアボセット・マイニング(英国)は「事業計画に特段の影響はない」としている。ギニア南東部のシマンドゥで鉄鉱石の鉱山開発を行っているリオティント(英国・オーストラリア)は、ギニアでのエボラ出血熱対策のため、世界保健機関(WHO)に4月時点で10万ドルの資金供与を表明済みだ。

感染が確認されていないコートジボワールでは、進出企業に退避などの動きはみられず、ビジネス上の影響は出ていない。他方で、当地市民の間ではフェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービスを通じてエボラ出血熱の患者が確認されたなどのうわさが飛び交う事態が発生している。パニックの発生が懸念されるところ、政府は冷静かつ適切な対応を呼び掛けている。

(山田泰慎)

(コートジボワール・セネガル・ギニアビサウ)

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