エボラ出血熱の感染拡大で一部航空便が運休に
ラゴス事務所・アビジャン事務所
2014年08月15日
西アフリカ地域でエボラ出血熱が流行している。世界保健機関(WHO)の発表によると、8月13日時点でギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリアの4ヵ国で感染が確認され、合計1,000人以上が死亡(感染の疑いを含む)するなど被害が拡大している。一部の航空会社はギニア、リベリア、シエラレオネへの商業便の運航を停止、日本企業の中には不要不急の出張を控える動きが出ている。
<感染国の首脳が相次ぎ非常事態宣言>
西アフリカ地域のエボラ出血熱は、8月8日にWHOのマーガレット・チャン事務局長が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、地域問題から国際問題に発展した。
ちなみに、WHOの発表によると、8月11日時点の感染者は4ヵ国合計で1,975人(疑いを含む)で、そのうち死亡者は1,069人となっている。
今回の西アフリカにおけるエボラ出血熱発生の原因は現在のところ詳しく解明されていないが、ギニアで最初に発生し、国境を接するリベリア、シエラレオネに陸路で感染が拡大したといわれている。
シエラレオネのアーネスト・コロマ大統領は、7月31日に公衆衛生に係る非常事態宣言を発令し、治安部隊を感染地域に派遣、防疫対策に当たらせることなどを決定した。また、リベリアのサーリーフ大統領も8月6日に90日間の非常事態を宣言し、ギニア、シエラレオネと接する陸路国境を閉鎖したほか、国民の命を守るためにいかなる措置を取ることも辞さないと表明した。ギニアでは、8月9日にリベリア、シエラレオネとの陸路国境が封鎖された。コンデ大統領は、ワシントンで開催された米国・アフリカ首脳会議に出席するため渡米し、米国政府高官に支援を要請した。
国境をまたいだ地域としての感染拡大防止の取り組みもなされている。ギニア、リベリア、シエラレオネ、コートジボワールの4ヵ国で構成するマノ川同盟は、WHOをはじめとした国際機関を交え、8月1日にギニアのコナクリで対策会議を開催。感染者の約70%が集中するギニア、リベリア、シエラレオネの国境地帯での感染拡大防止に一層の資源を集中させるとともに、治療に当たる医療関係者の安全確保や監視・検査体制の強化に取り組むことで合意した。
<世界銀行はギニア経済の成長鈍化を予測>
世界銀行はこうした事態を受け、ギニア、リベリア、シエラレオネの3ヵ国に対し、2億ドルの緊急資金援助を行うことを表明した。この資金援助は、感染症発生による経済的な損失からの復旧支援に充てられる見込みだ。
世界銀行によると、今回のエボラ出血熱の影響により各国経済は大きな影響を受け、ギニアではGDP成長率が1ポイント程度鈍化するとみられる。特に農業分野では、感染症発生地域からの農業従事者の避難により生産の落ち込みが見込まれている。
<ギニア、リベリア、シエラレオネへの運航停止相次ぐ>
WHOは8月8日の宣言の中で、「移動や貿易の禁止措置は行わない」との方針を示したが、国際的な感染拡大の可能性を受け、一部の商業便が運航停止となっている。ブリティッシュ・エアウェイズがリベリア、シエラレオネへの運航を中止しているほか、ナイジェリアのアリック航空、トーゴのアスカイ航空、コートジボワールのエール・コートジボワールなどが、ギニア、リベリア、シエラレオネへの運航を停止した。また、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイを本拠とするエミレーツ航空もギニアへの運航を停止している。
一方、ベルギーのブリュッセル航空は運航を継続しているものの、飛行プランを変更し、乗務員の交代をコートジボワールやセネガルなど近隣国で行う措置を取っている。エールフランス、ロイヤル・エア・モロッコ、ケニア航空は当面、通常運航を継続するとしている。
<日本企業に不要不急の出張回避の動き>
日本の外務省は8月8日の感染症危険情報の発令に加え、11日には危険情報を発出。商業便の運航停止などにより、出国できなくなる可能性や現地で十分な医療が受けられなくなる可能性を指摘した。
この事実上の退避勧告を受け、国際協力機構(JICA)はギニア、リベリア、シエラレオネの3ヵ国について日本人スタッフの国外退避を決定。また、その他多くの日本企業は当面の間、不要不急の出張を見送るとしている。
(佐藤丈治、山田泰慎)
(ギニア・リベリア・シエラレオネ)
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