可塑剤の含有量に上限を設定−「玩具および児童向け商品安全条例」改正−

(香港)

香港事務所

2014年08月07日

香港で7月1日、改正「玩具および児童向け商品安全条例」(以下、改正条例)が施行された。主な改正内容は商品の可塑剤含有量の上限設定、識別情報や注意書きのパッケージへの記載の義務付けなどだ。また、条例の規制対象は玩具および児童向け商品の「製造業者」のみならず「輸入業者」や「販売業者」も含まれることに注意が必要だ。

<対象商品の拡大や注意書きなどを義務付け>
改正条例の主要な改正ポイントは、(1)国際標準に合わせ、玩具および児童向け商品に使用される「可塑剤」(フタル酸エステル)の含有量の上限設定、(2)規制対象となる玩具および児童向け商品の「範囲」拡大、(3)玩具および児童向け商品とパッケージに、「識別情報(製造業者名など)」(注1)と「注意書き」(注2)の記載の義務付けの3点だ。改正内容は以下のとおり。

(1)フタル酸エステルの含有量に上限を設定
玩具および児童向け商品に関して、ポリ塩化ビニール(PVC)製品に可塑剤(柔軟性と加工性を高めるもの)として広く添加されている6種類のフタル酸エステル〔フタル酸ビス(DEHP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジノルマルオクチル(DNOP)〕の含有量の上限を設定した。

具体的には、玩具および児童向け商品に含まれるプラスチックの総重量に対するDEHP、DBP、BBPの総重量の割合は1%を超えてはならず、また、4歳未満の幼児が口に含む玩具および児童向け商品に関しては、口に含む部分のプラスチックの総重量に対するDINP、DIDP、DNOPの総重量の割合が1%を超えてはならないと定められた。

フタル酸エステルは、急性の毒性は極めて低いものの、動物実験の結果から、唾液を介した長期的な摂取・接触などにより、肝臓、腎臓、生殖および発達系統に悪影響を及ぼす恐れがあるとされている。そのため、EU各国、米国、カナダ、シンガポールなどでは、児童の口に入る可能性のある玩具および児童向け商品に関しては、既に6種類のフタル酸エステルの含有量の上限を設定済みであり、香港政府も今回の条例改正で規制を加えたことで、先進国の標準に追い付くことができたとしている。

(2)規制対象となる玩具および児童向け商品の「範囲」を拡大
条例で規制対象となる玩具および児童向け商品の「範囲」については、これまでの12種類の児童向け商品(注3)に加え、新たに、4歳未満の幼児向けにプラスチックで作られた食器、衛生用品、リラクゼーション器具、睡眠関連器具、おしゃぶり、歯固めも含まれることとなった。

(3)「識別情報」と「注意書き」の記載を義務付け
改正条例では、玩具および児童向け商品に関して、「識別情報」と「注意書き」を、玩具および児童向け商品の本体、包装、ラベル、説明書の分かりやすい場所にはっきりと見えるように記載しなければならないと新たに定められた。「識別情報」は中国語、英語、またはバイリンガル(中国語および英語)で明記しなければならず、特に「注意書き」はバイリンガルで明記しなければならないとしている。

<製造業者に加え輸入業者や販売業者も対象>
今回の条例改正により、7月1日以降、香港で現地生産されたものだけでなく香港向けに輸出されたものも含め、玩具および児童向け商品が、改正条例に違反する場合、香港での販売が禁止される。条例では、玩具および児童向け商品の「製造業者」のみならず、「輸入業者」や「販売業者」も規制対象となっていることから、これらの事業者は、条例違反とならないよう、香港の法律の専門家などを交え、香港政府の追加的な規制強化の動向にも注意を払いつつ、自社の取扱商品の安全性について材料管理や生産工程管理も含めて継続的にチェックできる態勢を構築しておく必要があろう。

(注1)商品のメーカー、輸入者、供給者など関連事業者のフルネームまたは商標(トレードマーク)および関連事業者の香港住所を指す。
(注2)商品の設置、使用、消費、廃棄に関する警告を指す。
(注3)12種類の児童向け商品は、幼児用おしゃぶり、幼児用歩行器、哺乳瓶、家庭用二段ベッド、幼児用携帯ベッドと同様のハンドル付きの製品とスタンド、家庭向けの児童用安全バリアー、家庭向けの児童用ベッド、児童用の背の高い椅子と家庭用多目的(背の高い)の椅子、児童用絵の具、児童用ハーネス型安全帯、家庭用ベビーサークル、ベビーカーとそれらの包装を指す。

(メーガン・クォック、和瀬幸太郎)

(香港)

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