2015年7月から、解雇、有期雇用、失業手当受給に関する制度を改正

(オランダ)

アムステルダム事務所

2014年08月06日

雇用と社会保障に関する法案が6月に議会を通過し、2015年7月1日から解雇と有期雇用契約、失業手当受給に関する法制度が改正される。また、2015年1月1日以降、有期雇用される被雇用者の保護が強化される。

<手続き迅速化や被雇用者の保護強化などが目的>
上院は6月11日、雇用と社会保障に関する法案を承認した。この法案は、(1)雇用契約終了の際の手続きの迅速化、コストの削減、公平化、(2)有期雇用される被雇用者の保護の強化、(3)失業手当受給者の復職の早期化、を目的としている。

同法案により、2015年7月1日から、解雇と有期雇用契約に関する法制度が以下のとおり改正される。

<解雇事由によって手続き方法も固定化>
現在、雇用者が被雇用者との合意によらず雇用関係を終了させる場合、労働センター(UWV)へ申し立て許可を得る、裁判所に申し立て裁定を得る、の2つの方法があり、どちらを利用するかは当事者の判断で決めることができる。改正後は、(1)経済的な理由、長期にわたる就労不能の場合はUWVへ申し立て、(2)その他の場合(勤務態度など被雇用者側の要因を理由とするものを含む)は裁判所へ申し立て、と解雇事由により手続き方法が固定される。労働協約が適用されている事業所の場合、(1)のケースでは、UWVへの申し立てに代えて、労働協約に定められた手続きを取ることもできる。

また、雇用者と被雇用者が相互の合意によって雇用関係を終了させる場合、被雇用者は合意後14日間、合意を無条件で撤回することが可能となる。

<解雇補償金の導入>
雇用者側の事情で雇用契約を終了する場合、2年以上雇用関係にある被雇用者は解雇補償金を受け取ることが可能となる。

解雇補償金は、最初の10年間の勤務については1年当たり月給の3分の1、10年を超える期間については1年当たり月収の半分の合計で計算し、7万5,000ユーロ、ないし年収が7万5,000ユーロ以上の被雇用者の場合は年収相当額が限度額となる。2020年1月1日までの移行措置として、50歳以上の被雇用者の場合、50歳の誕生日以降の勤務については1年当たり月給1ヵ月分として計算される。

また、従業員数25人未満の小規模企業については、2020年1月1日までの移行措置として、経済的な理由で雇用契約を終了する場合、上記計算式よりも低い金額の解雇補償金が認められ(具体的な計算方法は現在検討中)、50歳以上の被雇用者の50歳の誕生日以降の勤務についての割り増しは適用されない。

<有期雇用契約は連続2年までに短縮>
現状では、有期雇用契約について、契約更新は3回まで、最長連続して3年まで延長することが可能。その後、同じ被雇用者と有期雇用契約を締結するには3ヵ月の猶予期間を取る必要がある。改正後は、契約更新3回までは変わらないが、最長連続して延長可能な期間は2年に短縮され、再度の有期雇用契約までに必要な猶予期間は6ヵ月に延長される。

<被雇用者の保護を強化>
2015年1月1日から、有期雇用される被雇用者について、以下のように保護が強化される。

(1)6ヵ月以上の有期雇用契約について、雇用者は契約終了1ヵ月前までに更新の有無と条件を通知する義務を負う。
(2)6ヵ月以下の有期雇用契約について、試用期間の設定は認められない。
(3)有期雇用契約について、競業禁止規定(注)の設定は認められない。

<失業手当の受給期間短縮>
2015年7月1日以降、6ヵ月以上失業手当を受給している者は、紹介される求人を受け入れねばならない(拒否した場合、手当の支給が停止される場合がある)。紹介された求人の給与額が失業手当の金額を下回る場合、その差額は補てんされる。また、失業手当の受給期間は2016年から2019年にかけて、現行の38ヵ月から24ヵ月に段階的に短縮される。

(注)競業禁止規定とは、退職後の一定期間、同業の競合企業への就職ないし競合するような事業を自ら起業することを禁じる規定のこと。

(立川雅和)

(オランダ)

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