EU理事会、対ロシア制裁措置の対象者を87人に拡大−法人などの対象も20に広げる−

(EU、ロシア、ウクライナ)

ブリュッセル事務所

2014年07月28日

EU理事会(閣僚理事会)は7月25日、ロシアの政府高官らに対してEU域内への渡航禁止と資産凍結を科す制裁措置の対象者を、これまでの72人から87人に拡大することを決定した。加えて、法人などの制裁対象を20に広げることも決定した。同決定はウクライナ危機に関連したもので、同日のEU官報に掲載され、即日発効した。さらなる制裁措置を決定するため、7月29日にEU理事会の大使級会合を再度開催し、協議する予定。

<渡航禁止と資産凍結の対象者と対象企業などを追加>
EU理事会は7月25日、ウクライナの情勢に鑑み、EU域内への渡航禁止と資産凍結を科す制裁措置(2014年7月14日記事参照)の対象者に、ロシアのミハイル・フラトコフ対外情報庁(SVR)長官やニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記、アレクサンドル・ボルトニコフ連邦保安庁(FSB)長官ら15人を追加した。

また、4月に分離独立派が独立宣言した「ルガンスク人民共和国」や「ドネツク人民共和国」、両国が結成した「ノボロシア人民共和国連邦」およびウクライナ東部の分離独立派戦闘部隊など、ウクライナの領土保全、主権、独立性を損ねる9主体、およびケルチ・フェリーやセバストポリ商業港など、ウクライナ法に違反して移譲されたクリミア半島の国有企業9社を追加することを決定した。

これは、7月16日の欧州理事会(EU首脳会議)(2014年7月18日記事参照)同22日のEU外相理事会の要請を踏まえて、同24日のEU理事会の常駐代表委員会(COREPER、EU大使級会合)で協議した合意結果を受けたもの。制裁対象に、新たに15人と18企業・主体を加える2014年7月25日付理事会決定2014/499/CFSP同日付理事会実施規則(EU)No810/2014を同日のEU官報に掲載し、即日発効させた。これでEUによる制裁措置の対象は計87人と20企業・主体となった。

また、2014年3月17日付理事会規則(EU)No269/2014の第3条1項を改正する2014年7月25日付理事会規則No811/2014も採択し、同日発効させ、制裁措置の法的基盤や適用基準も併せて拡大した。これにより、クリミア自治共和国の編入やウクライナ東部地域の不安定化に責任があるロシアの政策決定者を積極的に支援している、もしくは同政策決定者から利益を得ている人や企業・団体に対しても、EU域内への渡航禁止や資産凍結を科すことが可能になった。

さらに、24日の常駐代表委員会では、クリミア自治共和国とセバストポリ市との貿易や投資を制限する追加措置を協議した。加えて、欧州委員会と欧州対外行動庁(EEAS)が提示したさらなる的を絞った措置案と、金融市場や防衛、二重用途物品(民生および軍事の両方に使用される物品)、エネルギー分野を含めたセンシティブ技術などでの行動案に関する準備作業結果についての意見交換も行った。

この2つの提案については、翌25日の常駐代表委員会でも継続審議されたもよう。これまで提示された法案を全て採択できるよう、同29日に常駐代表委員会を再度開催し、協議するとみられる。

(田中晋)

(EU・ロシア・ウクライナ)

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