認定事業者制度の相互承認で中国と合意−模造品対策の協力強化も−

(中国、EU)

ブリュッセル事務所

2014年07月11日

EUと中国は5月16日に、認定事業者(AEO)制度の相互承認について合意した。EUもしくは中国で認定を受けた事業者を対象に、両国で通関手続きが軽減されることになる。制度の運用開始は2015年上半期となる見込みだ。また、両国は模造品対策における協力強化についても合意した。

<中国の相互承認はEUが初>
EUと中国は2014年5月16日に北京で開催された第7回税関協力合同委員会(JCCC)で、AEO制度の相互承認に関する合意文書に署名した。EUもしくは中国においてAEOの認定を受けた事業者は、両国の通関において検査が軽減されたり、手続きが簡略化されたりするようになる。EUは既に日本や米国(2012年5月11日記事参照)などとAEOの相互承認を実施しているが、中国が相互承認をするのはEUが初めて。

AEO制度は物品のセキュリティー管理や法令順守などの基準を満たした事業者を対象に、通関手続きを軽減し、迅速化するもの。事業者にとっては、輸送時間の短縮、コスト削減につながる。一方、税関当局は諸手続きの軽減により検査をリスクの高い貨物に集中できるようになり、業務の効率化が期待される。

2013年のEUの中国との財貨の貿易総額は4,281億ユーロに上った。内訳は中国への輸出が1,481億ユーロ(前年比2.9%増)、中国からの輸入が2,799億ユーロ(4.0%減)で、EUは中国の最大の貿易相手となった。EUでは現在、約1万5,000社がAEOの認定を受けており、さらに増加傾向にある。

<運用開始は2015年上半期の見込み>
欧州委員会は、中国との相互承認の実施により、EUのAEO制度の汎用性がさらに高まるとしている。また、相互承認の促進により、世界各国の通関実務の互換性を確保し、税関制度の世界的な調和が促進される、としている。なお、欧州委の担当者によると、中国とのAEO制度の相互承認の実施開始は、両国間の情報交換システムの運用開始を待つ必要があるため、2015年上半期になる見込みだ。

EUと中国は、2004年に税関協力協定を締結した。同協定は、関税法の適正な実行および不正の防止・対策を目的に、両国の税関当局の情報交換と協力の枠組みを定めている。この枠組みに基づき、両国はJCCCをおおむね年1度開催し、協定の実施状況を監視してきた。また、両国はこの協定の枠組みにおいて、模造品対策、サプライチェーンのセキュリティーと貿易の円滑化、および薬物前駆体(体内で活性化し薬物としての薬効を発揮する薬剤)の横流しの防止などを推進している。

前述の2014年5月のJCCCでEUと中国は、関税分野における優先分野と目標を定めた、2014〜2017年の新たな「関税協力に関する戦略的枠組み」にも合意した。これは、2009年に両国が署名した戦略的枠組みを引き継ぐもので、今後の重点分野として、貿易の円滑化、サプライチェーンのセキュリティー、模造品など不法貿易対策を挙げている。また、廃棄物の違法な輸送に対する共通した取り締まりが優先分野に加えられた。

さらにこのJCCCでは、2014〜2017年を対象とする「EU・中国知的財産権に関する行動計画」にも合意。模造品対策におけるEU・中国間の協力強化を目指す。欧州委によると、2012年に知的財産権侵害の疑いでEU加盟国の税関当局が留置した物品の64%が中国から輸入されたものだったという。

(村岡有)

(EU・中国)

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