離職率は低下も、人材確保が依然課題−JCCII賃金実態調査(2)−

(インド)

ニューデリー事務所

2014年07月10日

インド日本商工会(JCCII)が6月26日に発表した「第8回賃金実態調査結果」によると、離職率は前回調査時よりもおおむね低下した。景気減速を背景に、転職を控える傾向が顕著になっているようだ。連載後編。

<スタッフを除き離職率が低下>
2013年の離職率を職位別にみると、トップマネジメント(部長級以上)が2.8%、管理職(課長、係長級)で6.1%、スタッフ(セールス担当者、秘書、受付、事務員)で9.4%、エンジニアで7.0%、ワーカーで6.3%となった(表1参照)。前回調査との比較では、スタッフを除き総じて低下する結果となった。

スタッフについては、「キャリアアップ志向がブルーカラーに比べて強く、流動性が高い」「特にセールス担当職は他の企業と接する機会も多く転職の誘いが多い」といわれており、例年離職率が他の職位よりも高止まりする傾向は続いている。しかし、2012年を底とする景気の低迷を背景に、スタッフの転職意欲も減退傾向にあるとみられる。この事実は近年のスタッフの離職率の推移(2010年:12.4%、2011年:16.7%、2012年:8.7%)からも読み取れる。

表1職位別の離職率

一方、平均勤続年数については、過去の高い離職率や事業立ち上げ間もない企業が多いことなどを反映し、3.9年という結果となった(表2参照)。

表2勤続年数、平均年齢、従業員数

<採用を経営上の大きな問題と考える企業が増加>
賃金・採用・解雇の3項目が企業の経営上、どの程度問題になっているかについては、3項目とも「さほど問題ではない」が割合としては大きいものの、賃金と採用を「大いに問題」と回答した企業の割合も大きい(表3参照)。特に、採用を「大いに問題」と考える企業の割合は前回調査より上昇した。これは企業のニーズに見合う資質や能力を持った人材の確保が難しくなっていることを示唆している1つの例といえる。一方、解雇を「大きな問題」と考える企業は20%を切っており、経営に与えるインパクトは限定的とみられる。

表3経営上の問題点

また、採用手段としては、従来どおり「人材紹介会社」の割合が最も多く、それに続き「口コミ」や「インターネット」を活用した手段も重用されているようだ(表4参照)。エンジニアについては「教育機関との連携」も活用されており、有能人材確保のため技術系大学や職業訓練校などとの関係強化に動いていることが見て取れる。

表4採用手段

ビジネス短信 53bbac8c87410