日系企業などとの知財対話が約1年ぶりに実現

(タイ)

バンコク事務所

2014年06月27日

7回目となるタイ政府知財執行関係当局と在タイ日系企業などとの対話が6月3日、タイ商務省で行われ、タイ側から最近のタイ政府の取り組みが紹介された。

<知財関連改正法案は白紙に>
6月3日、タイ商務省でタイ政府知財執行関係当局と在タイ日系企業などとの対話が行われた。対話は、タイ側が最近のタイ政府の知的財産権に関する取り組みを紹介し、日本側が要望などを伝える場となっている。約1年ぶりとなった今回の対話には、タイ側から知財局(DIP)のほか、裁判所、検察庁、経済警察、特別捜査局、税関の担当者ら、日本側から日系企業、特許法律事務所の担当者らが出席した。

タイ側からは、法令改正の検討状況、知財侵害取り締まり強化に向けた活動、日本の特許庁(JPO)との「特許審査ハイウエー」などについて説明があった。

法令改正の検討状況としては、商標法、著作権法、営業秘密法の改正案が国会に提出されていたが、今般の政治的混乱によって全て白紙となったという。DIPとしては、新政権が正式に発足した後、あらためてこれらの改正案を提出する予定だが、新政権の発足時期も不明な現在、法案の成立時期は全く予測できないとのことだった。改正の内容として、商標法については保護範囲の拡大や登録手続きの簡素化、料金の変更、著作権法についてはデジタル時代における権利保護、映画盗撮への対応などが挙げられた。

<省庁横断組織が知財侵害取り締まり>
知財侵害取り締まり強化に向けた活動としては、タイ側は政府の省庁横断組織である国家知財権執行センター(NICE)が6つのワーキンググループを発足させ活動を進めつつあると説明した。またDIPは、模倣品などの販売者に販売場所を提供する家主や地主に加え、インターネットサービスプロバイダー(ISP)と連携することで摘発を容易にすべく、関係当局と家主や地主、ISPなどが「知財権侵害に対する協力覚書」に参加することを提案しているとした。またJPOとの特許審査ハイウエーに関し、DIPは2014年1月の試行開始からこれまでに24件の特許権の申請を受理しており、今後、申請から半年以内のファーストアクション(申請者への審査結果の最初の通知)を目指すとのことだった。

対話に出席した東南アジア知財ネットワーク幹事でAsian Hondaの山崎克俊氏は、今回の対話の内容について、「1年ぶりの対話が実現した点で一定の成果があったともいえるが、DIP長官とタイ政府が不在という実情では、あらゆる課題解決の道のりが不透明であるのも事実。だからといって何もしなければ何も進まないので、継続的に粘り強く声を上げていくしかない」と述べた。

(大熊靖夫、澤井容子/アジア知的財産担当)

(タイ)

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