投資調整庁が「新ネガティブリスト」の日系企業向け説明会−約200社が参加−
ジャカルタ事務所
2014年05月29日
投資調整庁(BKPM)とジェトロは5月16日、ジャカルタ市内で進出日系企業を対象に「投資ネガティブリスト」の改定(4月23日付大統領規定2014年第39号)について説明会を開いた。BKPMの担当長官代行らからの説明に対し、企業から活発に質問が出た。
<4年ぶりの改定、200社が出席>
説明会の冒頭、BKPMジャパンデスクの山●(山へんに竒)紀雄・投資促進政策アドバイザー〔国際協力機構(JICA)専門家〕は、「投資ネガティブリストの改定は約4年ぶりであり、今回、ファラ長官代行(投資環境・開発担当)、ユリオット担当ダイレクターから直接説明を受け質疑応答の機会を得たことは非常に有益」とあいさつした。会場には約200社の進出日系企業が参加し、活発に質問が出るなど、関心の高さをうかがわせた〔BKPMの説明資料(英語のみ)参照〕。
ファラ長官代行が、新ネガティブリストの概要について説明した。2007年法律第25号(投資法)第12条で、「閉鎖または条件付きで開放されている事業分野・業種を除き、全ての事業分野・業種に投資活動は開放されている(第1項)」と規定され、「閉鎖または条件付きで開放されている事業分野の基準および条件ならびに事業分野リストは、それぞれ大統領規定で定める(第4項)」としている。
同長官代行は該当する2つの大統領規定を挙げて、次のように説明した。
まず、内資・外資企業ともに満たすべき一定の要件については、大統領規定2007年第76号「投資分野において閉鎖されている事業分野および条件付きで開放されている事業分野策定の基準と条件に関する規定」で定められている。同大統領規定では、保健、安全、防衛、治安、環境、モラル・文化などについて守られるべき点や、条件付きで開放される分野の項目として、a.零細中小企業・協同組合の保護・振興、b.パートナーシップがあること、c.資本保有率に基づく、d.特定の場所、e.特別許可を得ること、の項目(第12条)を満たすことが定められている。
一方、今回の説明会の主テーマである大統領規定2014年第39号では、内資・外資企業による参入禁止・制限分野などを業種ごとにリスト(「投資ネガティブリスト」)として定めている。
<国内産業の競争力強化などが目的>
ファラ長官代行は投資ネガティブリスト改定の背景として、昨今の直接投資の増加と2015年に実現するASEAN経済共同体(AEC)を挙げ、改定に当たっては、(1)国内産業の競争力強化、(2)持続的な経済発展とグローバル経済の変化への対応、(3)投資規制の簡素化、を原則にしたと述べた。
具体的な業種別規制は、別添I「内国企業、外国企業を問わず民間企業の事業参入が禁止されている分野」、別添II「条件付きで開放される事業分野」のリストで定められている。特に、別添IIでは、外国企業による出資上限と参入条件を事業分野別に規定しているが、(1)外資規制を緩和する分野(9分野)、(2)外資規制を強化する分野(5分野)、(3)農業分野(5分野)、(4)これまで規定されなかった分野(11分野)、の4つに分類して説明された(2014年5月14日記事参照)。
<貿易会社は引き続き単独資本で進出可能>
引き続き、ユリオット担当ダイレクターも交え、出席者との間で活発な質疑応答が行われた。主な内容は以下のとおり。
(1)グランドファーザー条項について
既存投資については経過条項(グランドファーザー条項)により既得権益が守られる(第9条)が、投資承認書に記載されている事業場所、投資額、株主保有などが変更されるケースでもグランドファーザー条項の対象になるかという質問については、内外の資本比率が変わらない限り適用されるとした(第6条)。資本譲渡の場合、例えば日本企業が保有する資本をシンガポール企業へ委譲する場合も、出資比率が変わらない限りグランドファーザー条項が適用される。
(2)ディストリビューター
外資出資制限が33%まで引き下げられたディストリビューターについて、同業種の定義については、商業省管轄ルールに従うとの回答があった。ネガティブリスト上、ディストリビューターの産業分類コード(KBLI)が「00000」となっている理由について、ディストリビューターを規定するKBLIコードが多数あり、適合するものがないため、便宜上、「00000」としているとのことだ。
貿易会社(輸出入)はディストリビューターに含まれるかという問いに対しては、ディストリビューターには含まれず、引き続き外資100%で進出可能。貿易会社が輸入した製品は、インドネシア国内でどのような相手先に販売可能かという問いに対しては、国内ディストリビューター(外資系企業含む)と契約書などのアグリーメントを作成した上で、当該会社向けに販売可能とした。
インドネシア国内で他社に製造委託し、製品を国内に流通するような形態はディストリビューターと見なされるかという問いについては、「大規模商業」分類に当たり、外資単独資本での設立が可能とした。この場合、国内ディストリビューター向けに販売することが条件となる。また、製造業者が製造したものを国内ディストリビューターへ販売する行為をディストリビュートと見なすかについては、「見なさない」との回答だった。
(3)ベンチャーキャピタル
外資上限が85%に緩和されたが、その他に条件があるかという問いについては、金融セクターであるため、金融庁(OJK)による事業ライセンス取得が必要と回答した。
(4)映画プロモーション産業(広告)
映画プロモーション産業(広告)では従来、内資100%に限られていたが、ASEAN諸国の投資家に限り51%まで上限が緩和された。このことについて、具体的な内容はどういったものかとの質問では、例えば、映画館における映画上映前の広告などが対象になるとし、映画製作事業は対象外と説明した。また、「ASEAN諸国からの出資」の考え方として、第三国からASEAN域内の国に設立した会社からのインドネシアへの投資は、ASEANからの投資と見なすと回答した。ASEANで投資会社を設立し、当該会社からのインドネシア投資についてもASEANからの出資と見なすという。
(5)株式市場を通じた間接投資
株式市場を通じた投資にネガティブリストが適用されるかという質問については、第5条にのっとり、適用されないとの回答があった。他方、会社のオーナーから株を直接取得することについては直接投資に該当し、ネガティブリストの対象となるとのことだった。
(藤江秀樹)
(インドネシア)
ビジネス短信 53854481b46b8




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