上海自由貿易試験区にオフショア口座制度が発足−金融機関の国境またぐ自由取引が可能に−

(中国)

上海事務所

2014年05月28日

中国(上海)自由貿易試験区内の「自由貿易口座(オフショア口座)」制度の管理細則が発表された。同細則により、試験区内のみならず、上海市内の金融機関は一般口座と異なる、自由貿易口座専用の帳簿システムを構築すれば、同口座で業務を展開できるようになる。自由貿易口座の開設により、国境をまたぐ資金移動の自由度が格段に高まる。

<オフショア取引には専用の帳簿システムが必要>
中国人民銀行(中央銀行)は2013年12月2日、同試験区内の金融管理制度の緩和策を定めている「金融による中国(上海)自由貿易試験区建設のサポートに関する意見」を公布し(2013年12月5日記事参照)、同試験区内の企業・個人に対し自由貿易口座という新しいオフショア口座を導入することを決めた。

中国人民銀行上海本部は5月22日、「中国(上海)自由貿易試験区分帳核算業務実施細則」と「中国(上海)自由貿易試験区分帳核算業務リスク管理細則」を公布し、自由貿易口座制度の運営・監督方式を明らかにした。

この2つの細則により、試験区内のみならず、上海市内の金融機関はこれから、「分帳核算」の帳簿管理システムを完備すれば、自由貿易口座で業務を展開できる。「分帳核算」とは、一般口座から独立した自由貿易口座専用の帳簿システムを構築することを指す。

自由貿易口座が一般口座と異なるのは、同口座を利用すれば国境をまたぐ資金移動の自由度を大幅に高めることができることだ。例えば、区内企業が開設した自由貿易口座と海外口座、他の企業の自由貿易口座との間で資金の自由な振替や、区内企業が開設した自由貿易口座と区外の一般口座との間で投資などの実需に応じて資金の振替ができる。将来、条件が整えば、自由貿易口座内での人民元と外貨の自由両替も認める方針だ。

ただ、「東方早報」によると、各金融機関は現在「分帳核算」の帳簿管理システムを構築中で、まだ実際に自由貿易口座を開設できる段階にはない。さらに、「分帳核算」の帳簿管理システムを構築後、中国人民銀行や中国銀行業監督管理委員会などの審査を受けなければならない(「東方早報」5月23日)。

<人民元業務のみを当面許可、6ヵ月後に運用状況をみて外貨にも解禁か>
また、中国人民銀行は慎重に同制度を進めるため、現段階では自由貿易口座について人民元業務しか認可しない。2つの細則発表の6ヵ月後、外貨管理局と共同で人民元業務の運用状況を分析した上で、タイミングをみて外貨業務も解禁する。

(文涛)

(中国)

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