武器・ダイヤモンド原石の禁輸措置を一部解除−国連安保理が決議−

(コートジボワール)

アビジャン事務所

2014年05月14日

国連安全保障理事会は4月29日、「コートジボワールに対するダイヤモンド原石および武器の禁輸措置を減免する」決議を全会一致で採択した。2005年以降、内戦の長期化と深刻化を防ぐため制裁措置が科されていたが、紛争が終結し、平和と安全の確立に向け情勢が改善されてきていることや、ダイヤモンド原石の国際認証制度である「キンバリー・プロセス証明制度」導入を通じて、同採掘分野のガバナンスが整ってきていることを受け、今回の採択に至った。

<ダイヤモンドの合法的輸出再開に道を開く>
決議の採択を受け、コートジボワールのバンバ国連大使は「コートジボワールに対する信頼を表している。改革を推進してきた政府の努力が評価された。政府は制裁が全面解除されるまで引き続き国連、国際社会と協力して、必要な改革に取り組んでいく」と述べ、決議で打ち出された措置を歓迎した。

コートジボワール政府は、「キンバリー・プロセス認証制度」(注)の枠組みの中で、ダイヤモンド採掘産業を育成していきたい意向で、2013年から制裁措置の解除に向け働き掛けていた。国連安保理決議で、ダイヤモンド原石の禁輸が解除されたことで、合法的な輸出再開の道が開かれた。コートジボワール産ダイヤモンドは、制裁措置が科されていた間もガーナ、マリ、ギニア、リベリアなど周辺国に流出し、不法な取引が報告されていた。一方、ダイヤモンド原石の禁輸解除に伴い政府は今後、同分野における不法採掘対策、関税制度の導入、関連収入の開示、取引所の設立など一連の措置から成るアクションプランについて進捗状況を報告することが義務付けられる。

EU統計によると、コートジボワールのダイヤモンド産出量は年間5万〜30万カラットで、世界有数の産出国ボツワナ、ロシア、南アフリカ共和国、アンゴラ、カナダなどと比べ少ない。同分野では小規模採掘を中心に約20万〜30万人が生計を立てている。

<武器取引は小火器など一部を解除>
他方、武器禁輸については全面解除ではなく、小火器などに限られた一部解除となる。武器購入に当たっては、引き続き国連安保理への事前通知が義務付けられる。武器禁輸が一部解除されたことで、当地で治安維持の役割を担う治安部隊、特に警察、憲兵隊向けに警備用の武器を装備することが可能となる。現在、コートジボワールでは約7,000人規模の国連平和維持軍が展開されているが、国連安保理は、国内情勢の安定化に伴い最大で1万人を超えていた要員を順次削減していく方針で、2015年までに5,400人に減らす予定だ。これまで治安の回復、安定化を支援する任務に当たっていた国連平和維持軍の人員縮小に伴い、当地の治安維持能力を強化していく必要性が高まっている。

コートジボワールでは2002年に反政府勢力が武装蜂起して以降、反乱軍が北・西部地方を実効支配する状態が続いていた。紛争勃発直後から国連をはじめとする国際社会が紛争解決に向け迅速に介入したこともあり、内戦状態には早期に終止符が打たれた。しかし武装解除が難航し、国土統一には至らないまま内政不安が長期化し、散発的に緊張が高まった。特に反乱軍の支配地には、ダイヤモンドなど天然資源の産出地帯があり、資源取引が武器購入などの資金源となり、紛争の長期化や拡大が懸念されていた。

国連安保理は2005年12月15日、これらの情勢に鑑み「武器およびダイヤモンド原石の禁輸」決議を採択。以降、現在までコートジボワールへの制裁措置が更新されてきた。

なお、日本の経済産業省は2006年1月23日、外国為替および外国貿易法に基づく告示を改正し、コートジボワールを原産地とするダイヤモンド原石を事実上の輸入禁止とした。国連加盟国は今後、安保理の決議を踏まえ、輸出入規制の対象国を見直す措置を取るとみられる。

(注)キンバリー・プロセス認証制度は、ダイヤモンド原石の原産地証明(国際認証)を義務付ける制度。南アフリカ共和国の鉱山都市にちなんだ名称で、紛争地帯で採掘され武装勢力などの資金源となっている紛争ダイヤモンド(ブラッド・ダイヤモンド)が市場に流入するのを防ぐ目的で、2003年に正式に発足した。「紛争と関わりのないダイヤモンド」に対し証明書を発行し、証明書のないダイヤモンドの取引を違法とする。現在81ヵ国が参加している。

(渡辺久美子)

(コートジボワール)

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