首脳会談で日豪EPA大筋合意−牛肉関税を段階的に削減−

(日本、オーストラリア)

シドニー事務所・アジア大洋州課

2014年04月08日

オーストラリアのトニー・アボット首相は4月7日、東京で安倍晋三首相と会談し、会談後の共同記者会見で両首脳は日本・オーストラリア経済連携協定(EPA)について大筋で合意したことを発表した。交渉の焦点となっていた日本の牛肉の輸入関税については、冷凍牛肉を38.5%から19.5%に18年かけて、冷蔵牛肉を38.5%から23.5%に15年かけて段階的に削減することとした。また、自動車の完成車輸出額の約75%が即時に関税撤廃され、中でも主力の1500cc超3000cc以下のガソリン車は全て即時撤廃されることとなる。残る完成車も3年目には関税が撤廃されるほか、自動車部品は即時を含め主に3年目までに撤廃される。

<焦点の牛肉と自動車で合意>
アボット首相は4月6日から日本を訪問、7日に安倍首相と会談し、共同記者会見で両首脳は日豪EPAが大筋で合意したと発表した。

オーストラリアの貿易統計によると、2013年(暦年)のオーストラリア産牛肉の最大の輸出先は日本で、日本における販売を拡大したいオーストラリアは、現行の関税率38.5%を19%まで引き下げるよう求めていた。一方、オーストラリアの自動車輸入額の3割弱は日本からで、最大の輸入先となっている。日本としては、輸出拡大を目指して、自動車の輸入関税の撤廃を求めていた。

<冷凍牛肉関税は18年間かけ19.5%に>
今回は日本の輸入関税に関して、乳製品、砂糖、小麦などについて合意内容が明らかになり、コメは関税撤廃等の対象外となった。最大の焦点だった牛肉の関税については、冷凍牛肉を18年間かけて38.5%から19.5%に、冷蔵牛肉を15年間かけて38.5%から23.5%に、それぞれ段階的に削減することとした。ただし、オーストラリアからの牛肉の輸入数量が一定量を超えた場合には、日本が譲許税率を引き上げる数量セーフガードを導入するとしている。

他方、日本からオーストラリアへの自動車の完成車輸出額の約75%について、即時に関税が撤廃され、中でも主力の1500cc超3000cc以下のガソリン車は全て即時撤廃されることとなる。残る完成車も3年目には関税が撤廃されるほか、自動車部品は即時を含め主に3年目までに撤廃される。

オーストラリアへの外国投資の審査基準についても、日本は現行の2億4,800万オーストラリア・ドル(約238億800万円、豪ドル、1豪ドル=約96円)から米国、ニュージーランドと同様の10億7,800万豪ドルまで引き上げることで合意した。ただし、国営企業からの投資は全ての投資が外国投資委員会の審査を受けること、農地、農業ビジネスについては1,500万豪ドルを基準額としている。

<牛肉産業は28億豪ドルの成長の見込み>
今回の大筋合意を当地の主要新聞は1面で大きく取り上げている。「ファイナンシャル・レビュー」紙(4月8日)は、今回の合意、特に牛肉の関税引き下げは牛肉産業にとって多くの利益をもたらすと伝えており、今後20年間でオーストラリアの牛肉産業は28億豪ドル拡大して54億豪ドルの輸出機会を得ると伝えている。今回の交渉についてアボット首相は「今回の合意は日本の投資家に対し、オーストラリアがビジネスに開放的だとの強いメッセージを送ることになった」とコメントし、交渉を担当したアンドリュー・ロブ貿易・投資相は「大変困難を伴う交渉だったが双方にとって成功だった。また、オーストラリアの雇用や消費に対して良い影響をもたらす」としている。

合意内容の詳細については以下を参照。

経済産業省プレスリリース
農林水産省発表
オーストラリア貿易投資省発表

(平木忠義、日下若名)

(オーストラリア・日本)

ビジネス短信 534369e83b150