外貨と貿易を管理する2つの組織を新設−マドゥロ大統領による経済対策(2)−

(ベネズエラ)

カラカス事務所

2014年03月14日

2013年11月29日に政令601号が公布され、国家貿易センター(CENCOEX)とベネズエラ貿易公社(VENECOM)が設立された。この政令は大統領授権法に基づいたもので、法律と同等の効力を持つ。CENCOEXは輸出入や投資など外貨に関わる政策を取りまとめ、VENECOMは公的部門および一部の民間部門の輸入を代行する機能を持つとされる。

<CENCOEX:外貨管理から輸出入、投資政策策定まで幅広い権限>
2013年11月6日にマドゥロ大統領が設立を発表したCENCOEXとVENECOMは、11月29日付特別官報6116号で公布された政令601号によって正式に設立された。

マドゥロ大統領は発表で、「民間企業が輸入決済用外貨を30〜40%水増しして取得し、そこで得た外貨を用いて不当に利益を得ている。この問題を解決するために新組織を設立し、外貨配分を適正化する必要がある」と述べていた。これを受けるように、CENCOEXは外貨管理、輸出入、対外・対内投資に関する国家政策を展開し、実行する組織と規定された。

CENCOEXに与えられた主な権限と役割は以下のとおり。

(1)外貨管理、輸出入、対外・対内投資の制度を確立し、これらの政策を規定する。
(2)外貨全般に関わる政策が適切に運営されているかどうか監視を行う。
(3)輸出や対外投資拡大のための政策を検討する。
(4)輸入を代替するための生産拡大に資する措置を規定する。
(5)外貨を必要とする、もしくは貿易を行う個人、法人の登録情報を更新する。
(6)外貨を必要とする法人に対して法令順守を求める。
(7)輸出入に関する許認可手続きを一元化し、管理手続きの自動化を促進する。
(8)VENECOMに登録されている法人・個人を評価するための基準を規定する。
(9)国際的な商品価格を確認できるシステムを確立する。

また、政令601号の第5条によって、一部の商品の輸入に必要となる輸入許可や輸入ライセンスなど、貿易で必要となる各種手続きの承認をCENCOEXが一元化して行うと定められた。

CENCOEXは既存の省庁ではなく、経済担当副大統領の管轄下に置かれ、11月29日付官報40305号を通じて、総裁にアレハンドロ・フレミング商業相、副総裁にホセ・カーン外貨管理委員会(CADIVI)長官(いずれも当時)が任命された。

<VENECOM:民間部門の貿易も主導>
VENECOMは国営企業の体裁をとる組織として、CENCOEXと同じく経済担当副大統領の管轄下に設立された。全額政府出資の株式会社だ。

VENECOMは公的部門ならびに民間部門で貿易を行う法人の頂点に位置し、各法人は同組織の下で貿易を行うこととなる。アグロパトリア(Agropatria、注1)、バリベン(Bariven、注2)、農業供給公社(CASA)、CVGインターナショナル(注3)、工業供給公社(SUVINCA)、輸出入公社(VEXIMCA)、その他、大統領が事前に承認した国営企業およびその子会社はVENECOMに統合される。

VENECOMの主な役割は、(1)国家に必要とされる財の輸入を確保すること、(2)価格・品質ともに最良の財を輸入すること、(3)輸出入手続きの簡素化を達成すること、(4)非石油部門の輸出を一元化し簡素化すること、とされる。また、荷詰め、荷卸しなどの通関業務も独自で行う特権を持つ。

CENCOEXと同じく、11月29日付官報40305号にて、総裁にラモン・ゴルディルス貿易銀行(BANCOEX)総裁、副総裁にジュセッペ・ジョフレダ空軍司令官が任命された。

CENCOEXとVENCOMの概要は官報で公布されているものの、詳細は定まっておらず、実際に機能しているとは言い難い。両組織がベネズエラ経済にどのような影響を与えるかは未知数だが、政府の監視がさらに強まり貿易に関する手続きがより煩雑化することが予想される。

(注1)肥料、種苗、農薬の供給、農業生産者への融資などを行う国営企業。
(注2)国営石油公社PDVSAの子会社で、石油・ガス採掘、生産、精製などに必要となる機材購入などを行う国営企業。
(注3)ガイアナ開発公社(CVG)およびその子会社のための輸出入を担う企業として設立された国営の物流企業。

(松浦健太郎)

(ベネズエラ)

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