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改革のスピードアップへ、レンツィ新政権が始動

(イタリア)

ミラノ事務所

2014年03月03日

新政権が2月22日に発足した。新首相となった民主党(PD)書記長のマッテオ・レンツィ氏は39歳で、首相としては史上最年少。平均年齢47歳と若い内閣を率いて、改革のスピードアップに挑む。

<前首相は与党の信任を得られずに辞任>
2013年12月に行われたPD(中道左派勢力)の書記長選で、マッテオ・レンツィ氏(当時フィレンツェ市長)が圧勝。政権与党のトップを決める選挙とあって注目を集めたが、結果はレンツィ氏が67.55%の得票率で、他の2人の候補(得票率はそれぞれ18.21%と14.24%)を大きく引き離して書記長の座に就いた。

イタリアの実質GDP成長率は、2012年第4四半期を底に回復傾向をみせていたが、2013年は通年(速報値)でマイナス1.9%と2年連続のマイナス成長となり、十分に回復できない状況が続いている。そのため、以前から次期首相候補とみられていたレンツィ氏は、当時のレッタ内閣を政治や経済の構造改革が遅れていると非難。また同氏は、2014年1月に中道右派最大の党であるフォルツァ・イタリア(FI)を率いるシルビオ・ベルルスコーニ元首相とも会談を行い、上院議会制度改革や選挙制度改革などの政策について一致したことを表明し、右派勢力との距離を縮めていた。

その後、PDは2月13日に開催された党の全国大会で、レンツィ書記長が提案した文書を136対16の圧倒的多数で採択した。同文書には、PDが国家的課題に立ち向かうための政治勢力を含んだ新内閣を始動させ、新たな局面を切り開いていく必要性と、緊急性があるとしており、PDの総意として現内閣に対して退陣を迫るかたちとなった。

これを受けて当時のレッタ首相は、支持母体のPDからの支持が得られない以上、政権を維持できないと判断し、2月14日にジョルジオ・ナポリターノ大統領に辞意を表明。同大統領も辞任を承諾した。

2013年2月の総選挙後の混乱の末に4月28日に誕生したレッタ内閣は、約10ヵ月で退陣に追い込まれた。

<史上最年少39歳の新首相誕生>
ナポリターノ大統領は、各党との協議の結果、PDのレンツィ書記長に新内閣を組閣することを指示し、同書記長も2月18日から各党との会談を開始した。

レンツィ書記長は、組閣の指示を受けた後の記者会見で、今後、各党との議論の基本となるテーマを挙げ、まずは憲法(地方自治について規定した第5条の改正を意図)および選挙制度の改革、3月には労働に係る諸課題、4月には行政改革、5月に財政改革に早急に取り組むとし、矢継ぎ早に改革を打ち出していくことを明言した。実際に各党との協議では、こうした改革や組閣人事などについて意見が交わされ、2月21日に同書記長は組閣名簿を同大統領に提出して承認を受け、翌22日に新内閣の宣誓式が行われ、レンツィ新内閣が正式に発足した。

レンツィ氏は1975年1月フィレンツェ生まれの39歳で、イタリアで最年少の首相となった。過去にはボーイスカウト活動に熱心で、ボーイスカウトの創始者ロバート・ベーデン・パウエル氏の「私たちが見いだした世界よりも、少しでも世界を良いものにして後世に残す」ことを信条としている。

大学時代には、「プローディ(中道左派連合「オリーブの木」を結成した元首相)委員会」を組織し、最初の政治活動を行った。また、同氏の家族が経営する企業でマーケティング担当として勤務した経験も持つ。

2004年には、フィレンツェ県の首長に選出された。在任中に同県の歳出削減などを行い、文化や環境への投資を増やした。2008年には、中道左派勢力から2度目の県の首長選への立候補を要請されたが、それを拒否してフィレンツェ市長選に立候補することを宣言。同市長選では、40.52%の得票率を獲得して勝利した。2009年6月から同市長として手腕を発揮した。

<閣僚の半分は女性、平均年齢も若返る>
レンツィ新内閣では、16人(首相を除く)が閣僚に任命された(表参照)。レッタ前内閣の発足時の閣僚数21人に比べて5人少なく、管轄省のない無任所閣僚の数が削減された。前内閣の発足時にも、女性の登用や若返りが話題を呼んだが、レンツィ政権では前政権の7人を上回る8人の女性が登用され、閣僚の半分を女性が占める布陣となった。さらに、平均年齢も47歳となり、前政権発足時の53歳よりも若返った(「コリエーレ・デッラ・セーラ」紙2月22日)。

新内閣は、引き続き左右両派の連立内閣となり、政党別にはPDから8人が入閣した。右派からは、新中道右派(NCD)のアンジェリーノ・アルファーノ党首が前内閣から引き続き内務相として続投。そのほかにも、インフラ・交通相および保健相も同党からの続投となり、合計でNCDは3人が入閣した。

NCDはベルルスコーニ元首相が率いた「自由の人民(PdL)」(現在は分離してFI)から分離した政党で、同元首相の右腕とみられていたがアルファーノ内務相がPdLからの離脱を決意し、2013年11月に立ち上げた新党だ。NCDはレッタ前内閣を一貫して支えた一方で、PdLと分離したもののベルルスコーニ元首相と敵対関係にはないとみられており、同党の動きは今後の政局のポイントになる。

<経済分野にはテクノクラートを起用>
またレンツィ新内閣では、引き続き優先課題となっている経済や労働分野の閣僚については、いずれもテクノクラートが起用された。

マッテオ・レンツィ内閣の顔ぶれ(2014年2月22日)

経済・財務相には経済学者のピエル・カルロ・パドアン氏が就任。同氏は、イタリアを含めた欧州の複数の大学で教鞭(きょうべん)をとり、東京大学でも教えた経験を持つ。1998年からは当時の首相の経済分野での助言役を務め、EUのアジェンダ2000やリスボン条約、G8サミットなどの各種国際会議などの交渉の場において、交渉責任者を務めた。2001年からはIMFの業務にも従事。2007年にOECDの事務次長、2009年には同チーフエコノミストに就任。2013年12月にはイタリア国家統計局(ISTAT)局長に指名されるなど、国内外で幅広く活躍するエコノミストとしての手腕が期待される。

経済開発相には、民間企業から女性のフェデリカ・グイディ氏が起用された。同氏はMBA(経営学修士)を取得し、民間企業で財務アナリストとなり、2002年からは各種業界団体やイタリア産業連盟(日本の経団連に相当)でも要職を務めた。現在はドゥカティ・エネルジア(発電機、蓄電機などの電力エネルギー関係機器などの製造販売会社)の副社長を務めており、民間企業にいた立場からどのような政策を打ち出すかが注目される。

外相には女性のフェデリカ・モゲリーニ氏が就任。2008年に下院議員となり、下院の外交委員会と国防委員会の委員を務めている。前任のエンマ・ボニーノ前外相は国際事情通として外交手腕が評価されていたが、モゲリーニ新外相は40歳と若く、国際レベルでの外交経験にも乏しいことを懸念する声もある。

上院では2月24日、下院では25日に信任投票が行われ、レンツィ新内閣は上院(定数315)で賛成169票(反対139票)、下院(定数630)で賛成378票(反対220票)を獲得し、議会での信任を得た。今後は既に掲げている各種改革に本格的に着手することになるが、公約どおりの速やかな実行が求められる。

(三宅悠有)

(イタリア)

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