労務派遣の比率を「10%を超えない」と明示−労務派遣暫定規定概要(1)−

(中国)

上海事務所

2014年02月27日

1月24日に公布された「労務派遣暫定規定」が3月1日に施行される。中国国内で労務派遣の存在感が増す中、同規定はこれまで不透明だった労務派遣の諸問題に一定の区切りをつけるもので、労務派遣従業員を抱える企業は対応を迫られる。同規定制定の背景や対応策について、コチコンサルティング(上海)の畑伴子総経理に話を聞いた。2回に分けて報告する。

<労働契約法の施行後に増加した労務派遣>
2008年1月1日に「労働契約法」が施行され、同一企業で勤続満10年、あるいは固定期間のある労働契約を連続2回締結後に労働契約を更新する場合、労働者が希望すれば固定期間のない労働契約を締結しなければならないことが定められた。これにより、直接雇用が実質的な終身雇用となることをリスクと捉えた企業が、労務派遣従業員を増やした。労務派遣従業員の社会保険料の納付義務は派遣元企業が負うため、派遣を受け入れる企業にとっては管理コスト削減にもなる。

爆発的に増加した労務派遣だが、長期安定雇用の実現を目指す政府は労務派遣の抑制を始めた。2013年7月1日施行の「『労働契約法』改正についての決定」(2013年1月11日記事参照)の中で、労務派遣が可能な職位の定義を以下のとおり明示した。

○臨時的=在職6ヵ月を超えない職位
○補助的=派遣先企業の主要業務にサービスを提供する職位でない職位
○代替的=派遣先の労働者の病気休暇、産休、研修などの一時的な代替職位

また、同一労働同一賃金の原則(業務内容が同じである場合に直接雇用と労務派遣で賃金に差をつけてはならないという原則)の徹底や、雇用総数に占める労務派遣従業員の比率(労務派遣比率)を一定以下にすることなども盛り込まれた。労務派遣比率については具体的な数字は示されなかったものの、企業は労務派遣から直接雇用への移行を検討せざるを得ない状況となった。

<労務派遣抑制への節目に>
3月1日に施行される「労務派遣暫定規定」(2014年2月5日記事参照)は労務派遣比率を明記しており、労務派遣を抑制する流れの大きな節目となりそうだ。ポイントは以下のとおり。

○労務派遣比率は10%を超えてはならない〔ただし2年間の猶予期間あり(注)〕。
○補助的職位については、工会(労働組合)あるいは従業員代表との協議により決定し、職場内で公示すること。
○妊娠、出産または授乳期間、医療休暇期間、労災によって労働できない期間、同一企業で勤続満15年以上かつ定年まで5年未満に該当する場合は、労務派遣従業員を派遣元会社へ差し戻すことを禁止。
○企業が請負、アウトソーシングの名義で労務派遣形態の労働者を使用している場合は、労務派遣従業員と見なす(偽装請負禁止の徹底)。

そのほか、罰則も定められており、企業は労務派遣の取り扱いについて本格的な見直しを迫られることになる。畑総経理は「今回の暫定規定の狙いは、中国の低賃金層の賃金底上げと不満解消だ。内資企業、外資企業を問わず、これまで労務派遣を利用してきた企業は大きな変革を求められる。特に、労務派遣従業員を大量に抱えている工場などは、直接雇用への移行をどう乗り越えるか頭を悩ませている」と語った。コチコンサルティングは労務派遣についてのセミナーを上海市で開催しており、2013年の労働契約法改正以来、毎回定員を超える応募があるという。企業の関心の高さがうかがえる。

(注)同規定第28条では「本規定施行前に労務派遣比率が雇用総数の10%を超えている場合は、本規定施行日から2年以内に10%を超えない水準まで下げなければならない」と規定している。

(笠間瑞樹)

(中国)

現状分析の上で移行計画の策定が必要−労務派遣暫定規定概要(2)−

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