クロスボーダー電子商取引の人民元決済始まる−上海自由貿易試験区の金融規制緩和第1弾−

(中国)

上海事務所

2014年02月20日

中国人民銀行(中央銀行)は2月18日、中国(上海)自由貿易試験区で金融管理制度を緩和する政策の第1弾として、決済サービス機関にクロスボーダー電子商取引の人民元決済業務を開放した。これにより、人民元建ての国際取引の利便性が高まり、人民元の国際化を後押しすることになる。

<決済機関5社が5銀行と業務提携>
中国人民銀行上海本部は2月18日、上海自由貿易試験区で決済サービス機関によるクロスボーダー人民元決済業務の開始式を行い、「上海の決済機関がクロスボーダー人民元決済業務を展開する実施意見」(以下、「人民元決済意見」)を即時に施行すると発表した。

また、上海銀聯電子決済サービス、通聯決済オンラインサービス、東方電子決済、快銭決済清算情報、上海盛付通電子取引の決済サービス機関5社は開始式で、工商銀行、中国銀行、建設銀行、招商銀行、民生銀行の銀行5行と決済業務提携の契約を結び、クロスボーダー人民元決済業務を開始した。上海銀聯電子決済サービスの職員は開始式で、オンライン販売サイトから香港のワインを注文し、同社の決済システムを通じて初めてのクロスボーダー人民元決済業務を行った(注)。

中国人民銀行は2013年12月2日、「金融による上海自由貿易試験区建設のサポートに関する意見」(以下、「金融意見」)を公布し、同試験区で金融管理制度を改革する方針を30項目発表している(2013年12月5日記事参照)。今回の「人民元決済意見」は「金融意見」を具体的に実施するために発表された第1弾の細則で、クロスボーダー電子商取引(貨物貿易またはサービス貿易)のために人民元決済サービスを提供することができるとした「金融意見」の第14項目を具体的に規定している。

<人民元建て国際取引の利便性高まる>
中国人民銀行上海本部は「人民元決済意見」の全文を公開していないが、新聞報道と記者会見の質疑応答のかたちで概要を説明している。それによると、今回開放された「決済機関によるクロスボーダー人民元決済業務」とは、国内外の取引者が行う国際取引に対し、決済機関がインターネットを通じて提供する人民元の決済サービスのこと。上海市の決済機関と上海市以外の決済機関が上海自由貿易試験区に設立した支店は、インターネット決済業務のライセンスを取得すれば業務を行える。

従来は国際決済の利用者が事前に外貨決済を申請し、人民元を外貨に両替した上で送金していた。決済機関によるクロスボーダー人民元決済業務が始まったことで、こうした人民元建ての国際取引は大幅に利便性が高まり、人民元の国際化を後押しするとみられる。

中国人民銀行上海本部は同試験区での実施で経験を積み、今後全国で同業務を普及する目標を明言している。

(注)香港特別行政区は、国際貿易では国境外として扱われている。

(文涛)

(中国)

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