大統領は意義を訴えるも、農業団体からは反対の声−太平洋同盟追加議定書署名の反響−

(コロンビア)

ボゴタ事務所

2014年02月19日

カルタヘナで開かれた第8回太平洋同盟首脳会議で2月10日、太平洋同盟追加議定書への署名が行われ、議長国としてサントス大統領は「中南米に発展と繁栄をもたらすエンジンが始動した」と協定の意義を強調した。しかし、コロンビア国内では農業団体を中心に反対の声も出ている。

<「サントス大統領の成果」と主要紙は報道>
第8回太平洋同盟首脳会議でペルーのウマラ大統領、チリのピニェラ大統領、コロンビアのサントス大統領、メキシコのペニャ・ニエト大統領がそれぞれ太平洋同盟の通商協定に調印した。今後各国での批准手続きが開始され、コロンビアの場合は議会審議および憲法裁判所での審査などを経て2014年末ごろに発効するとみられている。

コスタリカのチンチージャ大統領も首脳会議に出席し、太平洋同盟への正式加盟に向けた行程表と宣言書に署名した。オブザーバー国はコスタリカを含め30ヵ国に膨らんだが、今後さらに拡大する可能性がある。

2月11日付の当地主要紙はこぞって1面で、ホスト国代表のサントス大統領の成果として報道した。「エル・ティエンポ」紙が「サントス大統領、中南米発展に向けたモーター始動と強調」、「ポルタフォリオ」紙が「コスタリカ、同盟入口に列を成す」、「エル・エスペクタドール」紙が「(発効時期が向こう1年後のため)太平洋同盟約束がさらに据え置かれる」、「ラ・レプブリカ」紙も「関税・ビザの緩和、メキシコのラテンアメリカ統合証券取引市場(MILA)への参加、課題も残る」などの見出し記事を掲載した。

「エル・ティエンポ」紙は、首脳ならびに事務局とのインタビューで、メキシコ大統領の「米国、カナダとの通商協定締結に続く快挙だ」、サントス大統領の「平和構築、自由貿易、貧困撲滅、経済成長、外国投資促進を目指す」、フランシスコ・デ・ローゼンツウェイグ・メキシコ経済省通商交渉担当次官の「中南米で自由貿易標榜(ひょうぼう)の明るい信号となる」、マガリイ・シルバ・ペルー貿易観光相の「格差是正を共同で目指す画期的な協定」、アルバロ・ハナ・チリ外務省国際経済関係総局長の「加盟国間での統合、経済成長、福利向上を具体化させる」といった前向きな発言を伝えた。

<農業団体の反対表明に政府は反論>
ただ、コロンビア農業者協会(SAC)は、通商協定の農業分野の内容に反対の意向を表明。SACは2013年5月以降政府に対して、太平洋同盟は農業分野の生産者に打撃を与え雇用にもマイナスの影響を及ぼすと警告していた。これに対しサンチアゴ・ロハス商工観光相は「エル・ティエンポ」紙で、今回の合意はセンシティブ品目のある農業分野を含めたコロンビア国内全体の利益を反映したもので、農業界も長期的に非関税化に向けた歩みについては合意していたと反論している。また、サントス大統領とロハス商工観光相は、世界経済の成長エンジンと見なされているアジア・太平洋地域の豊かさを取り込むことを通商協定の主要目的の1つとしており、コロンビアは4ヵ国の中でも同地域への参入が最も遅れているためこれを挽回する必要があるとの認識も示した。

一方、「ラ・レプブリカ」紙は、太平洋同盟企業家評議会代表者とのインタビューを紹介した。その中でチリの企業経済団体代表アンドレス・サンタ・クルス氏は「加盟国間での国際企業合併が促進されるよう、関係国間での二重課税やその他課税が賦課されないことが重要だ」とM&Aの促進を強調した。メキシコの同代表ヘラルド・グティエレス氏は(現在コロンビア、ペルー、チリで実施中の)統合証券取引市場へのメキシコの参加について、コロンビアからメキシコの参加表明が遅かったのではないかとの指摘があったことも明らかにした。コロンビアの同代表ルイス・カルロス・サルミエント氏は「参加首脳に対して、一層の金融統合・商用ビザ発給緩和などに向けた企業側の懸念点をまとめて提出した」とした。

「エル・ティエンポ」紙は首脳会議の積み残し課題として、a.医療費削減を目指した医薬品価格の引き下げへの対応、b.(中国、中東諸国、シンガポールなどのインフラ投資分野への関心を踏まえた)4ヵ国によるインフラ共同基金創設の検討、c.人・資本の移動の自由に向けた検討(メキシコはコロンビアからの入国ビザ撤廃により同国向け観光客が35%増加した)、d.追加議定書発効後のコロンビア国内約4万4,000人の雇用創出、経済成長率の0.7%引き上げ、外国投資の1.4%増に向けた対応、などを指摘した。

<対日EPAの締結に進出企業は期待>
「ポルタフォリオ」紙は、太平洋同盟のオブザーバー国である日本については、対コロンビア経済連携協定(EPA)のボゴタでの第4回交渉(2月10〜14日)の関連記事を掲載した。

コロンビアは既に北米自由貿易協定(NAFTA)加盟3ヵ国、EUとの自由貿易協定(FTA)を発効させており、進出日系企業の中にはコロンビアの既存FTAの枠組みに注目して同国に進出した企業もある。太平洋同盟追加議定書の発効と併せ、対日EPAの締結を視野に入れた多国籍企業の国際事業展開が検討されていくことになるだろう。

(清水文裕)

(コロンビア)

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