中銀、通貨テンゲを19%切り下げ

(カザフスタン)

タシケント事務所

2014年02月13日

カザフスタン中央銀行は2月11日、自国通貨テンゲの約19%の切り下げを即日実施したと発表した。2009年に約25%の切り下げを行って以来の大幅切り下げで、新興市場からの資本流出や関税同盟を構成するロシアからの製品の流入に対抗する目的があるとみられる。突然の発表に国内経済は混乱を来しており、インフレの加速が懸念される。

<突然の切り下げ発表に市場は混乱>
中銀は2月11日、1ドルに対して155.50テンゲだった水準を「185テンゲ±3テンゲ」の目標相場圏にする約19%の通貨切り下げを発表した。大幅な通貨の切り下げは、2009年2月に1ドル=120テンゲだったレートを150テンゲに切り下げて以来。中銀のケリムベトフ総裁は同日に行われたプレス発表で切り下げの理由を、a.輸出の振興、b.経常収支の改善、c.ロシア・ルーブルなど新興国通貨に対する為替相場に対応したものと説明。また、大幅な変更ではあるが市場は安定しており、状況は中銀のコントロール下にあると述べた。

しかし、突然の発表に市中は混乱した。発表当日には、銀行などの金融機関ではドルへの交換レートを190テンゲ前後に設定。また、市中にある多くの両替所は営業を停止し、ドル需要を背景に1ドル=210テンゲをつけたところもあったようだ。在留邦人によると、現地の量販店では即日20〜25%の値上げが実施されているが、商店の中には価格の付け替えが追い付かず、開店しているものの販売をしないところが続出したという。資産防衛に入った国民は、家具などの耐久品で商品価格の付け替えがなされていないところに殺到し、ショッピングセンターに入居していた家具店ではほとんどの商品が一気に売り切れたとの話もある。

現地で輸入を手掛ける現地企業の社長によると、とりあえず10%程度の値上げを2月12日から行い、その後は為替相場をみながら再値上げをしていくとのことだった。また韓国系の航空会社は、数日後には20%程度の値上げを行うと顧客に説明している。アルマトイ市のアフメジャン・エシモフ市長は関係部局に対して、特に食品や生活必需品を中心として便乗値上げが発生しないように注視し、必要に応じて物価上昇に対する法的措置も講ずるよう指示をしている(現地紙「テングリ・ニュース」2月11日)が、この混乱は当分続くと思われる。

<指摘される関税同盟加盟の影響>
今回の切り下げに関しては、関税同盟加盟によって自国産品よりも品質の高いロシア商品が大量に流入していることへの対抗措置との見方も金融機関関係者の間からは出ている。2013年9月に、カザフスタン中銀はそれまでドルのみを基準としていた為替相場を、新たにユーロとロシア・ルーブルを含めた通貨バスケットにペッグ(連動)させる管理変動相場制へと移行させているが、これもルーブルのレートが大きく下落する中で自国通貨がルーブルに対して強くなり過ぎないようにするための措置だと指摘される(バスケットの比率はドルが70%、ユーロが20%、ルーブルが10%)。

カザフスタンでは、製造業の基盤がまだ十分に育っていないところに、関税同盟への加盟によってロシア製品が入ってきやすい環境になっている。ルーブルの下落によりロシア製品の流入が加速しかねないことへの対抗措置とも考えられるが、多額の対外債務を抱える商業銀行にとっては返済の負担増につながるほか、製造業の基盤が育っていない現状においては生産財、中間財を含め多くを輸入せざるを得ない環境であることから、国内経済への影響も大きいと予想される。

(末廣徹)

(カザフスタン)

ビジネス短信 52fc3a4dc5c10