トラブル頻発で苦労する日本人駐在員−チェンナイの外国人登録・ビザ手続き(1)−

(インド)

チェンナイ事務所

2014年02月12日

外国人登録およびビザ更新は、チェンナイの日本人駐在員から、改善を求める声が最も多い手続きの1つとなっている。このため、チェンナイ日本商工会(JCCIC)生活環境改善委員会では、外国人地方登録事務所チェンナイでの上記手続きの実態把握を継続的に行っており、2014年1月、改善を求める建議書を同事務所に提出した。チェンナイにおける手続きの実態や、建議書の内容などについて、2回に分けて報告する。前編は、トラブルなどが特に頻発した2012年を中心に、手続きの実態について。

<登録事務所の対応に強い不満>
外国人がインドに駐在する場合、管轄の外国人地方登録事務所〔チェンナイの場合、FRRO(Foreigners Regional Registration Office)Chennai。以下、FRROチェンナイ〕に登録する必要がある。同事務所はビザ更新手続きについても担当しているため、ビザ更新に際しても同事務所を訪問する必要がある。

これらは帯同家族を含めインド駐在に必要不可欠の手続きだが、チェンナイでは、手続きに際しFRROチェンナイとの間でトラブルが生じた事例やFRROチェンナイの対応に強い不満を抱く事例が後を断たず、チェンナイの日本人駐在員から、改善を求める声が最も多い手続きの1つとなっている。特に外国人登録は、新たに着任する日本人駐在員がインドに到着して最初に行う公的手続きの1つであり、インド生活に不慣れな状態の中で対応を余儀なくされることに加え、手続きが滞った場合、銀行口座の開設など、その後の生活に支障を来す恐れがある。

このような背景の下、JCCIC生活環境改善委員会では、2012年度以降、FRROチェンナイにおける外国人登録手続きなどの実態を継続的に把握するとともに、FRROチェンナイに対し2度目となる手続き改善を求める建議書を2014年1月に提出した(注)。

<1回目の調査では9割が「悪い」との評価>
JCCIC生活環境改善委員会は2012年および2013年に、FRROチェンナイでのビザ更新・外国人登録手続きに関するアンケートを会員企業に対して実施している。2012年10月時点の調査結果では、いずれの調査項目においても「良い」との評価が一切なく、各項目で「悪い」との評価が9割前後となっている(表参照)。

なお、2013年8月時点の調査結果では、2012年に比べ、総じて「悪い」との評価が低下、手続きに要する時間をはじめ「良い」との評価もみられるなど、前年よりは状況が改善していることがうかがえる。

FRROチェンナイでのビザ更新・外国人登録手続きに関する評価

<2012年におけるFRROチェンナイでの実態例>
JCCIC会員企業のほとんどが「悪い」と評価した2012年当時のFRROチェンナイでの手続きの実態について、JCCIC生活環境改善委員会では、具体例として、日本人駐在員が以下のような実例に直面したことを把握している。

<書類を突っ返され、足を何度も運ぶ>
○事例その1
FRROチェンナイの入り口で約3時間待機。第1審査官による書類チェック終了後、第2審査官の窓口に行くよう指示された。第2審査官の窓口で待機していると、第2審査官は、多数の申請者で行列ができているにもかかわらず、突然30分ほど離席。第2審査官が戻ってきたので苦情を言ったところ、順番を最後に回されてしまう。第1審査官の書類チェック終了から約2時間たち、自身が最後の1人となって、ようやく当該審査官に呼ばれるも、写真がないとの理由で、別の日に出直すよう指示された(申請者側は写真を書類にきちんと添付したと認識しているものの、実際には写真がなくなっていた)。

翌日、当該申請者は再度FRROチェンナイを訪問し、3時間待機。その後、窓口で写真を提出したものの、「申請は保留、後日結果を郵送」とのメモを渡された(審査官に本取り扱いの理由を尋ねるも、回答を得られず)。

翌週、申請者の所属企業の総務担当者が窓口を訪れたが、審査官からは「本人でなければ対応できない」と言われた。このため、申請者が再度窓口を訪れ、申請を受理するよう窓口で要請。しかし、審査官からは、翌日再度来るよう指示された。

翌日、再度申請者が窓口を訪れ、長時間待機した後、審査官から再び、「写真がない」と言われた。このため、写真を再度提出し、ようやく受理された。

<発行されたのは有効期限3ヵ月の外国人登録証明書>
○事例その2
申請者の役職が「Director」ということもあって、株主または役員ではないかと疑われ、審査官から「デリーに確認が必要」との説明を受けた。申請者は「株主でも役員でもない」と説明したものの、審査官は聞き入れず、最終的には何ら理由説明もないまま、有効期限3ヵ月の外国人登録証明書が発行された。

3ヵ月後、期限切れに伴い外国人登録の延長申請を行うも、「デリーからの承認が得られていない」との理由で、再度有効期限3ヵ月の外国人登録証明書が発行された。なお申請者は、株主でも役員でもない旨を説明したレターを持参したものの、審査官の判断は覆らなかった〔ちなみに、同時期にFRROチェンナイの別の窓口で申請した者(役職:Director)については、有効期限1年間の外国人登録証明書が発行されていた〕。

このような状況を受けて、JCCIC生活環境改善委員会は2012年11月、FRROチェンナイとの間で会合を開催し、申請手続きの改善を求める建議書を初めて提出し、手続きの簡素化・透明化、窓口の対応改善を要請した。これに対し、FRROチェンナイは「多くの日本人がFRROチェンナイでの手続きに不満を抱いていることを真摯(しんし)に受け止める」と述べ、手続き改善を図る回答をした。

本稿における外国人登録・ビザ更新の運用実態は、あくまでFRROチェンナイの場合を取り上げたものであり、外国人登録・ビザ更新の運用実態は地域などによって異なる可能性がある。

(注)JCCIC生活環境改善委員会は、2012年11月にFRROチェンナイでの手続き改善を求める建議書を既に提出している。

(長谷部貴史)

(インド)

一層の改善求めて日本商工会が再度の建議書提出−チェンナイの外国人登録・ビザ手続き(2)−

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